2019年05月20日

欧州大手保険グループの2018年の生保新契約動向-新たな規制・低金利環境下での商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況はどうだったのか-

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(3) 新契約マージンの地域別状況
新契約価値、保険料現在価値及び年換算保険料の地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
2018年の新契約価値・保険料現在価値・年換算保険料の地域別内訳
新契約マージン等の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約マージンは、アジア・太平洋及びトルコに加えて、スペインで高く、イタリア、フランス、ベネルクス、スイスでは相対的に低くなっている。

2017年と比べると、スイスと元々の水準が高いトルコやスペインを除く地域でほぼ上昇した。ここ数年でみれば、ほぼ各国とも、上昇させてきている。

なお、ドイツの生命保険においては、高資本効率商品が27%進展したこともあり、市場シェアが1.3%上昇して24.2%となった他、高資本効率商品のシェアがイタリアで87%になり、アジア・太平洋においても台湾におけるユニットリンク保険の増加等で81%に改善した、としている。
新契約マージンの地域別状況
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りで、保有ベースでは引き続き、保証付貯蓄・年金の構成比が5割程度となっている。
生命保険事業の営業利益の商品タイプ別内訳
3|Generali
(1)全体の状況
2018年の新契約価値は、2017年に比べて3.1%(比較ベースでは、4.3%、以下同様)増加して、18.77億ユーロとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2017年に比べて0.34%ポイント(0.26%ポイント)上昇して、4.35%となった。この要因は、新商品の改善やより収益性の高い資本集約商品へのシフトに向けての経営行動によって、貯蓄と保障商品の収益性が改善していることによる、と説明されている。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2.4%ポイント(1.5%ポイント)上昇して、41.6%となった。

2017年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBP)は4.9%(1.8%)減少して432.02億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APE)は2.8%減少(0.5%増加)して45.13億ユーロとなった。

なお、新契約IRR(内部収益率)は、より高い収益性、その計算の根底にあるより有利なリアルワールドの財務上の前提及び予想されるランオフをより的確に捉えるために、予測期間を超える新契約によって吸収される資本を予測するために採用された方法論の改善により、4.1ポイント上昇して23.6%となった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約の商品タイプ別、地域別の構成比
Generaliは、欧州において金利低下が進む中で、イタリアやドイツを中心に、保証利率の引き下げに加えて、無保証等の低資本集約商品のウェイトを高めてきている。低資本集約商品の責任準備金のウェイトは、2015年に48.5%であったが、2018年には57.1%に上昇している。

新契約の商品タイプ別、地域別の構成比については、次ページの図表の通りとなっている。

グループ全体での商品タイプ別の内訳は、貯蓄が46%(2017年は45%、以下同様)、保障が21%(20%)、ユニットリンクが33%(35%)となった。

2016年から2017年にかけては、グループ全体で、貯蓄の構成比が大幅に低下していたが、2017年から2018年にかけては、ユニットリンクの構成比が低下して、貯蓄の構成比が増加した「国際」を除いて、ほぼ各国・地域で、商品タイプ別の構成比に大きな変化はなかった。

ただし、中期的には、グループ全体だけでなく、主要各国ベースでみても、貯蓄から保障又はユニットリンクへのシフトが進んできている。
新契約の商品タイプ別、地域別の構成比
(3) 新契約マージンの商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値、新契約価値及びその比率として新契約マージンの商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約マージンについては、保障が8.48%と高く、ユニットリンクが3.86%で続き、貯蓄は2.80%となっている。2017年との比較では2016年から2017年にかけてと同様に、全ての商品タイプで新契約マージンが上昇している。
新契約保険料現在価値及び新契約価値、新契約マージンの商品タイプ別状況
(4)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンとIRR(内部収益率)の地域別状況は、次ページの図表の通りとなっている。

構成比は低いものの、中東欧の新契約マージンが高くなっている。親会社国イタリアの水準がグループ全体より高い一方で、フランスのマージンやIRRは他国に比べて低い水準となっている。
新契約マージンの地域別状況
(参考)元受保険料の商品タイプ別内訳
元受保険料の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りで、保有ベースでは引き続き、貯蓄・年金の構成比が5割以上となっている。その数値は2016年から2017年にかけて7%ポイント低下し、代わりに保障やユニットリンクの構成比が高くなっていたが、2017年から2018年にかけては、各商品タイプの構成比に変化はみられなかった。
生命保険事業の元受保険料(Gross direct premiums)の商品タイプ別内訳
4|Prudential
(1)全体の状況
2018年の新契約利益(New Business Profit)(European Embedded Value Principlesで算出された利益)は、2017年に比べて7.2%(比較ベースで11%、以下同様)増加して、38.77億ポンドとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約利益/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2017年に比べて0.6%ポイント上昇して、7.7%となった。また、年換算保険料に対する新契約マージンは、2017年に比べて5%ポイント上昇して、57%となった。

2017年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBP)は1.1%減少して502.5億ポンドとなり、新契約年換算保険料(APE)は、2.2%減少(1%増加)して、68.02億ポンドとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約年換算保険料の地域別内訳
新契約年換算保険料は、英国を中心とした欧州では2%進展したが、アジアでは2%減少(2%増加)、米国では4%減少(7%減少)となった。

アジアは、新契約年換算保険料で6割弱を占めており、その水準を徐々に高めてきている。
新契約年換算保険料の地域別内訳
Prudentialは、アジア主要国において、有意な新契約年換算保険料水準を計上してきている。

2018年は、中国、シンガポール、台湾やタイ、ベトナム等で高い成長率を確保している。香港ではこの4年間、特に高水準となっているが、これは、(1)エージェンシーの数と生産性の向上、(2)ブローカー・ネットワークへの進出に加えて、(3)中国本土をベースとした顧客への対応に積極的に取り組んだ、ことが理由として挙げられている。
新契約年換算保険料の地域別内訳(アジアの主要国)
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中村 亮一

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