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- 資金循環統計(18年10-12月期)~個人金融資産は、前年比24兆円減の1830兆円、株価急落で2年半ぶりの前年割れに
2019年03月19日
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1.個人金融資産(18年12月末): 9月末比では30兆円減
2018年12月末の個人金融資産残高は、前年比24兆円減(1.3%減)の1830兆円となった1。前年割れは英国のEU離脱決定による株価下落を受けた2016年6月末以来となる。年間で資金の純流入が19兆円あったものの、昨年終盤の株価急落によって、時価変動2の影響が年間でマイナス43兆円(うち株式等がマイナス31兆円、投資信託がマイナス9兆円)発生し、資産残高が目減りした。
四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(9月末)比で30兆円減少した。例年10-12月期は一般的な賞与支給月を含むことからフローで純流入となる傾向があり、今回も15兆円の純流入となった。ただし、米中摩擦や世界経済の減速懸念に伴って株価が大幅に下落したことで、時価変動の影響がマイナス45兆円(うち株式等がマイナス35兆円、投資信託がマイナス7兆円)発生し、資産残高を押し下げた(図表1~4)。
四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(9月末)比で30兆円減少した。例年10-12月期は一般的な賞与支給月を含むことからフローで純流入となる傾向があり、今回も15兆円の純流入となった。ただし、米中摩擦や世界経済の減速懸念に伴って株価が大幅に下落したことで、時価変動の影響がマイナス45兆円(うち株式等がマイナス35兆円、投資信託がマイナス7兆円)発生し、資産残高を押し下げた(図表1~4)。

なお、その後の1-3月期については、一般的な賞与支給月を含まないことから、例年資金の純流出が5~10兆円程度発生する。ただし、1月以降、米中貿易摩擦緩和期待や米利上げ観測の後退などを受けて、株価が持ち直しに転じているため、時価変動の影響は10兆円程度のプラスになっているとみられる。従って、現時点の個人金融資産残高は12月末とほぼ変わらない水準にあると推察される。
1 2018年7-9月期の数値は確報化に伴って改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
2.内訳の詳細: 定期預金からの流出止まらず、リスク性資産への投資は殆ど進まず
リスク性資産に関しては、株式等が1.0兆円の純流入となった。例年、この時期には年末の「節税売り」が入ることで純流出となる傾向があるが、今回は株価急落に伴う押し目買いが上回ったとみられる。
一方、投資信託は0.6兆円の純流出となった。金融市場の混乱を受けて、投資の引き上げ・見合わせる動きが一部で発生した模様だ。
その他リスク性資産では、対外証券投資(0.04兆円の純流入)や外貨預金(0.02兆円)への流入額が例年を下回っているなど、家計のリスク性資産への投資は全体として殆ど進んでいない。家計における「貯蓄から投資へ」の流れは確認できない。
なお、株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は281兆円3と過去最高であった9月末から43兆円減少し、個人金融資産に占めるリスク性資産の割合も15.4%(9月末は17.4%に低下している。既述のとおり、リスク性資産への資金流入が進まないなかで、株・投資信託等の時価下落が響いた。
その他証券では、国債への資金流入(0.1兆円)が小幅ながら3期連続を記録した。リーマン・ショック後では初となる。国債からは長年資金流出が発生していたが、マイナス金利が導入された2016年から流出規模が縮小し、2017年からは流入が目立つようになった。個人向け国債には最低金利保証(0.05%)が付いており、預金に比べた投資妙味が高まっているためとみられる(図表6~9)。
3 対象は図表9の注をご参照。なお、外貨建て保険(生命保険に分類)や個人型確定拠出年金(その他年金に分類)の一部もリスク性資産に位置付けられるが、残高不明のため対象には含んでいない。
一方、投資信託は0.6兆円の純流出となった。金融市場の混乱を受けて、投資の引き上げ・見合わせる動きが一部で発生した模様だ。
その他リスク性資産では、対外証券投資(0.04兆円の純流入)や外貨預金(0.02兆円)への流入額が例年を下回っているなど、家計のリスク性資産への投資は全体として殆ど進んでいない。家計における「貯蓄から投資へ」の流れは確認できない。
なお、株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は281兆円3と過去最高であった9月末から43兆円減少し、個人金融資産に占めるリスク性資産の割合も15.4%(9月末は17.4%に低下している。既述のとおり、リスク性資産への資金流入が進まないなかで、株・投資信託等の時価下落が響いた。
その他証券では、国債への資金流入(0.1兆円)が小幅ながら3期連続を記録した。リーマン・ショック後では初となる。国債からは長年資金流出が発生していたが、マイナス金利が導入された2016年から流出規模が縮小し、2017年からは流入が目立つようになった。個人向け国債には最低金利保証(0.05%)が付いており、預金に比べた投資妙味が高まっているためとみられる(図表6~9)。
3 対象は図表9の注をご参照。なお、外貨建て保険(生命保険に分類)や個人型確定拠出年金(その他年金に分類)の一部もリスク性資産に位置付けられるが、残高不明のため対象には含んでいない。
3.その他注目点: 海外勢の国債保有高が過去最高を更新、企業の対外投資は減速
2018年の資金過不足(季節調整値)を主要部門別にみると、従来同様、企業(民間非金融法人)と家計部門の資金余剰が政府(一般政府)の資金不足を補い、残りが海外にまわった形となっている(図表10)。2017年との比較では、家計、企業の資金余剰がそれぞれ6.1兆円、14.0兆円減少している。特に企業の資金余剰減少幅が大きくなった理由としては、年終盤の収益減や堅調な設備投資などの影響が考えられるが、詳細は不明。
12月末の民間非金融法人のバランスシートにおける現預金残高は262兆円と過去最高であった9月末から3兆円減少した(図表11)。前年比でみると9兆円増加している。
一方、この一年間の借入の増加幅は13兆円と現預金の増加幅を上回っているため、借入から現預金を控除した純借入額(145兆円)も前年比で4兆円増加している。
また、近年は企業の株式保有残高が大きく増加してきたが、12月末の残高は330兆円と9月末(404兆円)から73兆円も急減した。株価の大幅な下落によって、時価の影響がマイナス72兆円発生したことが響いた。企業の財務状況も昨年終盤の株安の影響を大きく受けた。
また、民間非金融法人による対外投資状況(フローベース)を確認すると、対外直接投資は2.7兆円と7-9月期から0.6兆円減少した(図表12)。また、対外証券投資も1.5兆円と7-9月期から1.0兆円減少した。対外直接投資については、米中通商摩擦や世界経済の減速懸念などに伴う先行き不透明感から、対外証券投資は世界的な金融市場混乱から、それぞれ投資を見合わせる動きが出たと考えられる。
12月末の民間非金融法人のバランスシートにおける現預金残高は262兆円と過去最高であった9月末から3兆円減少した(図表11)。前年比でみると9兆円増加している。
一方、この一年間の借入の増加幅は13兆円と現預金の増加幅を上回っているため、借入から現預金を控除した純借入額(145兆円)も前年比で4兆円増加している。
また、近年は企業の株式保有残高が大きく増加してきたが、12月末の残高は330兆円と9月末(404兆円)から73兆円も急減した。株価の大幅な下落によって、時価の影響がマイナス72兆円発生したことが響いた。企業の財務状況も昨年終盤の株安の影響を大きく受けた。
また、民間非金融法人による対外投資状況(フローベース)を確認すると、対外直接投資は2.7兆円と7-9月期から0.6兆円減少した(図表12)。また、対外証券投資も1.5兆円と7-9月期から1.0兆円減少した。対外直接投資については、米中通商摩擦や世界経済の減速懸念などに伴う先行き不透明感から、対外証券投資は世界的な金融市場混乱から、それぞれ投資を見合わせる動きが出たと考えられる。
国庫短期証券を含む国債の12月末残高は1111兆円で、9月末から19兆円増加した。その保有状況を見ると(図表13)、日銀の保有高が9月末から8兆円増加したが、全体に占めるシェアは43.0%(9月末も43.0%)と横ばいとなった。日銀が一昨年秋以降、国債の買入れペースを減額させていることに加え、分母となる国債の発行残高がやや大きめに増加したことがシェアの上昇を抑制した。
一方、海外部門の12月末国債保有高は134兆円、全体に占めるシェアは12.1%とそれぞれ過去最高を更新した。10-12月期の増加額は8兆円と7-9月の4兆円から加速している。海外勢はドル調達コストの関係で有利な条件で円を入手できる状況が続いており、超低金利にもかかわらず国債への資金流入傾向が続いてきた。さらに、昨年終盤には株安等を受けて世界的に国債の利回りが低下したが、もともと超低金利の日本国債の利回り低下はわずかに留まったため、(海外勢から見て)日本国債の相対的な魅力が高まったという面もある。
一方、海外部門の12月末国債保有高は134兆円、全体に占めるシェアは12.1%とそれぞれ過去最高を更新した。10-12月期の増加額は8兆円と7-9月の4兆円から加速している。海外勢はドル調達コストの関係で有利な条件で円を入手できる状況が続いており、超低金利にもかかわらず国債への資金流入傾向が続いてきた。さらに、昨年終盤には株安等を受けて世界的に国債の利回りが低下したが、もともと超低金利の日本国債の利回り低下はわずかに留まったため、(海外勢から見て)日本国債の相対的な魅力が高まったという面もある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年03月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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