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- 貸出・マネタリー統計(19年4月)~地銀貸出の鈍化が継続、伸び率は約5年半ぶりの低さに
2019年05月15日
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1.貸出動向: 地銀の貸出伸び率が3%割れに
(貸出残高)
5月14日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、4月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.54%と前月改定値(同2.46%)からやや上昇した(図表1)。上昇は2ヵ月連続となる。
業態別では、都銀等の伸び率が前年比2.15%(前月は1.80%)と大きく上昇し、全体の伸び率上昇に寄与した(図表2)。都銀等の伸び率は大きく変動しており、大企業の巨額のM&Aに絡む資金需要が貸出の伸びに多大な影響を与えている可能性が高い(図表3)。
一方、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比2.88%(前月は3.03%)と低下した。地銀の伸び率は緩やかな低下基調にあり、2013年11月以来約5年半ぶりに3%の節目を割り込んだ。過熱の是正が問題視されたアパートローンに加え、中小企業向け貸出が減速基調にあることが、主な担い手となってきた地銀の貸出鈍化に繋がっている可能性が高い。
5月14日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、4月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.54%と前月改定値(同2.46%)からやや上昇した(図表1)。上昇は2ヵ月連続となる。
業態別では、都銀等の伸び率が前年比2.15%(前月は1.80%)と大きく上昇し、全体の伸び率上昇に寄与した(図表2)。都銀等の伸び率は大きく変動しており、大企業の巨額のM&Aに絡む資金需要が貸出の伸びに多大な影響を与えている可能性が高い(図表3)。
一方、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比2.88%(前月は3.03%)と低下した。地銀の伸び率は緩やかな低下基調にあり、2013年11月以来約5年半ぶりに3%の節目を割り込んだ。過熱の是正が問題視されたアパートローンに加え、中小企業向け貸出が減速基調にあることが、主な担い手となってきた地銀の貸出鈍化に繋がっている可能性が高い。
これまでは、大規模金融緩和に伴う金利低下の悪影響を貸出増加によって一部緩和してきただけに、貸出の伸びが鈍化すれば、地銀の収益はますます圧迫される。日銀の金融緩和の持続性にも影響を与えかねないだけに、今後の動向が注目される。
2.マネタリーベース: 10連休を控えて紙幣・貨幣の伸びが急伸
5月8日に発表された4月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの前年比伸び率は3.1%と、前月(同3.8%)を大きく下回った(図表5)。低下は5ヵ月連続で、伸び率の水準は2012年5月(2.4%)以来の低水準に。後述のとおり、日銀の国債買入れ(資金供給策)が段階的に減額されており、その裏側にあるマネタリーベースの鈍化傾向が続いている。
内訳では、改元に伴う10連休を控えて、企業・家計の現金引き出しが例年よりも増えたとみられ、日銀券発行高(紙幣)の伸びが前年比4.6%(前月は同3.3%)、貨幣流通高の伸びが同2.0%(前月は1.7%)とそれぞれ急伸。貨幣の伸びは2002年11月以来約16年半ぶりの高水準となった。
一方、内訳の約8割を占める日銀当座預金の伸び率が前年比2.7%と前月(4.0%)から急低下した(図表6)。日銀の国債買入れ減額に加え、紙幣の引き出しに伴う取り崩しが響いた。
内訳では、改元に伴う10連休を控えて、企業・家計の現金引き出しが例年よりも増えたとみられ、日銀券発行高(紙幣)の伸びが前年比4.6%(前月は同3.3%)、貨幣流通高の伸びが同2.0%(前月は1.7%)とそれぞれ急伸。貨幣の伸びは2002年11月以来約16年半ぶりの高水準となった。
一方、内訳の約8割を占める日銀当座預金の伸び率が前年比2.7%と前月(4.0%)から急低下した(図表6)。日銀の国債買入れ減額に加え、紙幣の引き出しに伴う取り崩しが響いた。
4月末のマネタリーベース残高は514.6兆円で前月末比8.3兆円の増加となった。ただし、4月は季節柄、財政資金の支払いが多く、日銀当座預金が増加しやすいという事情がある。こうした季節性を除外した季節調整済み系列(平残)では前月比で2.2兆円の減少となっている(図表7)。
日銀の国債保有残高を確認すると、長期国債の増加ペース(前年比)鈍化が続いている(図表8)。日銀は年間増加ペースのめどを「約80兆円」に据え置いているが、直近4月末時点では30.9兆円と4割にも満たず、完全に形骸化している。今後も国債買入れの減額がマネタリーベースの伸び率鈍化に働く可能性が高いが、一方で日銀は「物価上昇率(コアCPI)の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を維持する」と表明しているため、プラス圏は維持されるだろう。
日銀の国債保有残高を確認すると、長期国債の増加ペース(前年比)鈍化が続いている(図表8)。日銀は年間増加ペースのめどを「約80兆円」に据え置いているが、直近4月末時点では30.9兆円と4割にも満たず、完全に形骸化している。今後も国債買入れの減額がマネタリーベースの伸び率鈍化に働く可能性が高いが、一方で日銀は「物価上昇率(コアCPI)の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を維持する」と表明しているため、プラス圏は維持されるだろう。
3.マネーストック: リスク性資産はまちまち
5月15日に発表された4月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.55%(前月は2.37%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.20%(前月は2.08%)とともに上昇した(図表9)。伸び率の水準は依然として低いものの、上昇はともに3ヵ月連続となる。
M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)が前年比6.1%(前月は5.9%)、現金通貨が3.6%(前月改定値は3.1%)とともに上昇し、CD(譲渡性預金)のマイナス幅拡大(前月改定値▲6.6%→当月▲9.4%)による影響を賄った(図表10)。
現金通貨の伸び率上昇は、改元に伴う10連休を控えて、企業・家計の現金引き出しが例年よりも増えたためとみられる。一方、預金通貨は現金引き出しという減少要因があったにも関わらず、伸びが上昇している。銀行貸出の増加やマネーストック対象外資産である株式の売却が押し上げに繋がった可能性がある。
なお、定期預金などの準通貨のマイナス幅は横ばいであった(前月改定値▲2.1%→当月▲2.1%)(図表11)。
M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)が前年比6.1%(前月は5.9%)、現金通貨が3.6%(前月改定値は3.1%)とともに上昇し、CD(譲渡性預金)のマイナス幅拡大(前月改定値▲6.6%→当月▲9.4%)による影響を賄った(図表10)。
現金通貨の伸び率上昇は、改元に伴う10連休を控えて、企業・家計の現金引き出しが例年よりも増えたためとみられる。一方、預金通貨は現金引き出しという減少要因があったにも関わらず、伸びが上昇している。銀行貸出の増加やマネーストック対象外資産である株式の売却が押し上げに繋がった可能性がある。
なお、定期預金などの準通貨のマイナス幅は横ばいであった(前月改定値▲2.1%→当月▲2.1%)(図表11)。
広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比2.19%と前月(2.36%)から低下した(図表9)。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率は上昇したが、残高が大きい金銭の信託(前月4.6%→当月2.8%)や外債(前月16.1%→当月13.0%)の伸び率低下が響いた(図表11)。
投資信託(元本ベース)の伸び率は1月に前年比▲9.5%までマイナス幅を広げたが、2月以降はマイナス幅の縮小が続いており、4月は同▲4.1%となった。残高も1月を底に増加に転じている(図表12)。
4月のマーケット環境は比較的落ち着いていたが、リスク性資産に対するマネーフローはまちまちであった。内外の景気減速懸念や政治リスクが燻り、投資マインドが回復しきらない状況にあったためとみられる。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率は上昇したが、残高が大きい金銭の信託(前月4.6%→当月2.8%)や外債(前月16.1%→当月13.0%)の伸び率低下が響いた(図表11)。
投資信託(元本ベース)の伸び率は1月に前年比▲9.5%までマイナス幅を広げたが、2月以降はマイナス幅の縮小が続いており、4月は同▲4.1%となった。残高も1月を底に増加に転じている(図表12)。
4月のマーケット環境は比較的落ち着いていたが、リスク性資産に対するマネーフローはまちまちであった。内外の景気減速懸念や政治リスクが燻り、投資マインドが回復しきらない状況にあったためとみられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年05月15日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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