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- チャネル多様化の進展状況-保険ショップ・FPチャネルにおける加入行動の変化の状況
2017年07月03日
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1――はじめに

本稿では、これら生命保険の販売チャネルの前回執筆以降の多様化の状況および各チャネルを通じた加入者の商品や会社、加入検討行動の変化について概観することで、今後のチャネル多様化の進展について示唆を得ることを目的とする。
なお、本稿の分析には、弊社が昨年12月に実施した生命保険マーケット調査2の個票データを用いる。
1 井上智紀(2015)「保険ショップ・FPチャネルの動向-利用者の特徴と支持される背景要因」『基礎研レポート』2015年10月15日
2 調査概要は以下のとおり。
・調査対象:全国の20~69歳の男女個人(調査会社登録パネル)
・調査手法および実施時期:インターネット調査(2016年12月実施)
・有効回収数:6,296サンプル(うち生保加入者4,789サンプル)
2――チャネル多様化の進展状況
はじめに、直近加入時の利用チャネルについてみると、全体では「営業職員」が43%と最も多く、「郵送」(8%)、「インターネット」(7%)、「職場の総務・組合」「保険会社の窓口」「金融機関窓販」(6%)、「独立系FP」(5%)、「保険ショップ」(4%)の順となっている(図表- 2)。「営業職員」の内訳では戦後、一貫して生保の主要チャネルであった「女性営業職員」は29%と依然として主要な地位を占めており、「男性営業職員」は14%となっている。これを直近加入時期別にみると、01年以前には過半を占めていた「営業職員」のシェアは02~06年には4割にまで急減しており、2012年以降は4割を切って横ばいを続けている。一方で、01年以前には1~2%程度に過ぎなかった「独立系FP」や「保険ショップ」はそれぞれ増加傾向にあり、2015年以降では「独立系FP」が10%、「保険ショップ」が7%と、「営業職員」に比べまだ少数派に過ぎないものの、徐々にその地位を高めつつある様がみてとれる。
実際に、生命保険協会が毎年公表している「生命保険の動向(2016年版)3」によれば、年度末登録営業職員数は約23万人となっている。前述の通り全国の保険ショップは約2千店となっており、1店舗あたり10人が従事していたとしても2万人と、営業職員の1割程度に留まることになる。また、日本FP協会が認定するAFP・CFPの認定者数は2016年7月現在で17万5千人4、(一社)金融財政事情研究会が公表している「ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得状況5」では2002年度からの累計で119万人となっている。前述の日本FP協会の公表資料が示すようにAFP・CFP認定者のうち、FP事務所・士業事務所の所属が7%に留まっていることを考慮すれば、これらFPの有資格者のうち、生命保険の販売に従事している独立系FPは多めに見積もっても10万人にも満たないものと推定される。このように、保険ショップや独立系FPは規模の面では営業職員を大きく下回るなか、高い販売効率を盾に販売チャネルとしての存在感を増しているといえよう。
販売環境に変化がみられるなかで、保険ショップや独立系FPを通じた生命保険の加入行動にはどのような影響がみられているのだろうか。以降では、2015年以降と2013~2014年について、両チャネルおよび営業職員チャネルからの加入者の加入動向について対比するなかで、足下の環境変化の影響について概観していく。
3 出所:(一社)生命保険協会ウェブサイト
4 出所:特定非営利活動法人日本FP協会ウェブサイト「データでみるFP資格」
5 出所:(一社)金融財政事情研究会ウェブサイト「ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得状況」
販売環境に変化がみられるなかで、保険ショップや独立系FPを通じた生命保険の加入行動にはどのような影響がみられているのだろうか。以降では、2015年以降と2013~2014年について、両チャネルおよび営業職員チャネルからの加入者の加入動向について対比するなかで、足下の環境変化の影響について概観していく。
3 出所:(一社)生命保険協会ウェブサイト
4 出所:特定非営利活動法人日本FP協会ウェブサイト「データでみるFP資格」
5 出所:(一社)金融財政事情研究会ウェブサイト「ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得状況」
3――加入商品種類と会社類型
1|加入商品種類
直近に加入した商品種類について、チャネル別、加入時期別にみると、保険ショップの加入者では加入時期によらず「第三分野」が半数を超えて多くなっているものの、2013~2014年の60.4%に対して2015年以降では51.9%と8.5ポイント低下し、「個人年金」が5.7%から11.1%へと5.4ポイント増加している(図表- 3)。一方、独立系FPからの加入者では商品種類によらず2時点間に大きな差異はみられず、営業職員からの加入者では「個人年金」が8.9%から14.2%へと5.3ポイント増加しているものの、他の商品類型では大きな変化はみられない。
個別の商品種類では、保険ショップからの加入者で「終身保険」が2013~2014年の9.4%から16.7%へと7.3ポイント増加する一方、独立系FPからの加入者では23.9%から15.8%へと8.1ポイント減少している。また、営業職員からの加入者では「定額個人年金」が8.5%から13.6%へと5.1ポイント増加しているなど、チャネルにより売れ筋の商品種類の変化には差異がある様がみてとれる。
直近に加入した商品種類について、チャネル別、加入時期別にみると、保険ショップの加入者では加入時期によらず「第三分野」が半数を超えて多くなっているものの、2013~2014年の60.4%に対して2015年以降では51.9%と8.5ポイント低下し、「個人年金」が5.7%から11.1%へと5.4ポイント増加している(図表- 3)。一方、独立系FPからの加入者では商品種類によらず2時点間に大きな差異はみられず、営業職員からの加入者では「個人年金」が8.9%から14.2%へと5.3ポイント増加しているものの、他の商品類型では大きな変化はみられない。
個別の商品種類では、保険ショップからの加入者で「終身保険」が2013~2014年の9.4%から16.7%へと7.3ポイント増加する一方、独立系FPからの加入者では23.9%から15.8%へと8.1ポイント減少している。また、営業職員からの加入者では「定額個人年金」が8.5%から13.6%へと5.1ポイント増加しているなど、チャネルにより売れ筋の商品種類の変化には差異がある様がみてとれる。
(2017年07月03日「基礎研レポート」)
井上 智紀
井上 智紀のレポート
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