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- 商業施設売上高の長期予測~少子高齢化と電子商取引市場拡大が商業施設売上高に及ぼす影響~
2017年08月31日
1――はじめに
小売業が低迷し、首都圏でも百貨店や大手総合スーパーが閉店に追い込まれるケースが出てきている。足元では持ち直しの兆しが見られるものの、これからも楽観できない状況が続きそうである。今後、少子高齢化と電子商取引(EC)市場拡大の影響による下押し圧力が強まると予想されるからだ。
商業施設のテナントの賃料負担力は売上高と密接に関連している。そのため、小売業の売上不振は賃料引き下げやテナント撤退などにつながり、商業施設の投資収益を押し下げる。少子高齢化やEC市場拡大による小売業の先行き不安が、商業施設への投資の不透明感を強めている。
そこで、本稿では将来の少子高齢化とEC市場拡大の影響に注目し、2035年までの商業施設売上高の推移を試算することで、今後の商業施設の売上環境の変化について考察した。
商業施設のテナントの賃料負担力は売上高と密接に関連している。そのため、小売業の売上不振は賃料引き下げやテナント撤退などにつながり、商業施設の投資収益を押し下げる。少子高齢化やEC市場拡大による小売業の先行き不安が、商業施設への投資の不透明感を強めている。
そこで、本稿では将来の少子高齢化とEC市場拡大の影響に注目し、2035年までの商業施設売上高の推移を試算することで、今後の商業施設の売上環境の変化について考察した。
2――小売業販売額の動向
小売業の販売額は、1996年の146.3兆円をピークに、2002年には132.3兆円まで減少した(図表1)。その後は、リーマンショック後に急減する局面もあったが、緩やかに回復し、2016年は139.9兆円となっている。小売業態別に見ると、百貨店の不振が鮮明だ(図表2)。百貨店の販売額は1991年の12.1兆円をピークに減少を続け、2016年は6.6兆円とほぼ半減した。スーパーも1999年までは増加基調が続いたものの、その後は13兆円前後で横ばいである。一方、コンビニは拡大を継続し、1998年の6.0兆円から2016年は11.4兆円と約2倍にまで成長している。
足元では、雇用・所得環境の改善や株高、インバウンド消費など明るい兆しも見えてきた。しかし、今後は少子高齢化とEC市場拡大の影響が強まるため、先行きへの不安感は残る。
足元では、雇用・所得環境の改善や株高、インバウンド消費など明るい兆しも見えてきた。しかし、今後は少子高齢化とEC市場拡大の影響が強まるため、先行きへの不安感は残る。
3――少子高齢化の商業施設売上高への影響
1|将来の人口・世帯数の推移
2015年の国勢調査によると、日本の総人口は1億2709万人と、前回調査の2010年から96万人減少した。同調査を開始した1920年以来、初の減少である。国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、2035年の総人口は1億1521万人と、20年間で9.3%減少する(図表3)。一方で、65歳以上人口比率は2015年の26.6%から2035年には32.8%まで上昇する見込みだ。
人口は既に減少しているが、世帯数は2015年の5,333万世帯から2020年の5,348万世帯まで増加する見通しである(図表4)。二人以上世帯は今後一貫して減少していくが、単身世帯が2030年まで増加することが、日本の世帯数を下支えする見込みである。
2015年の国勢調査によると、日本の総人口は1億2709万人と、前回調査の2010年から96万人減少した。同調査を開始した1920年以来、初の減少である。国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、2035年の総人口は1億1521万人と、20年間で9.3%減少する(図表3)。一方で、65歳以上人口比率は2015年の26.6%から2035年には32.8%まで上昇する見込みだ。
人口は既に減少しているが、世帯数は2015年の5,333万世帯から2020年の5,348万世帯まで増加する見通しである(図表4)。二人以上世帯は今後一貫して減少していくが、単身世帯が2030年まで増加することが、日本の世帯数を下支えする見込みである。
年齢毎の世帯数を見ると、世帯数の多い年齢が徐々に高齢層にシフトしていくことがわかる(図表5、6)。世帯数の多い世代は、団塊ジュニア(2015年時点で40~44歳)と団塊の世代(同65~69歳)と呼ばれ、日本の消費の全体像に影響を与える。団塊ジュニアは、今後20年で消費支出のピークである55~59歳を通過し、2035年には60~65歳となる。団塊の世代は、2025年に後期高齢者とされる75~79歳となり、2035年には85歳以上になる。これにより日本の平均年齢は一段と上昇する見込みだ。
少子高齢化が進んでいく中、世帯構造を見ると、「単身世帯の増加」と「世帯の高齢化」が進展することが特徴的であり、今後の消費動向を分析する上で重要なポイントである。
少子高齢化が進んでいく中、世帯構造を見ると、「単身世帯の増加」と「世帯の高齢化」が進展することが特徴的であり、今後の消費動向を分析する上で重要なポイントである。
2|単身世帯増加の物販・外食・サービス支出への影響
単身世帯の増加が個人消費に与える影響を整理する。ここでは各世帯の消費支出のうち、商業施設の売上に繋がる品目を「物販・外食・サービス支出」として集計し、単身世帯と二人以上世帯(一人当たり)で比較する。
単身世帯の増加が個人消費に与える影響を整理する。ここでは各世帯の消費支出のうち、商業施設の売上に繋がる品目を「物販・外食・サービス支出」として集計し、単身世帯と二人以上世帯(一人当たり)で比較する。
物販・外食・サービス支出は、全ての年齢で単身世帯の方が大きく、平均すると34.1千円/月上回る(図表7)。単身世帯と二人以上世帯の差は、30~39歳で最も小さく(21.0千円/月)、50~59歳で最も大きい(53.8千円/月)。
品目別に見ても、単身世帯がほとんどの品目で上回る。特に差が大きいのは、食料(平均で+4.1千円/月)、被服・靴(同+2.8千円/月)、外食(同+5.6千円/月)観覧・入場料等(同+3.8千円/月)、交際費(同8.1千円)である。一方、49歳以下の単身世帯は素材となる食料への支出が小さい。この年齢層の単身世帯は、惣菜などの加工食品や外食により食事を済ませ、自炊しない傾向がうかがえる。
品目別に見ても、単身世帯がほとんどの品目で上回る。特に差が大きいのは、食料(平均で+4.1千円/月)、被服・靴(同+2.8千円/月)、外食(同+5.6千円/月)観覧・入場料等(同+3.8千円/月)、交際費(同8.1千円)である。一方、49歳以下の単身世帯は素材となる食料への支出が小さい。この年齢層の単身世帯は、惣菜などの加工食品や外食により食事を済ませ、自炊しない傾向がうかがえる。
(2017年08月31日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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