- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融政策 >
- 資本主義で容認される価格統制-政策目的の市場介入は、違法な相場操縦と何が異なるのか
資本主義で容認される価格統制-政策目的の市場介入は、違法な相場操縦と何が異なるのか
金融研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長 德島 勝幸
このレポートの関連カテゴリ
日本銀行が四半期ごとに市場参加者にアンケートしている債券市場サーベイの結果を見る(図表)と、債券市場の機能度は、特にイールドカーブ・コントロールの導入以降大きく悪化しており、その後も低水準での停滞が続いている。機能度が高いと回答した比率と低いと回答した比率の差を取ったDI(Diffusion Index)の水準は、2016年以降、ずっとマイナス33から45の範囲にある。もしこれが、日銀短観調査で公表される大企業製造業の業況判断DIだったらどうか。マイナス33から45というDIの水準は、近年では、2008年のリーマンショックや2001年のITバブル崩壊当時の水準である。いわゆる景気の後退期であると認定されたような水準である。そういった低水準の状態が1年以上継続しているということに、市場参加者は深い憂慮を覚えている。
国債の長短年限の流通利回りに対する操作を行うのに重要な手段の一つが、日銀による指値オペの実施であり、そもそもの国債買入オペにおける買入額の増減も、同様の効果を持っている。財に対する需要と供給の関係によって価格が定まるというのが市場原理であり、市場参加者の中でも約4割という最大の国債保有シェアを誇る日本銀行が、国債市場をコントロールすることは極めて容易なことなのである。
純粋な古典的資本主義経済においては、政府による経済への介入は不適切とされる。しかし、そのことが公害や独占・寡占といった不具合をもたらしたことで、現在の修正資本主義の世界では、ある程度の政府による経済への介入が肯定されている。また、戦後の日本経済の復興・発展は、むしろ計画経済の導入による国家社会主義的な取組みの成果であったと見ることもできよう。経済が行き詰まっている緊急避難的局面において、純粋な資本主義的な手法でない市場介入や価格統制が行われることは是認されよう。しかし、当初の目標を達成できなかったからと言って、目標達成の期限をなし崩しに延長することは不適切である。そろそろ異次元の金融緩和全体について、改めての総括が必要なのではなかろうか。
1 何人も、政令で定めるところに違反して、取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場をくぎ付けし、固定し、又は安定させる目的をもつて、一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受託等をしてはならない。
(2017年07月13日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1845
- 【職歴】
・1986年 日本生命保険相互会社入社
・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
・2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・日本ファイナンス学会
・証券経済学会
・日本金融学会
・日本経営財務研究学会
德島 勝幸のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/07/03 | 見直しを迫られる国内債券パッシブ運用 | 德島 勝幸 | ニッセイ年金ストラテジー |
2024/06/07 | アセットオーナー・プリンシプルへの期待-資産運用高度化の要 | 德島 勝幸 | 基礎研マンスリー |
2024/05/27 | アセットオーナー・プリンシプルへの期待-資産運用高度化の要 | 德島 勝幸 | 研究員の眼 |
2023/07/05 | 公的年金の「100年安心」は制度について | 德島 勝幸 | ニッセイ年金ストラテジー |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月22日
日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか -
2025年01月22日
社会的インパクトをもたらすスマートシティ-CRE(企業不動産)を有効活用したグリーンフィールド型開発に期待 -
2025年01月22日
トランプ政権始動、円相場の行方は関税次第に~マーケット・カルテ2月号 -
2025年01月22日
英国雇用関連統計(24年12月)-賃金上昇率は前年比5.2%台で推移 -
2025年01月21日
気候変動 保険活用への影響-保険の“3つのA”はどのような影響を受けるか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【資本主義で容認される価格統制-政策目的の市場介入は、違法な相場操縦と何が異なるのか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
資本主義で容認される価格統制-政策目的の市場介入は、違法な相場操縦と何が異なるのかのレポート Topへ