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- 貸出・マネタリー統計(18年10月)~通貨供給量の伸びは約6年ぶりの低水準に
2018年11月09日
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1.貸出動向: 貸出の伸び率は3ヵ月ぶりに低下
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を確認すると、直近判明分である9月の伸び率は前年比2.40%と8月の2.28%から0.11%上昇した。ドル円レートの前年比は8月から9月にかけてほぼ横ばいであったため(図表4)、見た目(特殊要因調整前)の伸び率の動き(0.16%上昇)と大差はなかった。
10月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、10月のドル円レートの前年比が9月と大して変わらなかったことを鑑みると、特殊要因調整後の伸び率も見た目の伸び率と同様に低下し、前年比2.3%程度になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは9月分まで。
10月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、10月のドル円レートの前年比が9月と大して変わらなかったことを鑑みると、特殊要因調整後の伸び率も見た目の伸び率と同様に低下し、前年比2.3%程度になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは9月分まで。
2.マネタリーベース: 日銀当座預金の伸び率低下が一服
なお、10月末のマネタリーベース残高は前月末から1.9兆円の増加に留まったが、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると前月比で3.8兆円の増加となっており、9月(0.1兆円の増加)からやや持ち直している(図表7)。日銀は長期国債買入れの減額を段階的に実施しているため、長期国債の買入れペースは鈍化が続いている(10月は前年比42.7兆円増・図表8)。一方、日銀はこれまで短期国債の保有残高を圧縮してきたが、既に残高が乏しくなっていることから、減少ペースが鈍っている(図表8・10月は前年比15.5兆円減)。マネタリーベースの伸びはその裏側にある国債買入れ動向に左右されるため、最近は短期国債残高の減少ペース鈍化がマネタリーベース増加ペースの下支えに働いているとみられる。
従って、今後も日銀が長期国債買入れの減額を続けていくことでマネタリーベースの伸び率は低下基調を辿りそうだが、そのペースは緩やかなものに留まる可能性が高い。
従って、今後も日銀が長期国債買入れの減額を続けていくことでマネタリーベースの伸び率は低下基調を辿りそうだが、そのペースは緩やかなものに留まる可能性が高い。
3.マネーストック: 通貨供給量の伸びは約6年ぶりの低水準に
11月9日に発表された10月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.67%(前月は2.84%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.34%(前月は2.46%)とともに前月から低下した(図表9)。M2・M3の伸び率低下はともに6ヵ月連続であり(小数点第2位以下まで見た場合)、伸び率の水準はそれぞれ2012年12月、2013年1月以来およそ6年ぶりの低水準となっている。
最近では、貸出の伸びが限定的に留まっていることに加え、原油高・輸出減少などの影響で経常黒字が縮小していることが影響しているとみられる。
最近では、貸出の伸びが限定的に留まっていることに加え、原油高・輸出減少などの影響で経常黒字が縮小していることが影響しているとみられる。
M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比6.2%(前月改定値は6.6%)と大きく低下したほか、現金通貨の伸び率も同3.7%(前月は3.9%)と低下している。一方、準通貨(定期預金など、前月改定値▲2.0%→当月▲1.9%)、CD(前月改定値▲4.1%→▲3.3%)の伸びはマイナス幅をやや縮小したものの、依然としてマイナス圏が続いている(図表10・11)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年11月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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