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個人投資家の長期資産形成における金融リテラシー向上の重要性
金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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2015年に行われた金融リテラシーの水準に関する調査結果1によると、日本の成人において金融リテラシーのある人の割合は43%であったことが紹介されている。この調査では、金融や経済に対する知識事項(ポートフォリオの分散効果、インフレーション、金利、複利効果)について4問中3問以上正答すると「金融リテラシー」があると判断している。デンマーク(71%)、ノルウェー(71%)やスウェーデン(71%)といった北欧諸国において金融リテラシーのある成人の割合が最も高く、次にカナダ(68%)、イスラエル(68%)、英国(67%)、ドイツ(66%)やオランダ(66%)といった国々が続く。米国は57%であるなど、先進国における金融リテラシーの水準は相対的に高い結果となっている。この調査結果から、日本国内における金融リテラシーの水準は、残念ながら、他の先進国と比較して決して高いとは言えない状況にある。
この調査結果では、金融リテラシーの水準と一人あたり名目GDPとの関係について言及されている。そこで、各国の「(この調査結果における)金融リテラシーのある成人の割合(2015年)」と「一人当たり名目GDP(2017年)」を並べてみたのが図表1である。一人あたり名目GDPが2万米ドル(約220万円)以上の国・地域に着目すると、金融リテラシーのある成人の割合が高くなると、一人あたりの名目GDPも大きくなる傾向があることが分かる。この理由の一つとして、労働所得だけではなく、資産運用による資本所得の効果も加わるためと推察できるだろう。さらに、一人あたり名目GDPが一定程度の水準になければ、金融リテラシーがあったとしても、所得を増やして生活水準を高めていくことが難しいことも示唆している。
また、この調査結果では数学リテラシーとの関係についても指摘がある。各国の「金融リテラシーのある成人の割合(2015年)」と「15歳の数学リテラシーの水準(2015年)」を並べると、金融リテラシーのある成人の割合について、一定水準(40%中盤)を境に数学リテラシーとの関係性に変化があることが分かる(図表2)。金融リテラシーを身に付けていくには、数学の基礎的な内容に対する理解が必要条件となる可能性がある。この調査では、ポートフォリオの分散効果、インフレーション、金利、複利効果への知識が問われており、特に「割合の計算」への理解が結果に影響したものと考えられる。
1 Financial Literacy around the World,” Standard & Poor’s Ratings Services Global Financial Literacy Survey(2015年)
これらの調査結果から、金融リテラシーの水準は、その国における経済や教育の水準、投資家のバイアスと密接に関連するとみられる。日本の場合、数学リテラシーは相対的に高いとみられることから、バイアスの抑制が効果的ではないかと思われる。バイアスの抑制には、金融教育が有効とされており、金融リテラシーの向上に寄与するものと考えられる。
2 「行動経済学の金融経済教育への応用-行動バイアスからマインドセット・バイアスへ」(金融庁金融研究センター ディスカッションペーパー、2016年1月)
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(2019年04月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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