2018年02月15日

2018・2019年度経済見通し(18年2月)

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.2017年10-12月期は年率0.5%と8四半期連続のプラス成長

2017年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.1%(前期比年率0.5%)と8四半期連続のプラス成長となった。

民間消費(前期比0.5%)が2四半期ぶり、設備投資(前期比0.7%)が5四半期連続で増加したが、7-9月期に成長率を大きく押し上げた外需(前期比・寄与度▲0.0%)、民間在庫変動(前期比・寄与度▲0.1%)がいずれもマイナスとなったため、成長率は7-9月期の前期比年率2.2%から大きく低下した。

10-12月期の成長率が7-9月期から大きく低下した理由は、輸入が7-9月期の前期比▲1.2%の減少から同2.9%の増加に転じたこと、民間在庫変動が前期比・寄与度0.4%から同▲0.1%のマイナスに転じたことである。輸入、民間在庫変動によって7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率2%以上押し上げられたが、10-12月期は逆に同▲2%以上押し下げられ、10-12月期の減速のほとんどがこれによって説明できる。輸入の増加、民間在庫変動のマイナス寄与は最終需要の弱さを示すものではなく、7-9月期から10-12月期にかけて景気が実勢として弱まったわけではない。

また、表面的には7-9月期が外需主導、10-12月期が内需主導の成長となったが、7-9月期、10-12月期を通して好調なのは輸出、設備投資の企業部門だ。一方、10-12月期の民間消費は増加に転じたが、7-9月期と均してみれば横ばい圏の動きにとどまり、住宅投資は2四半期連続で減少した。家計部門は低調な推移が続いていると判断される。
企業部門主導の成長が続く アベノミクス開始以降の実質GDP成長率に対する累積寄与度を企業部門(設備投資+純輸出)、家計部門(民間消費+住宅投資)、政府部門(政府支出+公的固定資本形成)に分けてみると、実質GDP成長率7.1%のうち、企業部門の寄与度が4.3%で、全体の60%を占めている。一方、GDPの約6割を占める家計部門の寄与度は1.6%で、全体の23%にすぎない。日本経済は企業部門主導の経済成長が続いている。
(好調が続く輸出)
輸出は2016年半ば頃から増加傾向が明確となり、経済成長の牽引役となっている。

世界の貿易量は2011年以降、世界経済の成長率を下回る伸びが続いていた(いわゆるスロー・トレード)が、2016年終盤以降伸びが大きく高まり、2017年入り後は世界経済の成長率を上回っている。最近の世界経済の回復はIT関連を中心とした製造業サイクルの改善によるところが大きく、このことがグローバルな貿易取引の活発化につながっている。

世界貿易量を地域別にみると、2015年から2016年にかけて弱めの動きとなっていたアジア新興国が2017年に入ってから大幅に増加している。日本はアジア向けの輸出ウェイトが5割以上を占めるため、アジアの貿易取引増加の恩恵を受けやすい。実際、日本の輸出は情報関連、資本財を中心にアジア向けが大幅に増加しており、2016年半ば以降は日本の輸出が世界の輸出を上回るペースで拡大している。
地域別の世界貿易量/日本の輸出は世界を上回るペースで拡大
(在庫調整圧力が徐々に高まる)
輸出の増加基調が明確になるにしたがって、国内の生産活動も好調に推移している。鉱工業生産指数は2016年4-6月期から7四半期連続で上昇し、2017年10-12月期は前期比1.8%の高い伸びとなった。
在庫循環図(鉱工業全体) ただし、生産の増加が続く一方で、在庫調整圧力が徐々に高まりつつある点には注意が必要だ。在庫循環図を確認すると、2017年4-6月期に「意図せざる在庫減少局面」から「在庫積み増し局面」に移行した後、3四半期続けて同一局面に位置したが、2017年10-12月期は景気のピークアウトを示唆する45度線に近づく動きとなった。出荷指数が7-9月期の前年比3.7%から同2.9%へと伸びが鈍化したことに加え、在庫指数が前年比2.0%と7四半期ぶりに増加に転じた。
情報関連の増産ペースは鈍化 特に警戒が必要なのは、これまで生産の牽引役となっていた情報関連(電子部品・デバイス+情報通信機械)で生産の勢いが鈍化し、在庫の積み上がりが目立つようになっていることだ。情報関連の生産は2016年7-9月期から2017年1-3月期まで前期比3%台の高い伸びを続けたが、2017年度入り後は伸びが大きく鈍化し、2017年10-12月期には前期比▲0.5%と6四半期ぶりのマイナスとなった。
一方、情報関連の在庫指数は2017年1-3月期以降、4四半期続けて前期比で上昇し、10-12月期には前年比でも+13.6%と9四半期ぶりの上昇となった。出荷指数の伸びが鈍化し、在庫指数が上昇に転じたことにより、2017年10-12月期の情報関連の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は▲11.2%ポイントと6四半期ぶりのマイナスとなった。情報関連の輸出はアジア向けを中心に増加を続けているが、国内向けの出荷が落ち込んでいることが在庫の積み上がりをもたらしている。現時点では、在庫水準自体はそれほど高くないが、国内外の最終需要が下振れた場合には、情報関連を中心に在庫調整圧力が大きく高まるリスクがあることには注意が必要だろう。
情報関連の出荷・在庫バランス/国内向け出荷が落ち込む情報関連
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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