2018年01月30日

新たな時代に入った日本株市場-中長期株価予想~日経平均は10年後に4万円を達成か

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾

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1――はじめに

日経平均株価は1月23日に終値で2万4000円を回復した。1991年11月15日(24,099円)以来の26年2ヶ月ぶりとなる。世界的に景気が堅調で日本企業の業績改善が鮮明なことや、米国の株価上昇などが主な背景だ。
 
株価の先高感は強い一方、26年ぶりの水準を回復したことで、値下がりを警戒する声もあるようだ。今年から「つみたてNISA」がスタートし、長期スタンスで資産形成を始めた人もいるだろう。そこで中長期的な株価の見通しをイメージしてみよう。
 

2――新たな時代に入った日本株市場

2――新たな時代に入った日本株市場

図1のとおり米国株(S&P500)は上下動を繰り返しながらも右上がりで推移し、過去30年間で10.9倍に値上がりした。株価は実力水準(緑色の帯状部分、PER14~16倍)に沿って推移しており、米国企業の業績拡大に伴って長期的に株価が上昇したと解釈できる。
 
途中、ITバブルのときは実力から乖離して株価が背伸びしたため、その後の急落に繋がったことが分かる。一方、リーマンショック時は世界的な不況から業績が悪化したため、株価の実力水準自体が下がり、株価も大きく下落した様子がみられる。
 
ところが、日本株は様子が全く異なる。図2は日経平均とその実力水準の推移だ。1989年のバブルのピーク時に日経平均は4万円近くまで値上がりしたが、当時の実力は1万円程度に過ぎなかった。背伸びどころか“つま先立ち”と言ったほうが適切だろうか。当然、つま先立ちの状態は続かず、株価は急落した。
 
90年代に入ると2万円以下に値下がりした。それでもまだ実力よりだいぶ高かったので、90年代後半や2000年代初頭には(図2の囲み部分)、実力がアップ(=業績が改善)したのに株価が下がることを繰り返した。この時代に株や投資信託で資産運用してきた人は、なぜ株価が下がり続ける(または上がらない)のか摩訶不思議に思った経験があるだろう。
 
そのせいか、昨年から今年にかけて日経平均が「2万円を回復」や「26年ぶりの水準」などと聞くと怖くなって売ってしまうケースも少なくないようだ。
【図1】米国株は過去30年で10倍以上に値上がり
【図2】日経平均は、ようやく“身の丈”に合うように
では、今はどうか。図2のとおり株価は実力に見合う水準だ。アベノミクス以降、日経平均は大きく値上がりし、昨年10月には史上初の16連騰(16営業日連続で値上がり)を記録、冒頭に述べたとおり今年1月23日には26年ぶりに2万4000円を回復するなど、明るいニュースが相次いでいる。
 
一部には「上がりすぎ」と指摘する向きもあるが、筆者に言わせれば今の日本株は“身の丈”に合っており、行き過ぎでも何でもない。株価そのものは26年前と同じ2万4000円だが、当時と今では意味合いが全く違うのだ。
 
今後は米国と同じように業績が改善すれば株価は上がり、逆に業績が悪化すれば株価も下がるという、教科書どおりの動きが基本になるだろう。来年には平成が終わり日本は新しい時代に移るが、日本の株式市場は一足先に新たな時代入ったということだ。
 

3――2020年に3万円、10年後には4万円を回復か

3――2020年に3万円、10年後には4万円を回復か

日経平均の中長期見通しとしては、企業業績の改善を踏まえて今後10年間の平均的な値上がり率は5%程度、ざっくり年間1,500~2,000円ペースで値上がりするとみればよいだろう。いっそ「年率7%!」と言いたいところだが、世界的に(特に先進国は)低成長時代に入ったと思われるので、平均7%の値上がりを実現するのは難しいだろう。
 
また、図3のように一本調子で値上がりすることはない。リーマンショック級までいかなくても、いずれ景気後退期が訪れるであろうことを考慮すると、10年平均では5%程度とみるのが妥当ではないか。この場合、10年後の2028年に4万円に達する計算になる。しかも、業績の改善が伴っていることを前提とした計算なので、1989年のバブル当時と違い「実力で4万円」という意味になる。
【図3】日経平均は10年後に4万円を達成か
では3万円回復はいつか。年率5%だと日経平均が3万円を回復するのは2022年という計算になるが、実際は2020年頃に達成すると予想している。というのも、当面は米国や欧州・アジアを中心に好景気が続くと想定したうえで、東京オリンピック・パラリンピックのボーナスも期待できることを考えれば、目先は年率7~10%で値上がりするとみられる。その場合、2020年にも日経平均は“実力で”3万円を回復することになるだろう。
 
ただし、3万円を回復した後は一旦ピークを迎えるかもしれない。日本では19年10月に消費税率10%への引き上げが予定されていることもあり国内外の景気が鈍化、業績の伸びも低下(または業績が悪化)して再び2万円台に下落するシナリオも考えられよう。
 
なお、筆者は2015年8月21日にも株価の中期見通しを述べた。チャイナ・ショックで株価が急落し、市場に悲観ムードが漂ったタイミングだったが、そのレポートでは「2~3年以内に2万4000円も視野に入るだろう」と述べた。主な理由は日本企業の経営効率が改善すると予想したからだ。実際、2年5ヶ月後の今年1月に2万4000円を回復した。もちろん株価上昇の原動力は日本企業の業績改善だ。さて、今回の中長期予想はどのような結果となるか。数年後に自己検証してみたい。
 
参考(2015年8月21日のレポート):株価急落、日本株に久しぶりの割安感
 
 

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(2018年01月30日「基礎研レポート」)

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金融研究部   主席研究員 チーフ株式ストラテジスト

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
     2023年より現職

    【加入団体等】
      ・日本証券アナリスト協会認定アナリスト

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