2017年09月29日

消費者物価(全国17年8月)-エネルギー価格の上昇率鈍化から、コアCPI上昇率は1%弱で頭打ちへ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は0.2ポイント拡大

消費者物価指数の推移 総務省が9月29日に公表した消費者物価指数によると、17年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.7%(7月:同0.5%)と8ヵ月連続で上昇し、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.7%、当社予想も0.7%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.2%(7月:同0.1%)と前月から上昇率が0.1ポイント拡大、総合は前年比0.7%(7月:同0.4%)であった。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(7月:前年比6.3%→8月:同7.8%)、灯油(7月:前年比21.2%→8月:同21.4%)、電気代(7月:前年比6.1%→8月:同7.0%)、ガス代(7月:前年比1.4%→8月:同3.1%)の上昇幅がいずれも前月から拡大したため、エネルギー価格の上昇率は7月の前年比5.8%から同7.0%へと拡大した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 70歳以上の高額療養費の自己負担額の上限が引き上げられ、診療代の上昇率が7月の前年比0.0%から同3.5%へと高まったこと、被服及び履物(7月:前年比0.0%→8月:同0.6%)、教養娯楽(7月:前年比0.0%→8月:同0.4%)が上昇したこともコアCPIを押し上げた。

一方、大手通信会社の値下げを反映し、携帯電話通信料は7月の前年比▲2.3%から同▲5.4%へと下落幅が拡大した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.51%(7月:0.42%)、食料(生鮮食品を除く)が0.21%(7月:0.21%)、その他が▲0.01%(7月:▲0.13%)であった。

2.物価上昇品目数が若干増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は288品目(7月は282品目)、下落品目数は174品目(7月は178品目)となり、上昇品目数が前月から若干増加した。上昇品目数の割合は55.1%(7月は53.9%)、下落品目数の割合は33.3%(7月は34.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は21.8%(7月は19.9%)であった。

上昇品目数の割合は15年秋頃の60%台後半をピークに低下傾向が続いていたが、ここにきて若干持ち直している。今月はビデオカメラ、電子辞書といった教養娯楽用耐久財が下落から上昇に転じた。既往の円高の影響が徐々に薄れてきたことを反映した動きと考えられる。

3.コアCPI上昇率は1%弱で頭打ちの公算

17年9月の東京都区部のコアCPIは前年比0.5%(8月:同0.4%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント高まった。事前の市場予想(QUICK集計:0.5%、当社予想は0.6%)通りの結果であった。

ガソリン(8月:前年比9.9%→9月:同8.3%)の上昇幅は縮小したが、灯油(8月:前年比12.9%→9月:同13.4%)、電気代(8月:前年比8.2%→9月:同9.5%)、ガス代(8月:前年比6.0%→9月:同8.9%)の上昇幅が拡大したため、エネルギー価格の上昇率が8月の前年比7.7%から同9.2%へと拡大した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解 また、テレビ(8月:前年比▲13.5%→9月:同4.5%)、携帯型オーディオプレイヤー(8月:前年比▲4.1%→9月:同0.1%)が上昇に転じ、教養娯楽用耐久財の下落幅が8月の前年比▲4.4%から同▲0.2%へと大きく縮小した。

一方、8月に上昇に転じた被服及び履物は再び下落に転じ(8月:前年比0.8%→9月:同▲0.3%)、コアCPIを押し下げた。
東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が0.44%(8月:0.37%)、食料(生鮮食品を除く)が0.13%(8月:0.13%)、その他が▲0.07%(8月:▲0.10%)であった。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 ここにきて原油価格は上昇しているが、エネルギー価格の前年比上昇率は17年10月をピークに鈍化する可能性が高い。エネルギーによるコアCPI上昇率の押し上げ寄与は17年10月に0.6%程度まで拡大した後、17年度末にかけて0.2%程度まで縮小することが予想される。

今後は、需給バランスの改善や円安に伴う輸入物価上昇による上昇圧力を、エネルギー価格の上昇率鈍化が相殺する形となる。コアCPI上昇率は一時的に1%近くまで高まるが、1%に到達する前に伸び率が頭打ちとなる可能性が高いだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年09月29日「経済・金融フラッシュ」)

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