2019年01月08日

60歳を迎えて老後の生活資金を考える-お得な年金受取方法と資産運用とは何か-

金融研究部 専務取締役 部長 CFA   安孫子 佳弘

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3――老後の資産運用をどうするか

老後の資産運用をどうするかは実に難しい問題である。各人の資産保有状況、給与、公的年金、企業年金、確定拠出年金等から得られるインカム等の経済的な側面に加えて、各人が資産運用についてどれだけ詳しいかという金融リテラシーの程度、健康状況、家族構成等、実に千差万別である。

万人共通の資産運用というものはないので、各人が各人に適した資産運用をするしかない。勿論、これは老後の資産運用に限った話ではない。

以前に「正しい投資とは何か~投資の勝ち負け~」という題目でレポートを執筆したので、
参考(※)にしていただきたいが、資産運用はそう簡単ではない。
※2017年08月30日執筆:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=56523?site=nli
 
しかし、老後においては一般的に収入が少なくなるという特色を踏まえると、資産運用に関して、やった方が良いことや気をつけるべきことがあるので、いくつか私見を述べたい。
(1)資産運用の目的や成果イメージを明確化すること
資産運用の目的を「老後の生活資金確保」としても、まずはじめに、どのくらいのリターンやインカムが必要で、どのくらいのリスクを覚悟しなければならないかを考え、自分なりに納得する必要がある。このためには、自分で自分の性格を良く考える必要がある。損するのが絶対嫌な性格なのか、多少のリスクは許容するのか、それともリスクを取るのが好きなのかを自分で見極める必要がある。

その上で、自分で資産運用について勉強したり、ネットで情報を集めたり、資産運用に詳しい人に聞いたりなどし、最終的に、自分で適切な目的や具体的な投資目標を設定した上で、それに合致した投資の選択をしなければならない。こうしたことは結構面倒なプロセスであるが、最終判断は他人任せにしてはならないと思う。もし、自分で判断し自分で十分納得できる自信がないのであれば、無理をせず、銀行預金や個人向けの国債等で資産を守るのが無難であろう。

ただ、少額で良いので、損しても良い範囲で、今後有望だと思う好きな会社の株式にでも投資して、その後の状況を一喜一憂するという資産運用の楽しさも経験してほしいという気もする。
 
(2)騙されないこと
資産運用をするには信頼できる相手と取引するのが非常に重要で、銀行や証券会社等の金融庁登録の金融商品取引業者に取引先は限定すべきである。さらに言うと、金融商品取引業者であったとしても、安心できる取引先であるとは限らないため、信頼できる先を慎重に選定してほしい。

よく聞く「選ばれたあなただけに紹介する、とても良い投資の話がある」というお誘いは怪しい。それほど良い投資であれば、その人または会社が銀行から借入等して投資すれば良いはずだ。わざわざ一般の小口投資家にコストをかけて勧誘してくるのは怪しいと思わなければならない。

「リスクが少なく、リターンがかなり大きい」という投資の話も当然疑ってかかるべきだ。もし、そういう「素晴らしい投資商品」を勧められたら「どういう場合に元本が目減りしたり、リターンがマイナスになるのか」を質問することをお勧めする。「そういうことはまず無い。安心して下さい」という回答であれば、その投資商品への投資はすべきではないと思う。

人は特別の「儲け話」に弱い。くれぐれもうまい話にはご注意いただきたい。

また、仕組みが複雑で良く分からない投資商品は一般的に手数料が高く、手数料に見合うほどリターンは得られない場合が多いため、あまりお勧めできない。投資商品を購入する前に、実質的な手数料総額や割合がどのくらいになるかを是非とも確認してほしい。

(3)強いて言うと、おすすめは高配当の株式系の商品
現時点で、老後の生活資金用の資産運用でリスクをとって投資するのであれば、おすすめは短期的値上がりを狙う商品ではなく、長期的にある程度高めのインカムが期待できる商品ではないかと思う。老後の生活資金確保という目的から考えて、短期的な元本リスクがあまり高いものは回避すべきで、一定以上のインカムが期待でき、換金しやく、分散投資になる商品を選択する必要がある。

こうした意味で、初心者向けとしては日経225やJ-REITのETFや投資信託はお勧めできる。当然、株式系投資なので、価格は大きく変動するが、インカムに注目すると日経225で2%、J-REITで4%程度が期待できる。個別企業の株式だと配当の安定度が心配だが、日経225というインデックスへの投資であれば、個々の企業業績にある程度の波があっても日経225全体でのインカムの安定性は分散により一定程度確保できると期待できる。J-REITも中長期的に価格の変動は大きいものの、収入の源はオフィスや商業施設や住宅の賃料なので、長期的に一定水準以上のインカムが期待できる。
 
基本的な考え方としては、インカム目的で株式を分散して保有し続けるのであれば、中長期的なサイクルで価格が変動しても、インカムだけは毎年期待できるので、元本変動リスクはあまり考えなくても良いのではないかというものである。価格は下がってもいつかは戻るという楽観的な考えというお叱りを受けるかもしれないが、株式の長期保有における一つの考え方として紹介したい。

一方で、現在の低金利が好景気等で上昇し、2%とか一定以上の金利となった場合は、あまり欲張らずに資産運用残高の多くを預金や国債に移行することをお勧めしたい。
 

4――最後に20代、30代の働く人たちへ貯蓄および投資のお勧め

4――最後に20代、30代の働く人たちへ貯蓄および投資のお勧め

以上、60歳を迎えるに当たって、公的年金や確定拠出年金での各種選択における考え方を説明してきたが、20代、30代の会社員は是非とも老後の生活資金を今のうちから確保する努力をしてほしい。老後の生活資金を公的年金だけに頼るというのはリスクが高い。自助努力として確定拠出年金に加え、NISA、つみたてNISA等、各種税制優遇の制度があるので、是非とも有効活用すべきだと思う。

特に確定拠出年金は所得控除があり、実効税率が追加のリターンとなるため、現在リターンがほぼゼロの銀行預金や債券ファンドであったとしても確定拠出年金内で選択した方が得である。

ただ、長期的に見ると株式投資は価格が上昇していく傾向があるため、若い世代であれば、是非とも毎月定期的に確定拠出年金で国内株式、J-REITや海外株式等に継続投資することをお勧めしたい。将来、50歳、60歳になってから、老後の生活資金確保の準備を開始しても、もう間に合わない可能性がある。その歳になると、資産を長期的に積み上げるという選択肢は少なくなる。長期的に高めのリターンが期待できる株式投資は中長期的なサイクルで値動きがあるため、残りが10年くらいしかない場合、そのサイクルを吸収できる時間、つまり株価の回復を待つ時間がないというリスクが高くなる。50歳になってから、大きなリスクをとって資産運用に失敗してしまうと、老後の生活資金が不十分となりかねない。その場合、老後はひたすらコスト削減、つまりは節約するしかないことになる。

また、資産運用について基本的なことの勉強を是非お勧めしたい。経済見通し等に応じ、資産運用の状況を踏まえ、定期的に各資産への投資配分を見直しすべきなのだが、一定以上の知識がないと、どう見直して良いか分からないし、専門家に聞いても理解不能ということになりかねない。

自分の長い人生の中で、資産運用は住居の選定と同様に非常に重要な意思決定である。長期的に、老後も含め、安定した生活が送れるよう、無駄使いをせず、貯蓄に励み、良い投資をするなどして、家計面における適切な人生プランニングとなるよう実践していってほしい。

(参考情報)
 
・「年金の繰下げ受給」(日本年金機構):
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
 
・「老齢基礎年金の繰下げ受給」(日本年金機構):
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-06.html
 
・「老齢厚生年金の繰下げ受給」(日本年金機構):
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-05.html
 
・「66歳以後に受給を繰下げたいとき」(日本年金機構):
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/20140421-31.html
 
・「確定拠出年金制度」(厚生労働省):
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/index.html
 
・「確定拠出年金の対象者・拠出限度額と他の年金制度への加入の関係」(厚生労働省):
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/taishousha.html
 
・「No.1420 退職金を受け取ったとき」(国税庁):
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
 
・「No.1600 公的年金等の課税関係」(国税庁):
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
 
・「金融商品取引業者一覧」(金融庁):
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kinyushohin.pdf
 
・「NISAとは」(金融庁):
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
 
 

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金融研究部   専務取締役 部長 CFA

安孫子 佳弘 (あびこ よしひろ)

研究・専門分野
資産運用、運用リスク管理

(2019年01月08日「基礎研レポート」)

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