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- 中国経済:景気指標の総点検(2018年春季号)~景気は一旦再加速!
【電力消費量】
電力消費の動きにも注意が必要である。15年にゼロ成長に落ち込んだ電力消費は、16年後半から伸びを高め17年は振れが大きかったものの概ね6.5%前後で推移していたが、18年に入り1-2月期は前年同期比13.3%増(工業部門は同11.2%増)と伸びが加速している(図表-11)。
【貨物輸送量】
貨物輸送の動きにも注意したい。景気が良くなると物流も増えるからだ。16年後半に底打ちし17年前半には伸びを高めた貨物輸送量は、17年後半には鉄道・道路ともに伸び悩み気味だった。しかし、18年1-2月期は鉄道・道路ともに伸びを高めており、底打ちの兆しが見える(図表-12)。
【工業生産者出荷価格】
工業品の値動きにも注意したい。景気が良いと工業製品の値段も上昇するからだ。18年2月の工業生産者出荷価格は前年同月比3.7%上昇とピークアウト感が強まった。原材料の急騰が収まりつつあることが背景にある(図表-13)。今のところデフレ懸念もインフレ懸念も小さいと思われる。
【通貨供給量(M2)】
金融面からの点検も重要である。17年の通貨供給量(M2)は伸びの鈍化が続いていたが、18年2月は前年同月比8.8%増と鈍化に歯止めが掛かった。一方、銀行貸出残高は前年同月比13%増前後の高い伸びを維持しており、景気への悪影響は限定的に留まっている(図表-14)。但し、その反面、銀行の預貸率は徐々に上昇しており、金融リスクが高まりつつある点には注意が必要だ。
3.総合指標の点検
但し、その後の実質成長率は減速傾向を辿ると予想している2。18年3月に開催された第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、18年の成長率目標を「6.5%前後」と17年実績(6.9%)を下回るレベルに設定、積極的な財政政策という基本方針は維持したものの財政赤字の対GDP比は2.6%と17年の3%から引き下げた。また、昨年10月の共産党大会で「小康社会(少しゆとりのある社会)」を全面的に完成させるとした2020年を視野に入れて、今回の全人代では「三大堅塁攻略戦」を断固戦い抜くと宣言、金融面に焦点を当てた「重大リスクの防止・予防」、「的確な貧困対策」、「汚染対策」の3つの“堅塁(守りが堅くて容易に攻め落とせない陣地)”の攻略に乗り出した。習政権一期目の“堅塁”が腐敗汚職だったとすれば、習政権二期目の“堅塁”はこの3つとなるだろう。従って、「三大堅塁攻略戦」に挑む中国政府は「量から質」へと経済運営の重点を移して、「6.5%前後」の安定成長への軟着陸(ソフトランディング)を図ることになると考えている。
2 今後の中国経済の見通しに関しては、「中国経済見通し~マクロプルーデンス政策の強化で「安定成長」へ軟着陸、リスクの所在は住宅バブル崩壊」Weeklyエコノミスト・レター2018-02-21を参照ください。
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三尾 幸吉郎
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(2018年03月30日「Weekly エコノミスト・レター」)
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