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- チャネル多様化の進展状況-保険ショップ・FPチャネルにおける加入行動の変化の状況
2017年07月03日
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4――加入検討行動
1|加入検討のきっかけ
各チャネルからの加入者について、加入検討のきっかけをみると、保険ショップでは「生活設計・家計の見直し」が17.0%から35.2%へと8.2ポイント増加しているほか、「妊娠・出産・子の就学」も15.1%から20.4%へと5.3ポイント増加しており、逆に「結婚」は13.2%から5.6%へと7.7ポイント減少している(図表- 5)。また、3.5ポイントと変化の幅は僅かながら、「家族・親戚、友人・知人の勧め」も増加していることは、保険ショップ利用者の口コミにより顧客層が拡がりつつある可能性も示しているといえよう。一方、独立系FPでは、保険ショップ同様「妊娠・出産・子の就学」が11.9%から18.4%へと6.5ポイント増加しているものの、「独立系FPの勧め」も26.9%から39.5%へと12.6ポイント増加している。なお、営業職員では、「家族・親戚、友人・知人の勧め」が10.0%から15.6%へと5.6ポイント増加している以外は、大きな差異はみられない。
各チャネルからの加入者について、加入検討のきっかけをみると、保険ショップでは「生活設計・家計の見直し」が17.0%から35.2%へと8.2ポイント増加しているほか、「妊娠・出産・子の就学」も15.1%から20.4%へと5.3ポイント増加しており、逆に「結婚」は13.2%から5.6%へと7.7ポイント減少している(図表- 5)。また、3.5ポイントと変化の幅は僅かながら、「家族・親戚、友人・知人の勧め」も増加していることは、保険ショップ利用者の口コミにより顧客層が拡がりつつある可能性も示しているといえよう。一方、独立系FPでは、保険ショップ同様「妊娠・出産・子の就学」が11.9%から18.4%へと6.5ポイント増加しているものの、「独立系FPの勧め」も26.9%から39.5%へと12.6ポイント増加している。なお、営業職員では、「家族・親戚、友人・知人の勧め」が10.0%から15.6%へと5.6ポイント増加している以外は、大きな差異はみられない。
2|検討時に利用した情報源
加入検討時に利用した情報源についてみると、保険ショップからの加入者では、「相談・見直しサイト」が4.3%から13.0%へと8.7ポイント、「保険に関する書籍」が4.3%から10.9%へと6.5ポイント、それぞれ増加し、「設計書・見積書」が8.7ポイント、「パンフレット」が6.5ポイント減少している(図表- 6)。また、独立系FPでは、「独立系FP」が2時点ともに最も多くなっているものの62.1%から76.5%へと14.5ポイント増加しているほか、「パンフレット」が9.5ポイント、「設計書・見積書」が5.4ポイント、それぞれ増加し、「比較サイト」が9.6ポイント、「FP資格の取得等の独学」が6.9ポイント、「その他の保険代理店」が5.5ポイント、それぞれ減少している。
チャネル間で比較すると、2015以降の加入者で1割以上の利用率がある情報源は、保険ショップの加入者が7種類、営業職員からの加入者が6種類となっているのに対し、独立系FPからの加入者では4種類に留まっている。このことは、加入検討に際し、独立系FPからの加入者は他のチャネルからの加入者に比べ、より売り手側であるFPに依存するようになっている可能性があることを意味している。
加入検討時に利用した情報源についてみると、保険ショップからの加入者では、「相談・見直しサイト」が4.3%から13.0%へと8.7ポイント、「保険に関する書籍」が4.3%から10.9%へと6.5ポイント、それぞれ増加し、「設計書・見積書」が8.7ポイント、「パンフレット」が6.5ポイント減少している(図表- 6)。また、独立系FPでは、「独立系FP」が2時点ともに最も多くなっているものの62.1%から76.5%へと14.5ポイント増加しているほか、「パンフレット」が9.5ポイント、「設計書・見積書」が5.4ポイント、それぞれ増加し、「比較サイト」が9.6ポイント、「FP資格の取得等の独学」が6.9ポイント、「その他の保険代理店」が5.5ポイント、それぞれ減少している。
チャネル間で比較すると、2015以降の加入者で1割以上の利用率がある情報源は、保険ショップの加入者が7種類、営業職員からの加入者が6種類となっているのに対し、独立系FPからの加入者では4種類に留まっている。このことは、加入検討に際し、独立系FPからの加入者は他のチャネルからの加入者に比べ、より売り手側であるFPに依存するようになっている可能性があることを意味している。
これらの結果は、保険ショップからの加入者が妊娠や出産といったライフイベントを契機として、保険についても生活設計や家計の見直しの一環として捉え、保険の加入・乗換といった明確な目的をもってショップを訪れるようになってきているのに対し、独立系FPからの加入者では、同様にライフイベントを契機として家計についての助言を求めて相談する中で、FP側から積極的に保険加入を勧めるケースが増えている可能性があることを示している。このような2時点間の変化は、これらのチャネルを利用したことに対する満足度にどのような影響を与えているのだろうか。
それぞれのチャネルに対する満足度についてみると、「満足」と「まあ満足」をあわせた「満足計」では独立系FPが73.1%から86.8%へと13.7ポイント、保険ショップが69.8%から79.6%へと9.8ポイント、それぞれ増加している(図表- 7)。ただし「満足」に限定してみると、いずれも変化の幅は小さいものの、保険ショップが2013~2014の20.8%から3.3ポイント増加して2015年以降では24.1%となっているのに対し、独立系FPでは23.9%から4.1ポイント減少して19.7%と、2割を切る結果となっている。
それぞれのチャネルに対する満足度についてみると、「満足」と「まあ満足」をあわせた「満足計」では独立系FPが73.1%から86.8%へと13.7ポイント、保険ショップが69.8%から79.6%へと9.8ポイント、それぞれ増加している(図表- 7)。ただし「満足」に限定してみると、いずれも変化の幅は小さいものの、保険ショップが2013~2014の20.8%から3.3ポイント増加して2015年以降では24.1%となっているのに対し、独立系FPでは23.9%から4.1ポイント減少して19.7%と、2割を切る結果となっている。
5――結果の総括と考察
これまでみてきたように、改正保険業法の施行など販売環境が変化するなか、保険ショップからの加入者は、加入検討のきっかけが「結婚」から「生活設計・家計の見直し」や「妊娠・出産・子の就学」へとシフトしており、検討時の情報源としても、「相談・見直しサイト」や「保険に関する書籍」など、チャネル以外の情報源も幅広く利用するようになっていた。また、その結果加入する商品種類や加入先の生保会社にも変化が見られ、商品種類では「個人年金」が、加入先の生保会社では「国内中小」の割合が増加し、「外資系」が減少していた6。一方で、独立系FPからの加入者では、「独立系FPの勧め」が大きく増加しており、検討時の情報源についても、加入チャネルである独立系FPに集中する傾向にある様が明らかとなった。その結果、加入商品種類への変化は見られないものの、加入先の生保会社では「国内中小」が増加し、「国内大手」が減少する結果となっていた。このように、加入検討行動や加入商品、加入先の生保会社が変化した結果、両チャネルとも満足度は上昇しているものの、保険ショップがより確度の高い「満足」でも微増となっているのに対し、独立系FPではむしろ「満足」が微減していた。
これらの結果は、保険ショップが販売環境の変化への対応としてより顧客志向で臨むようになっており、利用者が十分満足して加入したうえ、口コミを通じて顧客層の拡大にも寄与しているのに対し、独立系FPで十分に満足のいくサービスの提供に繋がっていない背景には、家計診断や生活設計の助言のなかで、保険の加入・見直しの提案へと拙速に進みすぎている可能性を示しているのではないだろうか。
そもそも保険の加入・見直しを目的として利用される保険ショップと家計や生活設計に関わる幅広い悩みや疑問の解消を期待されているFPとでは、果たすべき役割や顧客に向き合う姿勢に違いはあろう。しかし、「生命保険」が家計や生活設計全般に密接に関わる商品であることを考慮すれば、こうした商品を取り扱う以上はいずれのチャネルについても、顧客の想いに寄り添い、顧客のニーズを見極めた上で、具体的な提案につなげていくことが求められており、顧客にも冷静な判断を求める姿勢が肝要ではないだろうか。今のところ、チャネルの多様化という点では資格登録者数の多さも相俟って独立系FPの方がより存在感を示している状況にあるが、分析結果に示したように、それぞれの販売姿勢の差異や、保険ショップにおいて口コミによる顧客層の拡がりがあるとすれば、これらのチャネルの利用状況は、数年のうちに大きな差がつく可能性もあるといえよう。
6 加入検討のきっかけや商品種類の変化は、子育て期から老後に向けた生活設計へのニーズの変容がある中高齢層への顧客層の拡がりにより生じた可能性も考えられる。
これらの結果は、保険ショップが販売環境の変化への対応としてより顧客志向で臨むようになっており、利用者が十分満足して加入したうえ、口コミを通じて顧客層の拡大にも寄与しているのに対し、独立系FPで十分に満足のいくサービスの提供に繋がっていない背景には、家計診断や生活設計の助言のなかで、保険の加入・見直しの提案へと拙速に進みすぎている可能性を示しているのではないだろうか。
そもそも保険の加入・見直しを目的として利用される保険ショップと家計や生活設計に関わる幅広い悩みや疑問の解消を期待されているFPとでは、果たすべき役割や顧客に向き合う姿勢に違いはあろう。しかし、「生命保険」が家計や生活設計全般に密接に関わる商品であることを考慮すれば、こうした商品を取り扱う以上はいずれのチャネルについても、顧客の想いに寄り添い、顧客のニーズを見極めた上で、具体的な提案につなげていくことが求められており、顧客にも冷静な判断を求める姿勢が肝要ではないだろうか。今のところ、チャネルの多様化という点では資格登録者数の多さも相俟って独立系FPの方がより存在感を示している状況にあるが、分析結果に示したように、それぞれの販売姿勢の差異や、保険ショップにおいて口コミによる顧客層の拡がりがあるとすれば、これらのチャネルの利用状況は、数年のうちに大きな差がつく可能性もあるといえよう。
6 加入検討のきっかけや商品種類の変化は、子育て期から老後に向けた生活設計へのニーズの変容がある中高齢層への顧客層の拡がりにより生じた可能性も考えられる。
(2017年07月03日「基礎研レポート」)
井上 智紀
井上 智紀のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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