2019年04月26日

鉱工業生産19年3月-1-3月期は消費増税後以来の大幅減産、景気動向指数の基調判断は「悪化」へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1-3月期は消費増税後以来の大幅減産

経済産業省が4月26日に公表した鉱工業指数によると、19年3月の鉱工業生産指数は前月比▲0.9%(2月:同0.7%)と2ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.1%、当社予想は同0.5%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.6%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比1.6%と2ヵ月連続で上昇した。

3月の生産を業種別に見ると、大幅減産が続いていた電子部品・デバイスが前月比5.8%と5ヵ月ぶりに上昇し、汎用・業務用機械も同4.1%の高い伸びとなったが、半導体製造装置の輸出の落ち込みを受けて生産用機械が同▲6.7%の大幅減産となったことに加え、国内販売が低迷する自動車も同▲3.4%と落ち込んだ。

19年1-3月期の生産は前期比▲2.6%(18年10-12月期:同1.4%)と2四半期ぶりに低下した。四半期ベースの減産幅は消費税率引き上げ後の14年4-6月期(前期比▲2.9%)以来の大きさとなった。業種別には、アジア向けを中心に情報関連、資本財輸出が落ち込んでいる、電子部品・デバイス(前期比▲9.6%)、生産用機械(同▲7.7%)、汎用・業務用機械(同▲4.1%)の減産幅が特に大きかった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年10-12月期の前期比1.6%の後、19年1-3月期は同▲7.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年10-12月期の前期比2.7%の後、19年1-3月期は同▲1.8%となった。

好調な企業収益を背景に設備投資は堅調な推移が続いてきたが、海外経済の減速に伴う輸出の減少を主因とした企業収益の悪化を受けて、GDP統計の設備投資は19年1-3月期には前期比で減少に転じる可能性が高い。

消費財出荷指数は18年10-12月期の前期比▲0.5%の後、19年1-3月期は同1.6%となった。耐久消費財は前期比▲0.9%(10-12月期:同2.8%)と低下したが、非耐久消費財が前期比4.0%(10-12月期:同▲3.7%)の高い伸びとなった。
財別の出荷動向 1-3月期の消費関連指標を確認すると、消費財出荷指数は高めの伸びとなったが、商業動態統計の小売販売額指数は前期比でマイナスとなるなど、強弱が入り混じる結果となった。

雇用所得環境は改善が続いているが、景気の先行き不透明感の高まりや食料品の相次ぐ値上げなどに伴う消費者マインドの悪化が消費の抑制要因になっていると考えられる。19年1-3月期のGDP統計の民間消費は前期比でほぼ横ばいとなることが予想される。

2.景気動向指数の基調判断は「悪化」へ

最近の実現率、予測修正率の推移 製造工業生産予測指数は、19年4月が前月比2.7%、5月が同3.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ▲1.2%、▲1.3%であった。予測指数は4月、5月ともに高い伸びとなっているが、今年はGWが10連休となったため季節調整が難しくなっており、現時点での予測指数の伸び(前月比)はあまりあてにならない。予測指数を原指数でみると、4月が前年比▲1.9%、5月が同▲1.2%となっており、決して強い生産計画とはいえない。
内閣府の「景気動向指数」では、CI一致指数の基調判断が19年1月に「足踏み」から「下方への局面変化」に下方修正された後、2月も同じ判断で据え置かれた。

一致指数を構成する9系列のうち7系列の3月分が本日公表された。このうち、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除く輸送機械)、商業販売額(卸売業)の4系列が前月から悪化、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(小売業)の2系列が前月から改善(有効求人倍率は前月と変わらず)した。この結果、3月のCI一致指数は前月差マイナスとなり、基調判断は景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」となることが予想される。

正式な景気基準日付は、景気動向指数研究会の議論を踏まえて、経済社会総合研究所長が設定する。その際には、(1)景気動向指数(一致指数)のヒストリカルDI、(2)量的な変化、(3)拡張・後退期間、(4)参考指標(実質GDP、日銀短観等の景況感)の動きなどが参考にされるため、景気動向指数の基調判断が「悪化」となったことが必ずしも景気後退に直結するわけではない。
景気動向指数の基調判断と景気循環(1985年1月~) ただし、景気動向指数のCI一致指数によって基調判断が行われるようになった08年4月以降、基調判断が「悪化」になったことは2回あるが、いずれも事後的に景気後退と認定されている。さらに、筆者が内閣府の「CIによる景気の基調判断の基準」を用いて、現行のCI一致指数が存在する85年1月から08年3月までの基調判断を行ったところ、「悪化」となった6回(第10循環~第15循環)の全てで景気後退となっていることが確認された。

本日公表された19年3月分の経済指標の結果は、日本経済がすでに景気後退局面入りしている可能性が高いことを示すものといえるだろう。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年04月26日「経済・金融フラッシュ」)

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