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大腸の内視鏡検査・治療の増加が民間医療保険に与える影響
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
1――大腸がん・大腸ポリープに対する内視鏡治療増加の背景
大腸がんを切除する場合、従来は、開腹手術を行っていたが、現在では身体への負担が小さい腹腔鏡視下手術や内視鏡治療を行うことが多い(手技の概要は図表10参照)。特に、2012年度から保険収載された「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術」は、早期がんや腺腫に対して行われる内視鏡治療の1つで、これまでの内視鏡治療では対処が難しかった病変も切除できることから、実施数が増加している。「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術」の導入によって外科的手術を必要とする例が減ったという報告もある。
大腸がんやポリープに関するこういった情報が広く知られるようになったことや、国の政策による後押し2等によって、大腸がん検診受診率は上昇している(図表2)。
大腸がん検診では、便潜血検査をスクリーニングとして行い、陽性だった場合に内視鏡検査を受けることが多いが、人間ドック等では便潜血検査の結果によらず内視鏡検査を選択できることもある。
大腸がんの多くは、腺腫性ポリープから移行したものだと考えられており、内視鏡検査等でポリープが見つかった場合は、その時点で切除することも多い。
2 「がん対策推進基本計画」では、2012年度から2016年度までの5年間を対象として、がん検診(胃・肺・大腸・乳・子宮頸)の受診率を50%(胃、肺、大腸は当面40%)とすることを目標として掲げている。大腸がんに対しては2011年度から検診のためのクーポンが配布されている。
2――診療データを使った詳細な動向
そこで本稿では、医療施設による診療データを使って、この5年間の大腸内視鏡検査の動向、および内視鏡治療の動向を紹介する。
1|使用したデータ
分析に使用したデータは、メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下「MDV」とする。)による診療データベースである3。
このデータベースは、DPC対象病院296施設における1,821万人分の診療データ(2017年4月末時点)について、個人情報に該当する情報を全て匿名化処理した上で、各種研究で活用されている。
健康診断や人間ドックではなく、保険診療の1つとしての検査を集計していることから、実際に大腸の病気の疑いがある患者を対象としている。
本稿では、このデータベースから2011~2015年度の5年間にわたってデータが取得できた77施設について、大腸ポリープ5または結腸がん6によって何らかの処置7を受けた患者を抽出し、分析した。
3 メディカル・データ・ビジョン株式会社が保有する診療データベースは、病院からデータの二次利用許諾をいただいた、DPCデータ/レセプトデータをもとに構築している。当該データベースでは、収集が難しく実態を把握することが困難とされていた、病院における薬剤処方実態や疾患規模の実態などを明らかにすることが可能である。なお、取り扱っているデータは全て、個人情報保護の観点から匿名化処理をしている。
4 例えば、健康保険組合等で保有するレセプトデータでは、被用者とその家族に限定されてしまうのに対して、医療機関にあるデータでは、年齢や就労状況に関係なくデータを取得することができる。
5 ICD10(国際疾病分類第10版)の「K635(大腸のポリープ)」「D010-012(その他及び部位不明の消化器の上皮内癌,結腸,直腸S状結腸移行部, 直腸)」「D12(結腸,直腸,肛門及び肛門管の良性新生物(肛門除く))」
6 ICD10(国際疾病分類第10版)の「C18(結腸の悪性新生物)」「C19(直腸S状結腸移行部の悪性新生物)」「C20(直腸の悪性新生物)」
7 具体的には、「大腸内視鏡検査(医科診療報酬点数表のD313)」「内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術(同K721)」「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術(同K721-4)」「腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術(同K719-3)」「腹腔鏡下結腸切除術(同K719-2)」「結腸腫瘍(回盲部腫瘍摘出術を含む。)、結腸憩室摘出術、結腸ポリープ切除術(開腹によるもの)(同K720)」「結腸切除術(同K719)」のいずれかを受けている患者を対象とした。
03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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