2018年08月20日

韓国、国民年金の第4回財政再計算の結果を発表―財政安定化政策のみならず、雇用安定化政策の同時実施を―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 今年は韓国が公的年金(以下、国民年金)を導入してから30年を迎える年である。
     
  • 国民年金制度発展委員会(以下、委員会)が8月17日に発表した第4次財政推計によると、2018年5月末現在634兆ウォンである積立金は、2041年には1778兆ウォンでピークを迎えるものの、それ以降は高齢化と年金給付に対する支出の増加により減少し続け、2057年には底をつくことになる。
     
  • 国民年金の財政計算のために、民間の専門家で構成された委員会は、第4次財政推計の結果に基づいて、2088年まで年金給付ができるように、毎年1年分の積立金を維持することを目標にし、「老後所得保障強化対策」と「国民年金の財政安定化対策」という二つの対策案を提示した。
     
  • 「老後所得保障強化対策案」は、保険料率を引き上げて、2018年現在45%である所得代替率を維持することである。委員会は、このためには現在9%である保険料率を来年から11%に引き上げる必要があると提案している。
     
  • そして、「国民年金の財政安定化対策案」では、所得代替率を既存の計画通り、2028年までに40%までに引き下げると共に、保険料率を段階的に引き上げて、2028年には13.5%にすることを提案している。2029年以降は保険料率を引き上げずに年金の支給開始年齢を段階的に引き上げて(2047年には67歳まで)支出を調整することを考えている。
     
  • 年金の持続可能性を高めるために、保険料率や支給開始年齢を引き上げることも一つの方法ではあるものの、所得の空白期間をなくす等現在の生活が維持できるように雇用を保障する対策と、保険料支払いの負担を軽減させる安定的な仕事の普及に向けた雇用政策が同時に行われる必要がある。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
労働経済学、社会保障論、日・韓における社会政策や経済の比較分析

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~  日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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