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2018年03月05日
インドの生命保険業界及び主要会社の状況-2016年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-
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1―はじめに
インドの生命保険市場全体の状況については、これまでもいくつかのレポート1で報告してきた。
インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)は、毎年12月から翌年の1月にかけて、Annual Reportを作成して、前年度の決算に基づく業界全体の数値等を報告している。今回、2018年1月に「Annual Report 2016-17」2を発行して、2016年度(2016年4月~2017年3月)の保険業界全体の数値を公表している。このレポートでは、この報告書及び主要生命保険会社の2016年度決算数値を踏まえて、インドの生命保険業界全体の状況及び主要各社の成長性・効率性・収益性・健全性等の状況について報告する。
1 基礎研レター「インドの生命保険市場(1)~(6)」(2015.11 30~2016.1.18)
基礎研レポート「インドの生命保険会社の状況-2015年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-」(2016.10.31)
2 https://www.irdai.gov.in/ADMINCMS/cms/frmGeneral_NoYearList.aspx?DF=AR&mid=11.1
インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)は、毎年12月から翌年の1月にかけて、Annual Reportを作成して、前年度の決算に基づく業界全体の数値等を報告している。今回、2018年1月に「Annual Report 2016-17」2を発行して、2016年度(2016年4月~2017年3月)の保険業界全体の数値を公表している。このレポートでは、この報告書及び主要生命保険会社の2016年度決算数値を踏まえて、インドの生命保険業界全体の状況及び主要各社の成長性・効率性・収益性・健全性等の状況について報告する。
1 基礎研レター「インドの生命保険市場(1)~(6)」(2015.11 30~2016.1.18)
基礎研レポート「インドの生命保険会社の状況-2015年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-」(2016.10.31)
2 https://www.irdai.gov.in/ADMINCMS/cms/frmGeneral_NoYearList.aspx?DF=AR&mid=11.1
2―生命保険業界全体の状況
1|収入保険料
(1)全体収入保険料の推移
2016年度の生命保険会社の収入保険料は、対前年14.0%増加して、4兆1,847億ルピー(1ルピー=1.7円とすると、約7.1兆円)となった。
収入保険料の過去からの推移を、国営で最大の生命保険会社であるLIC(Life Insurance Corporation of India)とLIC以外の民間との内訳別に見てみると、次ページ左の図表の通りとなっている。2000年8月に市場が民間保険会社に開放されて以降、2010年まで保険料は急速に増加してきていたが、2010年9月のユニット・リンク保険商品(ULIPs)に対する規制の見直し等を受けて、その後2年程は保険料の伸びが鈍化していた。ただし、2013年度以降は、再び保険料を増加させ、成長軌道に乗せている。具体的には、収入保険料の年平均増加率は、2000年から2010年の10年間においては23.7%であったのに対して、その後2年間で▲0.8%となり、2013年からの2年間では6.9%、2015年と2016年は2桁成長となっている。
またLICとLIC以外の収入保険料シェアの推移を見た場合、以下の右の図表の通りとなっており、LICのシェアは、2010年までは徐々に低下してきていたが、民間保険会社においてウェイトが高いユニット・リンク保険が監督規制の影響等で販売が低迷したことから、その後数年は若干上昇していた。ただし、2014年度以降、経済環境の改善を受けた好調な株式市場や各社の新商品の投入等により、ユニット・リンク保険の販売が回復したこともあり、再び民間保険会社のシェアが上昇し、LICのシェアは低下してきている3。
(1)全体収入保険料の推移
2016年度の生命保険会社の収入保険料は、対前年14.0%増加して、4兆1,847億ルピー(1ルピー=1.7円とすると、約7.1兆円)となった。
収入保険料の過去からの推移を、国営で最大の生命保険会社であるLIC(Life Insurance Corporation of India)とLIC以外の民間との内訳別に見てみると、次ページ左の図表の通りとなっている。2000年8月に市場が民間保険会社に開放されて以降、2010年まで保険料は急速に増加してきていたが、2010年9月のユニット・リンク保険商品(ULIPs)に対する規制の見直し等を受けて、その後2年程は保険料の伸びが鈍化していた。ただし、2013年度以降は、再び保険料を増加させ、成長軌道に乗せている。具体的には、収入保険料の年平均増加率は、2000年から2010年の10年間においては23.7%であったのに対して、その後2年間で▲0.8%となり、2013年からの2年間では6.9%、2015年と2016年は2桁成長となっている。
またLICとLIC以外の収入保険料シェアの推移を見た場合、以下の右の図表の通りとなっており、LICのシェアは、2010年までは徐々に低下してきていたが、民間保険会社においてウェイトが高いユニット・リンク保険が監督規制の影響等で販売が低迷したことから、その後数年は若干上昇していた。ただし、2014年度以降、経済環境の改善を受けた好調な株式市場や各社の新商品の投入等により、ユニット・リンク保険の販売が回復したこともあり、再び民間保険会社のシェアが上昇し、LICのシェアは低下してきている3。
3 LICは、商品ガイドラインの改訂後、2015年8月になって初めて、改訂後のユニット・リンク保険を発売している。
(2) 収入保険料の各社別・払方別・商品別内訳
2016年度の収入保険料の各社別・払方別・商品別の内訳は、次ページの図表の通りである。
会社別では、LICが71.8%のシェアを有し、残りの28.2%のシェアを23の民間保険会社が分け合っている。
LICでは、一時払保険料の構成比が高くなっており、会社全体の収入保険料の1/4程度を占めている。LICは、ユニット・リンク保険等のリンク保険4を殆ど販売しておらず、収入保険料の構成比は0.3%でしかない。
一方で、民間保険会社は、リンク保険の構成比が高く、民間全体では43.9%の構成比となっている。
なお、保険料シェアで5%前後を有するICICI Prudential、SBI Life及びHDFC Standardの3社の間でも、保険料の構成要素はかなり異なっており、ICICI Prudentialは全体保険料の3/4がリンク保険からであるのに対して、SBI Life及びHDFC Standardではリンク保険とノンリンク保険はほぼ同じ割合となっている。さらに、一時払保険料の割合は、ICICI Prudentialが7%程度であるのに対して、SBI Lifeでは19%、HDFC Standardでは26%となっている。
2016年度の収入保険料の各社別・払方別・商品別の内訳は、次ページの図表の通りである。
会社別では、LICが71.8%のシェアを有し、残りの28.2%のシェアを23の民間保険会社が分け合っている。
LICでは、一時払保険料の構成比が高くなっており、会社全体の収入保険料の1/4程度を占めている。LICは、ユニット・リンク保険等のリンク保険4を殆ど販売しておらず、収入保険料の構成比は0.3%でしかない。
一方で、民間保険会社は、リンク保険の構成比が高く、民間全体では43.9%の構成比となっている。
なお、保険料シェアで5%前後を有するICICI Prudential、SBI Life及びHDFC Standardの3社の間でも、保険料の構成要素はかなり異なっており、ICICI Prudentialは全体保険料の3/4がリンク保険からであるのに対して、SBI Life及びHDFC Standardではリンク保険とノンリンク保険はほぼ同じ割合となっている。さらに、一時払保険料の割合は、ICICI Prudentialが7%程度であるのに対して、SBI Lifeでは19%、HDFC Standardでは26%となっている。
4 リンク保険商品は、ユニット・リンク商品または変額リンク商品として、提供されている。
(2018年03月05日「基礎研レポート」)
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