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- 欧州経済見通し-裾野広がるユーロ圏の景気拡大/英国EU離脱まで1年-
2018年03月09日
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1.裾野広がるユーロ圏の景気拡大
( 年率2%を超える成長持続。すべてのユーロ参加国で景気は拡大 )
ユーロ圏では、良好な外部環境と政策の下支えにより、景気拡大のペースが年率2%超に上がっている。
7日公表の17年10~12月期の実質GDP(確定値)は、速報値と同じ前期比0.6%、前期比年率2.3%で、年率2%を超える成長が5四半期にわたり続いたことが確認された。
17年年間の成長率は2.3%と世界金融危機以降で最も高い伸びとなった。一部の国の年間の実績ははまだ出ていないが、世界金融危機以降で初めて、すべてのユーロ参加国がプラス成長で足並みが揃ったと思われる(図表1)。
18年入り後も、年率2%を超えるペースを保っている模様だ。実質GDPと連動性が高い総合PMIは、2月(速報値)が57.1と1月(確報値)の58.8からは低下したが、引き続き生産の拡大と縮小の分かれ目となる50を大きく超える水準にある。
ユーロ圏では、良好な外部環境と政策の下支えにより、景気拡大のペースが年率2%超に上がっている。
7日公表の17年10~12月期の実質GDP(確定値)は、速報値と同じ前期比0.6%、前期比年率2.3%で、年率2%を超える成長が5四半期にわたり続いたことが確認された。
17年年間の成長率は2.3%と世界金融危機以降で最も高い伸びとなった。一部の国の年間の実績ははまだ出ていないが、世界金融危機以降で初めて、すべてのユーロ参加国がプラス成長で足並みが揃ったと思われる(図表1)。
18年入り後も、年率2%を超えるペースを保っている模様だ。実質GDPと連動性が高い総合PMIは、2月(速報値)が57.1と1月(確報値)の58.8からは低下したが、引き続き生産の拡大と縮小の分かれ目となる50を大きく超える水準にある。
( 需要面でも景気拡大の裾野広がる )
需要面でも景気拡大の裾野が広がっている。
10~12月期に限れば個人消費が鈍化し、企業部門主導の傾向が強まった。実質GDPに対する寄与度は純輸出の前期比0.4%が最大で、固定資本投資が同0.2%でそれに続き、個人消費は同0.1%に縮小した(図表2)。
しかし、個人消費の鈍化は趨勢的なものではないだろう。15~16年はゼロ近辺で推移していた物価が17年には1%台まで上昇し、実質所得の伸びが鈍化したことの影響が考えられる(図表3)。雇用・所得環境自体は改善傾向にあり、消費者マインドは高水準で耐久消費財等の消費意欲も旺盛だ(図表4)。企業も幅広い業種で採用に意欲的であり(図表5)、個人消費は雇用・所得環境の改善に支えられて堅調に推移するだろう。
需要面でも景気拡大の裾野が広がっている。
10~12月期に限れば個人消費が鈍化し、企業部門主導の傾向が強まった。実質GDPに対する寄与度は純輸出の前期比0.4%が最大で、固定資本投資が同0.2%でそれに続き、個人消費は同0.1%に縮小した(図表2)。
しかし、個人消費の鈍化は趨勢的なものではないだろう。15~16年はゼロ近辺で推移していた物価が17年には1%台まで上昇し、実質所得の伸びが鈍化したことの影響が考えられる(図表3)。雇用・所得環境自体は改善傾向にあり、消費者マインドは高水準で耐久消費財等の消費意欲も旺盛だ(図表4)。企業も幅広い業種で採用に意欲的であり(図表5)、個人消費は雇用・所得環境の改善に支えられて堅調に推移するだろう。
固定資本投資は、全体のおよそ3割を占める機械設備投資と4分の1を占める住宅投資が牽引している。知的財産生産物投資は触れ幅が大きいが、趨勢的に拡大傾向にある。他方、その他建設投資は、回復の勢いが鈍い。財政健全化のための公共投資削減の後、水準の回復が進んでいないことによるものだろう。稼働率は、製造業、サービス業ともに長期平均を上回る水準にあり(図表7)、域内外の需要拡大と緩和的な金融環境の下で、引き続き機械設備投資の拡大が期待できる。
外需は輸出、輸入ともに伸びが加速している(図表9)。17年はユーロ高が進んだが、IT関連財などへの世界的需要拡大の効果が勝り、輸出数量への影響は抑えられた。なお、直近(17年12月)の地域別輸出金額のデータでは米国向けが高い伸びとなっており、新興国向けも米国向けほどではないが加速した(図表10)。年明け後のサーベイ・データなどがやや弱い動きになっているのは、昨年末の例外的に強い外需の反動が現れた部分もありそうだ。
外需は輸出、輸入ともに伸びが加速している(図表9)。17年はユーロ高が進んだが、IT関連財などへの世界的需要拡大の効果が勝り、輸出数量への影響は抑えられた。なお、直近(17年12月)の地域別輸出金額のデータでは米国向けが高い伸びとなっており、新興国向けも米国向けほどではないが加速した(図表10)。年明け後のサーベイ・データなどがやや弱い動きになっているのは、昨年末の例外的に強い外需の反動が現れた部分もありそうだ。
( 雇用改善も労働市場の緩みは残る )
雇用も着実に改善しているが、労働市場にはまだ緩み(スラック)が残っている。
1月の失業率はユーロ圏全体で8.6%と12月と同水準だった。EUの欧州委員会が推計する賃金上昇を加速させない失業率(NAWRU、Non-accelerating wage rate of unemployment、2017年8.6%)には既に達しているが、世界金融危機前の最低水準(7.3%)をまだ上回っている。統計上の失業者の1400万人余りだが、フルタイムの職に就けないためにパートタイムで働いている労働者や、就業を希望しているものの求職活動を断念している潜在労働力などの広義の失業者も1400万人程度いる(図表11)。
国別に見ても、雇用情勢の改善という方向は一致しているが、イタリアの11.1%、フランスの9.0%に対して、ドイツの3.6%と水準にばらつきがあり、労働市場の緩みの度合いは国地域によっても異なる(図表12)。
雇用も着実に改善しているが、労働市場にはまだ緩み(スラック)が残っている。
1月の失業率はユーロ圏全体で8.6%と12月と同水準だった。EUの欧州委員会が推計する賃金上昇を加速させない失業率(NAWRU、Non-accelerating wage rate of unemployment、2017年8.6%)には既に達しているが、世界金融危機前の最低水準(7.3%)をまだ上回っている。統計上の失業者の1400万人余りだが、フルタイムの職に就けないためにパートタイムで働いている労働者や、就業を希望しているものの求職活動を断念している潜在労働力などの広義の失業者も1400万人程度いる(図表11)。
国別に見ても、雇用情勢の改善という方向は一致しているが、イタリアの11.1%、フランスの9.0%に対して、ドイツの3.6%と水準にばらつきがあり、労働市場の緩みの度合いは国地域によっても異なる(図表12)。
(2018年03月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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