2017年09月25日

欧州大手保険グループの2017年上期末SCR比率の状況について-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-

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3|Generali
(1)SCR比率の推移
Generaliは、会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示しているが、2017年上半期は、営業利益の計上による資本形成に加えて、市場環境が好調だったことから、2017年上期末の2つの比率はともに10%ポイント以上と大きく上昇した。

以下の図表の数値は、会社の内部モデルベースの経済的なソルベンシー比率によるものである。
GeneraliのSCR比率推移の要因(会社の内部モデルベース)
(2)感応度の推移
感応度については、半期ベースの数値は開示していない。年間ベースでは、UFR(終局フォワードレート)を変化させた場合の影響についても開示しており、「UFRを50bps引き下げた場合でもSCR比率は5%ポイントの低下にとどまる」ということで、影響が一定程度の水準に収まることが示されている。
Generaliの感応度の推移
(3)トピック
会社は、完全な内部モデルの使用に向けて、引き続き監督当局のIVASSと交渉中としているが、2016年にフランスの生命保険事業において内部モデルの適用が認められたことから、会社ベースと監督ベースのソルベンシー比率の差異が2015年末の31%ポイントから2016年末は17%ポイントに大きく低下していた。

2017年上期末においては、この点に関しての大きな進展は見られず、両者の差異は19%ポイントと引き続き大きく乖離している。
4|Prudential
(1)SCR比率の推移
Prudentialも、営業利益の計上による資本創出に加えて、2016年には6月に10億ドル、9月に7.25億ドルの新規ハイブリッド資本の発行を行っている。

2016年末から2017年上期末にかけても、営業利益は好調であったが、ポンド建の業績表示ということもあり、為替による影響がマイナスになっている。
PrudentialのSCR比率推移の要因
(2)感応度の推移
感応度については、2016年末と比べて、金利上昇による影響が大きくなっているが、株式市場の変動による影響は小さくなっている。
Prudentialの感応度の推移
(3)トピック
会社はソルベンシーIIの算出に反映していない経済的資本のソースとして、(1)米国の分散効果、(2)アジアの認識の中止、(3)不動産の株主持分、(4)有配当資本、(5)米国における認められた慣行、を揚げている。

また、地域別にソルベンシー比率をみると、以下の通りとなっている。
Prudentialの地域別ソルベンシー比率
Prudentialは移行措置を適用しているが、2016年決算において、移行措置適用による影響は25億ポンドで、SCR比率への影響は20%ポイントであるとしていた。
5|Aviva
Avivaも会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。

Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2016年末で29億ポンド)、職員年金制度(2016年末で11億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。 殆どの重要な完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。

(1)SCR比率の推移
Avivaの会社ベースの数値は、2017年上期末に、基礎的な営業利益の計上を主因として、2016年末に比べて4%ポイント上昇した。一方で、監督ベースの数値は、3%ポイント低下した。
AvivaのSCR比率推移の要因
(2)感応度の推移
感応度については、2017年上期末は、2016年末と大きくは変わっていない。また、長寿リスクに対応した、年金死亡率の5%低下による影響が12%ポイントと大きなものとなっている。
Avivaの感応度の推移
(3)トピック
Avivaは、2017年上半期において、以下の資本取引を行うことで、効率的な資本管理を行っている。

・スペイン事業の大半を4億7500万ユーロで売却
・Friends Provident International Limited(FPIL)を340百万ポンドで売却
・5月に、3億ポンドの自己株式買戻しを発表(7月末時点で3分の1以上を完了)
6|Aegon
Aegonは、SCR比率の動向分析を四半期毎に説明している。

(1)SCR比率の推移
Aegonは、2016年において、英国年金事業の売却やオランダにおける各種の経営行動を通じて、資本効率の改善を図っていたが、2017年上半期においても、以下の「(3)トピック」で述べる方策を講じることで、SCR比率が2016年末に比べて、28%ポイントと大幅に上昇している。
AegonのSCR比率推移の要因
(2)感応度の推移
感応度は、基本的には2016年末と大きくは変わっていないが、2017年上期末では、米国事業の転換手法の改正等の影響もあり、金利上昇による感応度が高くなっている。
Aegonの感応度の推移
なお、地域別のソルベンシー比率は、以下の図表の通りとなっている。
Aegonの地域別ソルベンシー比率
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中村 亮一

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