2019年05月20日

欧州大手保険グループの2018年の生保新契約動向-新たな規制・低金利環境下での商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況はどうだったのか-

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(3)新契約利益の地域別内訳 
新契約利益の地域別内訳は、以下の図表の通りである。

2017年は、全ての地域で2桁進展を果たしたが、2018年においては、欧州では3%(比較ベースで3%、以下同様)、米国では2%(5%)の進展に留まったが、アジアは10%(14%)進展となったことから、グループ全体でも7%(11%)進展となった。

アジアでは医療・保障事業の増加に加えて価格戦略により、引き続き高い進展を確保したが、米国と欧州における退職勘定においては高金利とスプレッド前提の変更の影響を受けた。
新契約利益の地域別内訳
(4)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンの地域別状況は、以下の図表の通りである。

新契約マージンは、アジアで12.5%と極めて高水準となっており、2016年の10.5%、2017年の11.6%に比べてもさらに高くなっている。米国の数値もここ3年間上昇している。一方で、欧州は、アジアや米国に比べて、絶対水準も低いが、この3年間の水準もほぼ横ばいである。
新契約マージンの地域別状況
5Aviva
(1)全体の状況
2018年の新契約価値は、2017年に比べて3.3%減少して、12.02億ユーロとなった。なお、売却による影響を除けば、イタリアにおけるハイブリッド貯蓄商品の影響や英国におけるバルク年金の取得により、2%増加したと説明されている。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2017年から0.1%ポイント低下して2.9%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBV)は、2017年に比べて0.1%減少して、407.63億ポンドとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約マージンの商品タイプ別内訳(英国)
英国における生命保険事業の新契約価値、新契約保険料現在価値及び新契約マージンの商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

2017年は、全ての商品タイプの新契約価値が増加し、特に運用環境の改善により、長期貯蓄の新契約価値が42%と大きく増加していたこともあり、2018年は長期貯蓄と保障で2割以上減少した。

また、これに伴い、これらの商品の新契約マージンが低下したことにより、全体の新契約マージンも2.2%から0.2%ポイント低下して、2.0%となった。ただし、保障や医療等は引き続き相対的に高い新契約マージンを維持している。
英国生命保険事業の新契約マージン(対PVNBP)等の商品タイプ別状況
(3)新契約マージンの地域別状況 
新契約価値及び保険料現在価値の地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
2018年の新契約価値・保険料現在価値・年換算保険料の地域別内訳
新契約マージンの地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

地域別では、アジアやポーランド等の新興国での新契約マージンが高くなっている。一方で、英国の水準は、欧州(英国以外)と比較しても低い。
新契約マージンの地域別状況/新契約マージンの「欧州(英国以外)」の国別状況
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
英国生命保険事業の営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値と同様、2018年は長期貯蓄と年金・エクイティリリースが7%進展したが、レガシーが4%のマイナス進展となった。

また、2018年のグループ全体の営業利益のうち、年金・エクイティリリースが約4割、レガシーが2割弱を占めている。
英国生命保険事業の営業利益の商品別内訳
6Aegon
(1)全体の状況
2018年の新契約価値(MCVNB:Market consistent value of new business)は、2017年に比べて32.0%と大幅に増加して、5.40億ユーロとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2017年に比べて5.5%ポイントと大きく上昇して、22.6%となった。

新契約年換算保険料(APE)は、ほぼ横ばいの23.94億ユーロだった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約価値、年換算保険料及び保険料現在価値の地域別状況
新契約価値、年換算保険料の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値では、米州(北米・中南米)が6割超を占めているが、年換算保険料の7割近くは欧州である。

新契約年換算保険料自体はあまり進展しなかったが、収益性や効率性に焦点を当てた商品販売等を通じて、新契約マージンは大きく改善させた。
新契約価値、年換算保険料の地域別状況
なお、Aegonは、事業を3つ((1)Manage for Value(米州の年金・ランオフ、オランダの生命保険、英国の既存事業等)、(2)Drive for Growth(米州の生命保険・医療・傷害、変額年金、英国のデジタル事業、中東欧、アジアの富裕層顧客事業等)、(3)Scale-up for the Future(米州のミューチュアルファンド・中南米、スペイン・ポルトガル等)に分類して、管理している。

「(1)Manage for Value」では、効率性と資本形成に焦点を置いており、「(2)Drive for Growth」では、市場シェアと顧客ベースの拡大を目指すとし、「(3)Scale-up for the Future」では、将来のためのビルディングブロックとして、分散化されたポートフォリオの機会に投資するとしている。今後の市場について、(1)は漸減していくが、(2)と(3)が進展していくことを想定している。

2018年は、アジアの富裕層事業と米国のインデックス付ユニバーサル保険の販売が低迷したが、英国のプラットフォーム事業と中東欧が安定的に成長し、ラテンアメリカやスペイン、ポルトガルで成長した。
(3)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンの地域別状況は、次ページの図表の通りとなっている。

新契約マージン(対保険料現在価値(PVNBP))については、アジア・新興市場が3.9%で高く、欧州は1.2%、北米・中南米は1.7%の水準にとどまっている。2017年との比較では、各地域で上昇した。
新契約マージンの地域別状況
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中村 亮一

研究・専門分野

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