2019年03月28日

平成の労働市場を振り返る~働き方はどのように変わったのか~

経済研究部 経済調査部長   斎藤 太郎

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1――はじめに

まもなく平成が終わろうとしている。本稿では平成30年間(1989年~2018年)の労働市場を振り返る。まず、労働市場の代表的な指標である完全失業率と有効求人倍率の推移を確認すると、完全失業率は平成がスタートした1989年は2%台前半と現在を若干下回る水準となっていた。しかし、1990年代初頭のバブル崩壊後は約10年にわたってほぼ一貫して上昇し、1995年に3%、1998年に4%、2001年に5%を突破した。この間、景気が回復に転じても失業率はほとんど下がらず、景気後退によって大きく上昇することを繰り返し、2002年8月、2003年4月には過去最悪の5.5%を記録した。失業率がようやく低下し始めたのは、回復期間が戦後最長となった2002年1月を底とした景気回復期1の中盤からであった。2008年のリーマン・ショックによって景気が急速に悪化した際には、再び失業率が大きく上昇し2009年7月には過去最悪の5.5%に並んだが、その後は長期にわたり低下傾向が続き、2018年(平均)には2.4%となった(図表1)。
図表1 失業率、有効求人倍率の推移 一方、労働市場の需給バランスを反映する有効求人倍率は、平成が始まった1989年には1倍を上回っていたが、景気が1991年2月にピークアウトするのと同時に低下し始め、その後は景気循環に連動する形で上昇、低下を繰り返した。有効求人倍率は2009年8月に0.42倍と過去最低水準を記録したが、その後10年近く上昇し続け、足もとでは1.6倍台とバブル期のピークを上回る水準となっている。
図表2 完全失業率(構造失業率と需要不足失業率)の推移 足もとの失業率の水準は1990年代初頭に比べれば若干高いが、これは企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力、年齢等)が異なることなどにより生じる「構造失業率」の水準が当時よりも高くなっていることが一因と考えられる。

筆者が推計した構造失業率2は1990年代前半までは概ね2%台前半だったが、直近では2%台後半となっている。実際の失業率から構造失業率を差し引いた需要不足失業率は1980年代後半から1990年代初頭にかけての▲0.1%前後に対して、2018年中は▲0.3%程度となっている(図表2)。足もとの労働需給は平成初期のバブル期よりも引き締まった状態とみることができるだろう。
 
1 2012年12月に始まった第16循環の景気回復が2019年1月まで続いていれば、戦後最長を更新することになる。
2 欠員率(V)と失業率(U)の関係を表すUV 曲線を推定し、その両者が均衡する点を構造失業率とした。
 

2―就業者数増加の主役は女性、高齢者

2―就業者数増加の主役は女性、高齢者

1男性は60歳以上、女性は幅広い年齢層で就業者が増加
次に、平成30年間の就業者数の推移を見ていこう。就業者数は平成が始まった1980年代終盤から1990年代初頭にかけて年100万人以上の大幅増加が続いた後、1990年代半ばにかけてほぼ横ばいの推移となった。失業率は1990年代前半には悪化し始めていたが、就業者数が減少に転じたのは1997年の消費税率引き上げやその後のアジア通貨危機などによって景気が大きく悪化した1998年であった。就業者数は1998年から2003年まで6年連続で減少した後、2004年からはやや持ち直したものの、2008年からは再び減少し2012年には6280万人となり、ピーク時の1997年(6557万人)から▲277万人の大幅減少となった。アベノミクスが始まった2013年からは6年連続で増加し、2018年にはようやく1997年の水準を上回る6664万人となった。平成30年間の就業者数の増加幅は653万人、この間の増加率は10.9%、年平均0.3%である。
図表3 平成30年間の就業者数増加の内訳 平成30年間の就業者数の増加を男女別にみると、男性の115万人増に対して、女性が538万人増と女性の増加幅が圧倒的に大きい。年齢別には、男性は59歳以下が▲313万人の減少となっているのに対し、60歳以上では428万人の増加、女性は59歳以下が222万人の増加、60歳以上が316万人の増加となっている(図表3)。平成30年間で就業者全体に占める女性の割合は40.1%から44.2%へ(+4.2%ポイント)、60歳以上の割合は10.7%から20.8%へ(+10.1%ポイント)と上昇した。
高齢者の増加幅が大きい一因は、言うまでもなく高齢化という人口動態の変化によるものである。男女別の就業者数の増減を人口要因と就業率の変動要因に分解してみると、男性の場合、60歳以上の増加、59歳以下の減少のほとんどが当該年齢層の人口増減によって説明できる。就業率は59歳以下では上昇しているが、60歳以上では低下している。これは、高齢者の高齢化が進み、相対的に就業率が低い年齢層の割合が高まっているためである(図表4)。一方、女性は59歳以下の人口が大きく減少(59歳以下の人口減少要因は▲350万人)しているものの、59歳以下の就業率上昇(1988年:55.1%→2018年:71.1%)の効果がそれを大きく上回っている。60歳以上については人口要因、就業率要因ともに就業者数の増加に寄与している(図表5)。
図表4 男性就業者数の増減要因(平成30年間)/図表5 女性就業者数の増減要因(平成30年間)
総務省統計局の「労働力調査」における年齢区分は5歳あるいは10歳刻みとなっているが、参考表として年齢各歳、就業状態別15歳以上人口のデータ(2002年~2018年)が提供されている。このデータを用いて、男女別年齢各歳別の就業率を確認すると、男性は60歳以上の就業率が大幅に上昇していることが分かる。2002年から2018年の16年間で60歳以上の就業率は概ね10%ポイント上昇している。最も上昇幅が大きいのは62歳の19.8%ポイントである。かつては、60歳定年制を採用している企業が多いこともあり、59歳から60歳にかけて就業率が大きく低下するという特徴があった。しかし、厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げ(2001年4月~)、企業に65歳までの雇用確保措置を講じることを義務付けた「高年齢者雇用安定法」が2006年4月に施行されたことから、60歳以上の就業率が大きく上昇し、59歳から60歳にかけての就業率の低下は緩やかとなった(図表6)。

一方、女性は幅広い年齢層で就業率が大きく上昇しているが、20歳代後半から30歳代半ば、60歳以上の上昇幅が特に大きい(図表7)。
図表6 60歳以上の就業率が急上昇(男性)/図表7 幅広い年齢層で就業率が大きく上昇(女性)
2解消に向かうM字カーブ
日本の女性の労働力率(労働力人口/15歳以上人口)は結婚、出産期に当たる年代にいったん低下し、育児が落ち着いた後に再び上昇するという、いわゆる「M字カーブ」を描くことが知られてきたが、近年はM字カーブの底が浅くなってきている(図表8)。

1988年の女性の労働力率を年齢階級別に見ると、20~24歳が73.7%と最も高く、25~29歳、30~34歳にかけて急低下している。30~34歳の労働力率は50.9%と20~24歳に比べて20%ポイント以上も低くなっていた。その後、労働力率が全体として上昇する中で、M字の左側の山、谷が右方向にシフトするとともに、M字の谷が徐々に浅くなっている。2018年の山(25~29歳の83.9%)から谷(35~39歳の74.8%)までの低下幅は9.1%ポイントと30年前に比べて大きく縮小している。

女性の労働力率を配偶関係別にみると3、未婚女性は20歳代後半をピークにその後低下する、有配偶の女性は年齢が高くなるにつれて上昇する傾向がある(図表9、10)。M字カーブが解消に向かっている理由のひとつは、もともと労働力率が高い未婚女性の割合が上昇していることであるが、近年は有配偶の労働力率が大きく上昇している。有配偶女性の労働力率は1988年から2008年までは大きな変化がなかったが、直近10年間(2008年→2018年)の上昇幅は、20~24歳で+22.9%ポイント、25~29歳で+17.9%ポイント、30~34歳で+12.5%ポイントとなっている。
図表8 女性の年齢階級別労働力率
図表9 女性(未婚)の年齢階級別労働力率/図表10 女性(有配偶)の年齢階級別労働力率
 
3 配偶関係には未婚、有配偶のほかに死別・離別があるが、ここでは捨象している。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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