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2018年02月05日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(4)-EIOPAの報告書2017の概要報告-
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このグラフは、EEA(欧州経済地域)レベル及び各国での、4つの主要な資産クラスへの配分割合を示している。国毎に配分に大きな差異が観察される。LTG措置及び株式リスク措置を適用する会社の投資を分析する場合、特にある措置の適用が全ての国において等しく一般的でない場合には、これらの国の特殊性を考慮する必要がある。
(2) MA、VA、TRFR又はTTP措置を用いた会社の投資ポートフォリオ
以下のグラフは、MA、VA、TRFR又はTTPを適用する会社、又はこれらの措置の1つも適用しない会社の2016年末の投資配分を、全てのEEA会社の投資配分と比較して示している。これは、LTG措置を用いた会社の投資配分が、他のEEA会社とは異なることを示している。
平均して、社債及び国債の割合は、VAを適用する会社が最も高く、続いてTTPを適用する会社及びMAを適用する会社となっている。MA、VA、TRFR又はTTPのいずれかの措置も適用しない会社は、平均して、他のグループと比較した場合、社債及び国債の割合が低い。全ての会社が株式投資の割合は低かった。
TRFRに関しては、この措置を適用する会社の数は非常に少なく、そのため、平均投資ポートフォリオは、その措置を適用する会社に代表的なものではない可能性がある。
このグラフとこのセクションの以下のグラフに関して、資産配分と債券ポートフォリオの特性と措置の適用との間の相関を分析する際には、これらの措置が会社の投資に与える因果関係について結論を出すにはこの段階では早すぎる、ということに注意する必要がある。
(2) MA、VA、TRFR又はTTP措置を用いた会社の投資ポートフォリオ
以下のグラフは、MA、VA、TRFR又はTTPを適用する会社、又はこれらの措置の1つも適用しない会社の2016年末の投資配分を、全てのEEA会社の投資配分と比較して示している。これは、LTG措置を用いた会社の投資配分が、他のEEA会社とは異なることを示している。
平均して、社債及び国債の割合は、VAを適用する会社が最も高く、続いてTTPを適用する会社及びMAを適用する会社となっている。MA、VA、TRFR又はTTPのいずれかの措置も適用しない会社は、平均して、他のグループと比較した場合、社債及び国債の割合が低い。全ての会社が株式投資の割合は低かった。
TRFRに関しては、この措置を適用する会社の数は非常に少なく、そのため、平均投資ポートフォリオは、その措置を適用する会社に代表的なものではない可能性がある。
このグラフとこのセクションの以下のグラフに関して、資産配分と債券ポートフォリオの特性と措置の適用との間の相関を分析する際には、これらの措置が会社の投資に与える因果関係について結論を出すにはこの段階では早すぎる、ということに注意する必要がある。
(3) MA、VA、TRFR又はTTP措置を用いた会社の債券ポートフォリオ
次ページの図表は、MA、VA、TRFR又はTTPを2016年末に適用した会社の債券ポートフォリオの信用度を示している。信用度は、0から6まで変化する信用度ステップ(CQS)で測定される。 0は最も高い信用度を示し、6は最も低い信用度を示す。「投資適格」とみなされる社債は、通常、0と3の間のCQSを有する。
平均して、MA、VA、TRFR又はTTPの措置を適用する会社は、これらの措置を適用しない会社よりも低い信用度の債券を保有している。
社債の信用力に関しては、VAを適用している会社とTRFR又はTTPの移行措置のいずれかの措置を適用している会社の間に大きな違いはない。しかし、移行措置を適用している会社は、VAを適用している会社と比較して、最高信用度の債券の割合がやや高い。これらの2つのクラスの会社と比較して、MAを適用した会社は平均でCQS 2と3の債券の割合が高く、CQS 0と1の債券の割合が低い。
国債については、考慮されている全ての異なる会社グループにわたって、CQS 2の債券へのかなり低い割合が示されている。同様に、社債についても、VA又はTRFRとTTPのいずれかを適用している会社と、MAを適用している会社のより低い平均信用度の間には、大きな違いはない。社債の状況と比較して、CQS 3の債券の割合がより高いことからもわかるように、MAの適用会社と他の措置の適用会社との間の異なる信用度がより際立っている。
両方のケースで、信用格付機関の信用評価が保険又は再保険会社に利用できない全ての資産を含む非格付債券のウェイトは、異なる会社グループ間で整合的である。
次ページの図表は、MA、VA、TRFR又はTTPを2016年末に適用した会社の債券ポートフォリオの信用度を示している。信用度は、0から6まで変化する信用度ステップ(CQS)で測定される。 0は最も高い信用度を示し、6は最も低い信用度を示す。「投資適格」とみなされる社債は、通常、0と3の間のCQSを有する。
平均して、MA、VA、TRFR又はTTPの措置を適用する会社は、これらの措置を適用しない会社よりも低い信用度の債券を保有している。
社債の信用力に関しては、VAを適用している会社とTRFR又はTTPの移行措置のいずれかの措置を適用している会社の間に大きな違いはない。しかし、移行措置を適用している会社は、VAを適用している会社と比較して、最高信用度の債券の割合がやや高い。これらの2つのクラスの会社と比較して、MAを適用した会社は平均でCQS 2と3の債券の割合が高く、CQS 0と1の債券の割合が低い。
国債については、考慮されている全ての異なる会社グループにわたって、CQS 2の債券へのかなり低い割合が示されている。同様に、社債についても、VA又はTRFRとTTPのいずれかを適用している会社と、MAを適用している会社のより低い平均信用度の間には、大きな違いはない。社債の状況と比較して、CQS 3の債券の割合がより高いことからもわかるように、MAの適用会社と他の措置の適用会社との間の異なる信用度がより際立っている。
両方のケースで、信用格付機関の信用評価が保険又は再保険会社に利用できない全ての資産を含む非格付債券のウェイトは、異なる会社グループ間で整合的である。
このグラフはまた、個々の会社の債券ポートフォリオの信用度のばらつきが、国債については一般的に社債よりも高いことを示している。さらに、国債については、平均値(mean value)が平均値(average value)よりも高いMAを適用する企業を除いて、平均信用度は信用度の平均値より高い。これは、MA適用会社の場合、約50%の会社が3に近い平均CQSを有しており、3より大きいCQSの債券の比率が非常に低いという事実によるものであり、個々の保険会社の国債ポートフォリオの信用度の分布は非常に歪んでいる。
上記で分析された異なる会社グループ間の平均資産配分又は債券ポートフォリオの特性の違いは、EEAの各国の保険会社による資産投資の高度な多種多様性に起因するものであり、その措置の使用が異なる市場に均等に広がっていないという事実が含まれる。これは、特に2カ国(英国、スペイン)でのみ適用されているMAに関連している。
上記で分析された異なる会社グループ間の平均資産配分又は債券ポートフォリオの特性の違いは、EEAの各国の保険会社による資産投資の高度な多種多様性に起因するものであり、その措置の使用が異なる市場に均等に広がっていないという事実が含まれる。これは、特に2カ国(英国、スペイン)でのみ適用されているMAに関連している。
4|具体的な調査結果((2)会社の投資行動への影響)
NSAsの約半数は、長期投資家としての企業行動に関する国内市場での傾向を観察していないと報告した。これは、EIOPAの2016年報告書の所見と一致している。残りのNSAsからは、国債から社債への再配分が観察され、そのうち3分の1は非流動資産への投資が増加し、残りの3分の1は国債投資の増加を指摘した。また、あるNSAは、リスクの高い資産への投資傾向と間接投資の増加を報告した。
NSAsはまた、株式保有に関して、いかなる傾向も観察したかどうか尋ねられた。大多数のNSAsは、このような傾向を観察していないと報告した。あるNSAは株式保有、特に先進国市場に上場している株式のわずかな増加を報告した。別のNSAは、保険会社が株式保有を変更した場合、市場動向のせいではなく、特有の理由によるものであると述べた。
債券ポートフォリオの存続期間に関して、殆どのNSAsは、彼らが国内市場でどのような傾向も観察していないと報告した。逆に、3つのNSAsは、債券ポートフォリオのデュレーションの増加傾向を報告した。
NSAsによって検討された傾向と変化の主な要因は、低利回り環境(特に国債から社債への再配分)、利回りの追求と資産負債マッチング(特にデュレーションの増加)であった。さらに、いくつかのNSAsは、資産のリスク回避、税金及び法的環境、ソルベンシーIIの導入を要因とした。
2016年の報告書と整合的に、どのNSAも、MA、VA、SA又はDBERの使用と、長期投資家としての会社の投資行動に関する経験的な傾向/変化との間の重要なリンクの事実上の証拠は提供しなかった。
なお、EIOPAは、金融安定性に関する作業の一環として、2017年に保険業界の投資行動に関する調査を実施し、その結果についての報告書を公表している。この内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社の利回り追求に向けた投資行動の傾向に関するEIOPAによる調査報告書」(2018.1.15)で報告した通りである。
NSAsの約半数は、長期投資家としての企業行動に関する国内市場での傾向を観察していないと報告した。これは、EIOPAの2016年報告書の所見と一致している。残りのNSAsからは、国債から社債への再配分が観察され、そのうち3分の1は非流動資産への投資が増加し、残りの3分の1は国債投資の増加を指摘した。また、あるNSAは、リスクの高い資産への投資傾向と間接投資の増加を報告した。
NSAsはまた、株式保有に関して、いかなる傾向も観察したかどうか尋ねられた。大多数のNSAsは、このような傾向を観察していないと報告した。あるNSAは株式保有、特に先進国市場に上場している株式のわずかな増加を報告した。別のNSAは、保険会社が株式保有を変更した場合、市場動向のせいではなく、特有の理由によるものであると述べた。
債券ポートフォリオの存続期間に関して、殆どのNSAsは、彼らが国内市場でどのような傾向も観察していないと報告した。逆に、3つのNSAsは、債券ポートフォリオのデュレーションの増加傾向を報告した。
NSAsによって検討された傾向と変化の主な要因は、低利回り環境(特に国債から社債への再配分)、利回りの追求と資産負債マッチング(特にデュレーションの増加)であった。さらに、いくつかのNSAsは、資産のリスク回避、税金及び法的環境、ソルベンシーIIの導入を要因とした。
2016年の報告書と整合的に、どのNSAも、MA、VA、SA又はDBERの使用と、長期投資家としての会社の投資行動に関する経験的な傾向/変化との間の重要なリンクの事実上の証拠は提供しなかった。
なお、EIOPAは、金融安定性に関する作業の一環として、2017年に保険業界の投資行動に関する調査を実施し、その結果についての報告書を公表している。この内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社の利回り追求に向けた投資行動の傾向に関するEIOPAによる調査報告書」(2018.1.15)で報告した通りである。
(2018年02月05日「保険・年金フォーカス」)
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