- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 雇用・人事管理 >
- 今なぜ働き方改革が進んでいるのだろうか?-データで見る働き方改革の理由
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
このように日本の有給休暇取得率や平均取得日数が改善されない理由としては、日本の祝日数が昔に比べて増えたことや、完全週休2日制3が少しずつ定着することにより、労働者の休日数が平均的に増加したことが考えられるが、より根本的な理由は有給休暇が取れない又は取りづらいという職場環境にある。
3「週休2日制」と「完全週休2日制」を区分する必要がある。一般的に求人広告などに掲載されている「週休2日制」は、1ヶ月の間に週2日の休みがある週が1度以上あることである。一方、「完全週休2日制」は、毎週2日の休みがあることを表す。いずれにしても、どの曜日が休みになるかは企業次第であり、「完全週休2日制」と表記されていても、企業によっては平日の2日が休みになっている可能性もある。
4 厚生労働省(2014)「平成26年度 労働時間等の設定の改善を通じた「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査」
5「ためらいを感じる」(24.8%)と「ややためらいを感じる」(43.5%)の合計
働き方改革を推進している三つ目の理由としては、日本政府が奨励しているダイバーシティー(多様性)マネジメントや生産性向上が働き方改革と直接的に繋がっている点が挙げられる。ダイバーシティーマネジメントとは、個人の性別や人種、国籍などの違いにこだわらずに優秀な人材を活用する企業経営方式である。実際、(1)でも述べた通り、最近は経済のグロバール化が進むことにより、様々な環境に対応できる多様な人材の必要性が高まっている。
図5はOECD加盟国の労働者一人当たりの平均年間労働時間と時間当たり労働生産性の関係を示しており、両者の間には負の相関があり、統計的にも有意であった(相関係数は-0.755、有意水
準1%で有意)。日本は過去と比べて労働時間は短くなった(パートタイム労働者を含めた場合)ものの、労働生産性は他の国と比べてまだ低い。例えば2015年における日本の時間当たり労働生産性は、44.8ドル(GDP改定後)で、OECD平均50.0ドルより低く、OECD加盟国の中でも19位に留まっている6。不要な残業や休日勤務などが労働生産性を低くした原因である可能性が高く、日本政府は働き方の改革を推進することにより多様な人材を活用することで生産性を引き上げることを目指している。
6 公益財団法人日本生産性本部(2016)『日本の生産性の動向2016年版』
3――おわりに
- 金明中(2016)「曲がり角の韓国経済第11回 労働者を優先した働き方改革を」東洋経済日報2016年9月2日
- 厚生労働省(2014)「平成26年度 労働時間等の設定の改善を通じた「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査」
- 厚生労働省「就労条件総合調査:結果の概要」各年度
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査」
- 公益財団法人日本生産性本部(2015)『日本の生産性の動向2015年版』
- 首相官邸(2015)「「日本再興戦略」改訂2015―未来への投資・生産性革命」2015年6月30日
(2017年07月07日「ニッセイ基礎研所報」)
このレポートの関連カテゴリ

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/15 | 韓国は少子化とどう闘うのか-自治体と企業の挑戦- | 金 明中 | 研究員の眼 |
2025/03/31 | 日本における在職老齢年金に関する考察-在職老齢年金制度の制度変化と今後のあり方- | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/28 | 韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | グリーン車から考える日本の格差-より多くの人が快適さを享受できる社会へ- | 金 明中 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【今なぜ働き方改革が進んでいるのだろうか?-データで見る働き方改革の理由】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
今なぜ働き方改革が進んでいるのだろうか?-データで見る働き方改革の理由のレポート Topへ