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- ひとり暮らしの若者の家電事情-雇用環境改善でひとり暮らしが増加、パソコンやスマホがあるからテレビはいらない?
2018年04月16日
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1――はじめに
新生活が始まる春。社会人となり、ひとり暮らしをスタートした若者もいるだろう。今の若者は、消費社会が成熟化し、景気低迷が進む中で生まれ育ってきた。安価で品質の良い商品やサービスに囲まれ、インターネットやスマートフォンなどの技術革新の恩恵を受ける一方、労働環境や社会保障制度における世代間格差などに直面し、経済不安が強い世代だ。そんな今の若者は、どのようなひとり暮らし生活を送っているのだろうか。ひとり暮らしの割合や家電の保有状況などを見ていきたい。
2――若者の親との同居率~アベノミクスによる雇用環境の改善で、ひとり暮らしが増加
若者の親との同居率が下がり、ひとり暮らし2が増えた背景には、アベノミクスによる雇用状況の改善があるようだ。20~34歳の失業率は、親との同居率と同様に、2012年以降、低下している(図表2)。さらに、20~34歳の雇用者に占める非正規雇用者の割合も最近では低下傾向にある(図表3)。5歳階級別に細かく見ると、20~24歳では2014年から、25~29歳と30~34歳では2015年から低下している。また、大学卒予定者の就職内定率も上昇傾向にある(図表4)。つまり、もともと非正規雇用者の割合が高いなど厳しい環境にあった若い年齢層ほど、比較的早い時期から雇用環境の改善が進んでいるようだ。なお、大学卒予定者の就職内定率は、2013年以降、女子学生が男子学生を上回って伸びており、「女性の活躍促進」政策の効果が窺える。
15年毎の男女別・5歳階級別の値を見ても、いずれの層も20~34歳全体とおおむね同様だが、より若い年齢層で近年の親との同居率の低下幅が大きい。
2 仮に親との同居以外をひとり暮らしとしているが、厳密には兄弟姉妹や親戚、友人との同居なども含まれる。
3――ひとり暮らしの若者の家電事情~パソコンやスマホがあるからテレビはいらない?
さて、春は家電量販店で、ひとり暮らしの新生活に必要な家電製品のセット販売が実施されることも多いが、今のひとり暮らしの若者の家電保有状況はどうなっているのだろうか。
1|家事用耐久財の保有状況~近年、男女とも冷蔵庫が若干低下、女性では掃除機や電子レンジも低下
総務省「全国消費実態調査」にて、30歳未満の単身勤労者世帯の家事用耐久財の保有率を見ると、1999年から2014年にかけて、男性では炊飯器や電子レンジ、洗濯機が約5割から約9割へ大幅に上昇し、もともと保有率が高い冷蔵庫や掃除機も1割程度上昇している(図表5a)。なお、冷蔵庫の保有率は、2009年から2014年にかけて若干低下している(▲2.4%pt)。
同様に女性について見ると、もともと男性と比べて家事用耐久財全般の保有率が高いためか、全体的に上昇幅が小さく、むしろ低下しているものもある(図表5b)。1999年から2014年にかけて、炊飯器は約2割、洗濯機や電子レンジは約1割、冷蔵庫も若干上昇しているが、掃除機は1割弱低下している。また、2009年から2014年にかけて、男性同様に冷蔵庫が若干低下(▲1.6%pt)するとともに、電子レンジも若干低下している(▲3.6%pt)。
保有率の男女差を見ると、1999年や2004年では全体的に女性の方が高いが、2009年から炊飯器で、2014年では掃除機で男性が女性を上回るようになっている(図表5c)。
つまり、男女とも主な家電保有率が8割程度に上がっているが、近年、男女とも冷蔵庫の保有率が、女性では掃除機や電子レンジの保有率も若干低下している。また、炊飯器や掃除機など、男女の保有率が逆転するものもあらわれている。
これらの背景には、例えば冷蔵庫については、最近のひとり暮らし用のマンションでは備え付けの小型冷蔵庫の設置が増えていることがあげられる。掃除機については、特に女性ではフローリングの部屋に住むことが増え、使い捨ての掃除シートを使えば必ずしも掃除機が必要ではないのだろう。男性の保有率が女性を上回る炊飯器については、若年単身勤労者世帯の男性では自炊が増えており、男性の方が女性より米などの穀類の支出額が多いこと3が影響しているのかもしれない。現在、女性では自炊が減り、ひとり暮らしの男女の食生活は似通ったものになっている。このことが女性の電子レンジ保有率の若干の低下につながっている可能性もある(現在、電子レンジ保有率は約9割で男女同程度)。
1|家事用耐久財の保有状況~近年、男女とも冷蔵庫が若干低下、女性では掃除機や電子レンジも低下
総務省「全国消費実態調査」にて、30歳未満の単身勤労者世帯の家事用耐久財の保有率を見ると、1999年から2014年にかけて、男性では炊飯器や電子レンジ、洗濯機が約5割から約9割へ大幅に上昇し、もともと保有率が高い冷蔵庫や掃除機も1割程度上昇している(図表5a)。なお、冷蔵庫の保有率は、2009年から2014年にかけて若干低下している(▲2.4%pt)。
同様に女性について見ると、もともと男性と比べて家事用耐久財全般の保有率が高いためか、全体的に上昇幅が小さく、むしろ低下しているものもある(図表5b)。1999年から2014年にかけて、炊飯器は約2割、洗濯機や電子レンジは約1割、冷蔵庫も若干上昇しているが、掃除機は1割弱低下している。また、2009年から2014年にかけて、男性同様に冷蔵庫が若干低下(▲1.6%pt)するとともに、電子レンジも若干低下している(▲3.6%pt)。
保有率の男女差を見ると、1999年や2004年では全体的に女性の方が高いが、2009年から炊飯器で、2014年では掃除機で男性が女性を上回るようになっている(図表5c)。
つまり、男女とも主な家電保有率が8割程度に上がっているが、近年、男女とも冷蔵庫の保有率が、女性では掃除機や電子レンジの保有率も若干低下している。また、炊飯器や掃除機など、男女の保有率が逆転するものもあらわれている。
これらの背景には、例えば冷蔵庫については、最近のひとり暮らし用のマンションでは備え付けの小型冷蔵庫の設置が増えていることがあげられる。掃除機については、特に女性ではフローリングの部屋に住むことが増え、使い捨ての掃除シートを使えば必ずしも掃除機が必要ではないのだろう。男性の保有率が女性を上回る炊飯器については、若年単身勤労者世帯の男性では自炊が増えており、男性の方が女性より米などの穀類の支出額が多いこと3が影響しているのかもしれない。現在、女性では自炊が減り、ひとり暮らしの男女の食生活は似通ったものになっている。このことが女性の電子レンジ保有率の若干の低下につながっている可能性もある(現在、電子レンジ保有率は約9割で男女同程度)。
3 久我尚子「若年層の消費実態(3)-『アルコール離れ』・『外食離れ』は本当か?」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2016/6/20)
(2018年04月16日「基礎研レター」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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