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那覇=粟国(あぐに)路線の運休問題-資金不足なら、ふるさと納税を使ってはどうですか

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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那覇=粟国路線の運休と継続が望まれる事情
1 2018/1/23沖縄タイムス朝刊「ニュース近景遠景」
運休の理由は資金不足か、安全性の問題か
そこで、頼まれてもいないのに、資金不足解消方法について浅知恵を出そうと思う。安定運航のためには、安全性の確保や信頼回復に関する知恵も必要だか、これらについては他の方にお任せする。
2 2018/1/17沖縄タイムス朝刊
路線維持の鍵は観光客
路線維持に観光促進が欠かせないのは、那覇=粟国路線に限った話ではない。2003年、羽田=能登路線を対象にANAと石川県との間で日本初の搭乗率保証制度が導入された。搭乗率保証制度とは、航空会社と地方自治体とで事前に約束した搭乗率を下回った場合、自治体が航空会社の損失を補填する制度である。羽田=能登の例では、基準となる搭乗率を70%に設定し、搭乗率が70%を上回った場合は、ANAが石川県に販売促進協力金を支払うといった内容であった。観光客誘致への努力が功を奏し、石川県は、搭乗率保証制度導入初年度に1億円近い販売促進協力金を受け取っている。また、ANAと石川県の事例を対象に、地域航空路線の持続可能性について分析した研究3も、短期的リスクを排除する搭乗率保証制度と共に、長期的な需要創造の必要性を指摘する。
3 湊宣明、Morimoto, R (2011)「搭乗率保証制度を用いた地域航空路線の持続可能性を高めるための政策設計」システムダイナミクス学会誌No.10
観光客誘致と財政負担軽減を実現する方法
そういった事情があるなら、ふるさと納税を活用して、地域の外から資金を調達すればいい。使途を明確にし、かつ路線維持の必要性をわかりやすく説明することで、返礼品に頼らない寄附を目指してもよい。さらに、航空機や船舶の往復券を返礼品にすれば、観光客誘致の効果も期待できる。返礼率が3割なら、航空機の往復券に相当する寄附額は49,000円、船舶なら22,000円である。年間観光客1万人の目標が達成できるなら、期待できる年間寄附額を推計すると1,505万円、返礼品に充てる費用を除くと1,050万円程度となる(図表3)。第一航空が示した赤字見込み額、約2億6千万には程遠いが無いよりはいい。また、搭乗率の上昇により赤字の圧縮も期待できるし、ふるさと納税利用率(ふるさと納税を利用する観光客数の割合)によっては、より多い寄附額も期待できる。
航空会社による運航コスト圧縮への取り組みと共に、行政によるふるさと納税制度活用の検討を期待する。往復券が返礼品になるなら、微力ながら私もふるさと納税で貢献したいと思う。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年03月13日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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