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中国経済の現状と今後の注目点-景気回復は本物なのか、そして今後のシナリオは?

三尾 幸吉郎
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1.中国経済の概況
しかし、春節連休明けの3月は例年、1-2月期を大きく上回ることが多く、4月には反動減となる可能性がある上、「債務圧縮(デレバレッジ)」と「米中貿易摩擦」という景気悪化の根本原因も残っている。18年に中国経済が減速した原因のひとつは「デレバレッジ」である。中国政府が「デレバレッジ」に舵を切ったのは、17年の党大会後に開催された中央経済工作会議でのことで、2020年までの中期的な目標とされている。中国の非金融企業が抱える債務残高はGDP比約150%とG20諸国で最大、このまま放置すれば将来に大きな禍根を残すと考えたからだ。債務が拡大した発端はリーマンショック後の4兆元の景気対策にあるが、15年に株価が急落した時の景気対策でも債務が上乗せされた。そして、中国政府がデレバレッジを推進した18年、インフラ投資は急減速し、15年10月に導入された小型車減税が17年末で撤廃されたことも自動車販売の足かせとなった。
また、18年の中国経済には「米中貿易摩擦」も大きな打撃となった。米中対立が激しさを増す中で、中国経済の将来を担う「中国製造2025」関連産業で先行き不透明感が強まり、中国株は大きく下落し16年1月に付けた安値を割り込み、消費者マインドを冷やして、自動車販売は前年割れに落ち込むこととなった。さらに、米中対立は「産業のコメ」と言われる集積回路(IC)にも悪影響を及ぼし、データセンター建設ラッシュは沈静化、中国における仮想通貨バブル崩壊でマイニング需要の落ち込みや次世代通信規格(5G)への移行期に差し掛かったスマホの買い控えも重なり、ITサイクルはピークアウトした。最近のIC生産を見ると、3月は138億個と1-2月の平均(114.75億個)を大きく上回ったものの、前年同月の生産量を下回っており、トレンドは下向きのままだ(図表-2)。米中首脳会談の設定も先送りが続いており、先行き不透明感は晴れない。
このように足元で明るい兆しがでてきた中国経済だが、景気が持ち直せば「デレバレッジ」が再び推進される可能性が高く、「米中貿易摩擦」の火種がくすぶる中では先行き不透明感も払拭し切れないことから、中国の景気は一時的には回復しても、持続的な回復は期待薄といえるだろう。
2.消費の動向
業種別の内訳が分かる限額以上企業の統計を見ると(図表-4)、化粧品が前年比10.9%増と前四半期の同2.5%増を大きく上回ったほか、飲食や日用品も前四半期を上回る伸びを示した。一方、住宅販売低迷を背景に、家具類が同5.0%増と前四半期の同10.1%増を下回り、家電類も同7.8%増と前四半期の同11.0%増を下回った。また、自動車販売は前年比3.4%減と前年割れとなったが、前四半期の同10.1%減に比べるとマイナス幅が縮小した。17年末で打ち切られた小型車(排気量1.6L以下)減税による需要先食いの影響が薄れたのに加えて、米中貿易協議の進展に対する期待が高まって株価が上昇し、逆資産効果が薄れたことがあると見られる。そして、18年夏をピークに低下していた消費者信頼感指数(UnionPay)も下げ止まったため、消費の追い風となりそうだ(図表-5)。なお、ネット販売(商品とサービス)は前年比15.3%増と引き続き高い伸びを示した。
但し、個人消費への影響が大きい雇用指標を見ると、求人倍率は1.28倍と高位を維持しているものの、調査失業率が上昇してきているため、今後の雇用情勢には注意が必要である(図表-6)。
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
3.投資の動向
(2019年04月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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