コラム
2017年08月28日

夫婦調査に見る「学歴上位妻の台頭」-生涯未婚データ考-男性が背負わない結婚、という選択

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに-高学歴女性は結婚できないのか

筆者が2017年2月に発表した「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方、では、今や初婚カップルの4組に1組が年上妻カップルであり、さらに年上妻婚のうち「女性が4歳以上年上」が2位(6.5%)にランクインすることを紹介した。

この結果は、一般的な感覚からはかなりの驚きをもって捉えられたようである。
 
「団塊ジュニア」を含む40代より若い人口層で人口ピラミッドが逆三角形をとっている現在、日本の「人口マイノリティ化しつつある若い世代」で起こっていることや感覚に対して、「人口マジョリティの年輩陣」の理解の中に「大きな誤解」が生じる可能性が高まっていることを注意しなくてはならない。
 
少数派となりつつある若手層の考え方を多数派である40代以上が自分の世代の恋愛・結婚観で捕らえて評価したり、意見をしたりしてしまうことによって、若手層を巻き込むつもりが全くの的外れとなってしまいかねないことも少なからず起こりうるだろう。
 
本稿では、「女性が高学歴化したから」結婚できなくなったのではないか、未婚化が進んでいるのではないか、という議論を取り上げて、少し深堀りをしてみたい。筆者を含めた団塊ジュニア世代ではかなり一般的な「結婚が難しくなる理由」によくある議論ではあるが、今の時代においては、果たしてデータから見るとどのような状況か、印象論を排して確認することとしたい。

女性の大学進学率と結婚状況

「女性が高学歴化したから」という状況をまずは大学進学率でみてみると、最新の2016年における女性の大学進学率は48.2%、短大進学率は8.9%である1(図表1)。両者をあわせると57%の女性が大学や短大に進学したことになる。
【図表1】学校種類別進学率の推移
一方で、データは少々古くなるが、2010年の国の夫婦調査2のデータを使用して最新ベース(2005年以降の結婚年のカップル)での「妻と夫の最終学歴マトリックス表」を作成し、妻の最終学歴の割合と妻の学歴別に夫の学歴割合を算出してみたところ、図表2のような結果となった。
【図表2】妻の最終学歴別 夫の最終学歴マトリックス表(%)
図表2を見ると、短大卒以上(短大・高専卒妻、大卒妻、院卒妻の合計)の妻が全体の49%となっている。この夫婦調査時点の2010年の短大・大学等進学率は56%である。

女性の56%が短大以上に進学しているのに、妻の短大卒以上割合が49%、と言うのは、一見「高卒までの学歴の女性の方が結婚している?」かのように見える。
 
しかし短大等への進学時点と結婚時点では、進学時点で結婚しない限り、時差が生じる。

図表2の夫婦調査が実施された2010年における女性の平均初婚年齢を確認してみると、国の統計で平均28.8歳であった。

とすると、女性は最終学歴卒業後、平均して、高卒妻であれば約11年、大卒妻であれば約7年経過してから結婚しているという計算になる。

つまり、結婚というライフイベントのおよそ10年前の短大以上進学率と比較して、高学歴が女性に与える影響については見なければならない、ということになる。
 
あらためて、夫婦調査から10年さかのぼった2000年の女性の大学進学率をみてみると、大学への進学が31.5%、短大等への進学が17.2%となり、あわせて49%ということになる。
 
以上から、2010年の夫婦調査時点においては
となり、高学歴女性(ここでは短大卒以上)の結婚に対する有利・不利は、データからは特に読み取れない(有利でも不利でもない)、という結果であった。
 
以上から、「高学歴女性が結婚に不利」「高学歴女性が増えたから未婚化している」という感覚は、妻の高学歴比率が進学比率と一致していることから見て、事実誤認である、といえるだろう。
 
 
1 内閣府「男女共同参画白書 平成29年度版」
2 国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

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