2019年03月07日

オフィス市況は一段と改善。REIT指数(配当込)は最高値を更新ー不動産クォータリー・レビュー2018 年第4 四半期

基礎研REPORT(冊子版)3月号

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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10-12月期のGDP成長率は2四半期ぶりのプラス成長となった。住宅市場は価格が高値圏で推移するなか横ばいの動きとなっている。東京オフィス市場は、空室率がさらに改善し賃料の上昇ペースが高まっている。2018年の訪日外国人客数は前年比8.7%増加、外国人の宿泊者数は11%増加した。2018年のJ-REIT市場は6.7%上昇し、J-REITによる年間の物件取得額は約1.8兆円に増加した。

1―経済動向と住宅市場

10-12月期の実質GDP成長率(1次)は前期比年率1.4%となった。前期に減少した民間消費や設備投資の回復がプラスに寄与した。また、10-12月期の鉱工業生産指数は2四半期ぶりに上昇したが、こちらも自然災害の影響が剥落したためで生産の基調は強くない[図表1]。
景気は実勢として弱めの動きとなっている。
 
鉱工業生産
住宅市場は価格が高値圏で推移するなか横ばいの動きとなっている。2018年の新設住宅着工戸数は前年比▲2.3%の約94.2万戸となり2年連続で減少した[図表2]。
新規住宅着工
全体の4割超を占める貸家が前年比▲5.5%と落ち込んで全体の着工戸数を押し下げた。一方、2018年の首都圏のマンション新規発売戸数は37,132戸(前年比3.4%)となり2年連続で増加した。1戸当たりの平均価格は5,871万円(前年比▲0.6%)、㎡単価は86.9万円(前年比1.2%)、初月契約率は62.1%(前年比▲6.0%)、12月の販売在庫は9,552戸(前年比+2,446戸)と大幅に増加した。また、2018年の首都圏中古マンションの成約件数は37,217件(前年比▲0.3%)となり、過去最高を記録した前年から減少に転じた。今後の住宅市場については、貸家着工と関連の高い個人の貸し家業向け貸出(アパートローン)の動向や10月の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要の影響が注目される。

2―地価動向

地価は引き続き上昇している。国土交通省の「地価LOOKレポート(平成30年第3四半期)」によると、全国100地区のうち96の地区で上昇し、3期連続で上昇が9割以上を占めた[図表3]。
 
全国の地価上昇・下落地区の推移
好調なオフィス市況や再開発事業の進展による繁華性の向上などを背景に不動産需要は引き続き高い水準にある。

3―不動産サブセクターの動向

1│オフィス
 
三鬼商事によると12月の都心5区空室率は前月比▲0.10%低下の1.88%、平均募集賃料は前月比0.7%上昇し60ケ月連続でプラスとなった。空室率は1991年末以来27年ぶりの水準に低下し、賃料の上昇ペースは年率8~9%に高まっている。他の主要都市でもオフィスの新規供給が限定的で需給が逼迫するなか空室率は低下し、賃料も上昇している[図表4]。
 
主要都市のオフィス空室率
成約賃料データに基づく「オフィスレント・インデックス(第4四半期)」によると、東京Aクラスビル賃料は39,468円(前期比1.2%)となった。Aクラスビル賃料は5期連続で上昇し4万円台への回復が視野に入りつつある[図表5]。
2│賃貸マンション
 
東京23区のマンション賃料は上昇基調を維持している。第3四半期は前年比でシングルタイプが2.3%、コンパクトタイプが3.4%、ファミリータイプが5.5%上昇した。また、高級賃貸マンションについても空室率の低下に伴い賃料が上昇している[図表6]。
 
高級賃貸マンションの賃料と空室率
3│商業施設・ホテル・物流施設
 
商業動態統計などによると、2018年の小売販売額(既存店ベース)は百貨店が▲0.3%、スーパーが▲0.6%、コンビニエンスストアが0.6%となり各業態ともほぼ横ばいであった。
 
2018年のホテル客室稼働率は自然災害の影響を受けた大阪や札幌の稼動率が一時大きく落ち込んだもののその後は回復し、全国平均でも前年並みの水準(81.3%)を確保した[図表7]。
 
全国のホテル客室空室率
2018年の訪日外国人客数は前年比8.7%増加の約3,119万人となった[図表8]。
訪日外国人客数
昨年7月以降、自然災害の影響により東アジアからの訪日客が減少し前年比の伸び率は1ケタ台にとどまった。政府目標である「2020年4,000万人」を達成するには今後年率13.2%の伸びが必要となる。また、訪日客の旅行消費額は過去最高の4.5兆円、外国人の延べ宿泊者数は11%増加した。
 
首都圏の大型物流施設の空室率(第4四半期)は前期比▲1.3%低下の4.8%、近畿圏は前期比▲2.0%低下の13.0%となった[図表9]。
大型物流施設の空室率
eコマース市場の拡大や物流拠点の集約ニーズなどを背景に先進的物流施設への需要は旺盛で、これまで空室の目立っていた圏央道エリア(首都圏)や湾岸部(近畿圏)の需給バランスが改善した。

4―J-REIT(不動産投信)・不動産投資市場

第4四半期の東証REIT指数は、内外株式市場の大幅下落を受けて、9月末比▲0.2%下落した。
 
2018年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数は6.7%上昇、配当を含めた総合リターンは2ケタのプラスとなり配当込み指数は史上最高値を更新した[図表10]。
 
J-REIT市場
需給面では株式市場が調整局面に入るなか、REIT市場はリスクマネーの逃避先に選ばれて海外投資家を中心に資金が流入した。市場時価総額は13%増の12.9兆円となり東証1部の不動産業セクターに並ぶ規模へと拡大している。不動産売買では、約1.8兆円の不動産を取得する一方で、現在の価格上昇を好機と捉えて過去最高となる約3,720億円の資産売却を実行した。アセットタイプ別ではスポンサーパイプラインが豊富なオフィスビルや物流施設の取得が増加した。
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2019年03月07日「基礎研マンスリー」)

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