2018年05月14日

初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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3――初婚・再婚組み合わせ別の動向~未婚の男女格差が生じる理由~

1|初婚同士のカップルが4組に3組、再婚者含みは4組に1組へ
 
1970年代、日本の人口マジョリティの一角である団塊世代が20代であった時代は、未婚者は珍しかった。また離婚も珍しく、再婚者(双方、もしくはどちらか)を含む結婚も増加傾向にはあったものの1割前後と少なかった(図表4)。
【図表4】 役所に届けられた婚姻届に再婚者が含まれる割合(男女別)(%) 
再婚者を含む結婚の割合は戦後1960年頃を底に増加を続け、2016年に提出された婚姻届の19.5%には再婚夫、16.8%には再婚妻が含まれている。
つまり、5組に1組の夫が再婚夫、6組に1組の妻が再婚妻ということになる。
ここで、再婚夫・再婚妻を含む結婚には次の3つのタイプがある。
 
Aタイプ:夫が再婚・妻が初婚
Bタイプ:妻が再婚・夫が初婚
Cタイプ:夫妻ともに再婚
 
この3タイプに「Dタイプ:夫妻ともに初婚のカップル」を加えた4タイプの合計がカップルの総数となる。全体に占める4タイプの割合をみてみたい(図表5)。
【図表5】 初婚・再婚の夫婦の組み合わせ別、婚姻届総数に占める割合(2015年)
Aタイプ(グラフ赤部分)からCタイプ(グラフ紫部分)のすべてのタイプの再婚者を含む結婚は、全体の25%を占めており、今では4組に1組が再婚者を含むカップルとなっている。
2|婚歴ナシの男女格差の発生経緯
 
このうちともに初婚もしくは再婚である結婚を除いた「どちらか一方が再婚」のカップルの状況によって婚歴なし割合の男女格差が生じてくることになる。
 
計算上は「Aタイプ:夫が再婚・妻が初婚」と「Bタイプ:妻が再婚・夫が初婚」を比べてみて、常にAタイプの数が多ければ、婚歴なし男性数が婚歴なし女性数を上回ることになる。
 
再婚男性が初婚女性と複数回結婚することによって、婚歴なし男性の数を変えないまま、婚歴なし女性をより減少させることができる。これが男女逆転のケースより多い年が続けば、婚歴なし男性が婚歴なし女性を大きく上回ることになる。
 
そこで1975年から2015年の40年間における再婚のタイプ別の組数推移をみてみることにしたい(図表6)。
図表からは再婚夫が初婚妻と結婚することによって、男性の婚歴なし人数を変えることなく女性の未婚者を減らすタイプAの結婚が常にその男女逆であるタイプBよりも上回ってきたことがわかる。
 
2015年の国勢調査で男性の50歳婚歴なし割合が女性のそれを過去にもまして大きく上回った理由が明確に示されているといえるだろう。
【図表6】 再婚のタイプ別 年次推移 (組) 

4――初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上) のおわりに

4――初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上) のおわりに

本稿では、初婚・再婚の組み合わせがこれまでどのように推移し、現在どのような状況になっているかを詳らかにした。
この考察によって、国勢調査において50歳時点における婚歴なし割合が男女間において大きく異なる要因が「再婚」にあることを説明した。
 
次の続編レポート(下)では、タイトルともなっている初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」について考察する。初婚・再婚別にみた「年の差婚」を考察することによって日本におけるカップルの組み合わせから見えてくる「特徴」も明らかにしたい。
 
わが国の出生率に大きな影響を及ぼす未婚化。
未婚化の要因を探るべく未婚者への調査が活発ではあるものの、「過去に結婚を経験した男女の再チャレンジ動向」を知ることで、より深い背景がみえてくることもあるのではないだろうか。
【参考文献一覧】
 
国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」 
 
厚生労働省.「人口動態調査」 
 
国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」2017年版 
 
総務省総計局. 「2015年 国勢調査速報値」 
 
総務省総計局. 「人口推計(平成29年(2017年)10月確定値) 
 
厚生労働省.「平成27年度 人口動態職業・産業別統計」
 
 
天野 馨南子.“2つの出生力推移データが示す日本の「次世代育成力」課題の誤解-少子化社会データ再考:スルーされ続けた次世代育成の3ステップ構造-” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2016年12月26日号
 
天野 馨南子.“未婚の原因は「お金が足りないから」という幻想-少子化社会データ検証:「未婚化・少子化の背景」は「お金」が一番なのか-” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2016年9月5日号
 
 天野 馨南子. “消え行く日本の子ども-人口減少(少子化)データを読む-わずか半世紀たたず、半減へ”ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2018年4月9日号
 
天野 馨南子. “ 「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方”ニッセイ基礎研究所 基礎研REPORT(冊子版) 2017年4月号
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2018年05月14日「基礎研レポート」)

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