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高齢者を狙う振り込め詐欺-受け子についての最高裁判所の判断
保険研究部 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登
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高齢者を狙った振り込め詐欺などの「特殊詐欺」は、警察や金融機関の懸命の努力にもかかわらず、手口が巧妙化するなどして、その発生件数や被害総額は高水準で推移している。昨今、振り込め詐欺に関しては詐欺グループに属さない「受け子」が金銭の受け取りに利用されることが増加してきている。平成30年12月に下された二つの最高裁判決は、荷物は受け取ったが中身は知らず、詐欺であることは知らなかったと主張した「受け子」に対して、詐欺罪の共同正犯として実刑を科した。
また、警察と、詐欺だと見破った被害者とが協力として金銭でない物品を「受け子」に宛てて宅配便で送り、受け取った「受け子」を逮捕するいわゆる「だまされたふり作戦」においても、平成29年12月最高裁判決は「受け子」を詐欺未遂の共同正犯として実刑を科した。
このように司法は「受け子」に厳しい態度を取ってきているが、法的安定性確保の観点から「受け子」のような行為を直接に罰する立法を行うことを検討することが考えられる。
詐欺被害を防止するために親子間でのコミュニケーションを密接に行うことに加え、アルバイト感覚で「受け子」になりかねない若年者への警鐘・周知徹底を行うことが必要である。
■目次
1――はじめに
1|振り込め詐欺とは
2|振り込め詐欺における受け子とは
2――受け子をどのような罪に問えるのか
1|受け子を詐欺罪に問うための二つの問題点
2|平成30年の二つの最高裁判決
3――だまされたふり作戦における受け子の責任(平成29年最高裁決定)
4――考察
5――おわりに
(2019年06月05日「基礎研レポート」)
03-3512-1866
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月 専務取締役保険研究部研究理事
2025年4月 取締役保険研究部研究理事
2025年7月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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