2019年05月22日

貿易統計19年4月-輸出の低迷、貿易赤字(季節調整値)が継続

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出の減少が続く

財務省が5月22日に公表した貿易統計によると、19年4月の貿易収支は604億円と3ヵ月連続の黒字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:2,219億円、当社予想は2,764億円)を下回る結果となった。輸出が前年比▲2.4%(3月:同▲2.4%)と5ヵ月連続で減少する一方、輸入が前年比6.4%(3月:同1.2%)と前月から伸びを高めたため、貿易収支は前年に比べ▲5,606億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲4.3%(3月:同▲5.6%)、輸出価格が前年比2.0%(3月:同3.4%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比4.1%(3月:同0.4%)、輸入価格が前年比▲2.2%(3月:同0.7%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲1,109億円と2ヵ月連続の赤字となったが、3月の▲1,543億円から赤字幅が縮小した。輸出が前月比0.6%の増加となる一方、輸入が前月比▲0.1%の減少となったことが貿易赤字の縮小につながった。貿易収支(季節調整値)は中華圏の春節の影響で黒字になった2月を除けば、18年7月から赤字が続いている。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 4月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=68.8ドル(当研究所による試算値)となり、3月の65.6ドルから上昇した。原油価格(ドバイ)は4月以降70ドル程度で推移しているため、通関ベースの原油価格は5月には70ドル台前半まで上昇することが見込まれる。輸出の低迷が続く中で、原油高で輸入金額が膨らむことから、貿易収支(季節調整値)は赤字が継続する可能性が高い。

2.輸出は10連休前の駆け込みで押し上げられている可能性も

19年4月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比5.1%(3月:同0.3%)、EU向けが前年比▲3.0%(3月:同4.8%)、アジア向けが前年比▲3.5%(3月:同▲8.0%)となった。

季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比4.3%(3月:同▲1.8%)、EU向けが前月比▲0.8%(3月:同▲2.6%)、アジア向けが前月比2.2%(3月:同▲0.2%)、全体では前月比0.9%(3月:同▲2.3%)となった。

米国向けは好調を維持し、急低下が続いていたアジア向けが持ち直し、全体でも前月比でプラスとなったが、3月までの落ち込みを考えれば戻りは小さい。輸出減少の主因となっているIT関連の落ち込みにも歯止めがかかっていない。

また、4月の輸出は10連休を控えた前倒しによって押し上げられている可能性もある。輸出が下げ止まりつつあると判断するのは早計だ。5月は駆け込みの反動で輸出が大きく落ち込む恐れもあるだろう。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年05月22日「経済・金融フラッシュ」)

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