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公的医療保険の収支状況と保険者による健康増進に向けた取組

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――保険者の収支の状況
日本の公的医療保険制度は、75歳未満の自営業者、年金生活者、非正規労働者等が加入する国民健康保険制度、被用者とその扶養家族が加入する被用者保険制度、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で構成されており、国民はそのいずれかに加入する(国民皆保険)。
被用者が加入する被用者保険制度のうち、健康保険組合(組合健保)は、一般に700人以上の従業員が働いている大企業やグループ会社が自前で設立している1。一方、協会けんぽは、全国健康保険協会が運営する医療保険で、健康保険組合を持たない企業の被用者が加入する。また、国家公務員、地方公務員、私学教職員が加入する共済組合がある。
保険者は、加入者の健康の保持増進を図り、病気の予防や早期回復を図る役割を担うことが求められており、主な役割は、(1)被保険者の資格管理、(2)保険料の設定・徴収、(3)保険給付、(4)審査・支払、(5)保険事業等を通じた加入者の健康管理、(6)医療の質や効率性向上のための医療提供側への働きかけ等である。
制度ごとに、加入者の年齢や職業などの属性が異なるものの、近年の医療費の高騰2を背景に、どの制度においても厳しい財政状況が続いている。
1 単一企業による単一型健康保険組合の他、同業種の複数の企業が共同で設立する総合型健康保険組合や、同一都道府県内に展開する健保組合が合併した場合の地域型健康保険組合がある。
2 村松容子 「医療費支出の概要」 ニッセイ基礎研レター2017年10月13日
(1) 収入
日本の公的医療保険制度では、被保険者が保険料を負担する社会保険方式を採用している。しかし、保険者ごとに被保険者の年齢や年収に偏りがあるため(図表1)、年齢構成が高く、所得水準が相対的に低い国民健康保険や、被用者保険の中では所得水準が低い協会けんぽ、75歳以上の後期高齢者医療制度では財源の一部を公費で負担しており、給付費や事務費に充てている。
図表2は、2014年度の保険者種類別の収支を示している。市町村国保の収入は、保険料が2割程度であるのに対し、公費(国庫負担、都道府県・市町村負担)が4割程度と公費負担分が大きい。国庫で負担しているのは保険給付等に対する定率補助分と市町村ごとの財政力にあわせた調整交付金、および低所得者への保険料補助金である。また、前期高齢者が多いことから、被用者保険からの前期高齢者納付金が充てられている(図表2①)。協会けんぽは、85%が保険料収入である。ただし、中小企業の従業員で構成され所得水準が比較的低いことから国庫による補助が行われている(図表2②)。組合健保は、ほとんどすべてが保険料収入である。原則として国庫による補助はない3(図表2③)。共済組合も同様である。一方、後期高齢者医療制度は、半分が公費(国庫が3割程度、都道府県と市町村が2割程度)、約4割が現役世代からの交付金(後期高齢者支援金)であり、保険料収入は1割に満たない。また、低所得者に対しては減額措置が行われ、その分は公費が充てられている(図表2④)。
3 後期高齢者支援金の負担が重い保険者に対しては、後期高齢者支援金に対する全面総報酬割へ移行するまで臨時補助金があてられている。
医療費適正化・健康増進に向けた取組みをすべての保険者で強化することが求められている。

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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