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増加する白内障手術と民間医療保険のリスク~社会環境の変化や診療報酬改定が与える影響
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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5年間の推移をみると、2011~2013年度にかけて徐々に外来での手術が増加し、在院日数が減少していた。7泊以上の長期入院は減少傾向にあるが、2015年度時点でも12%あった。2014年度以降は外来と2泊以内の入院が多くなっていた。
2013年度と2014年度それぞれについて、年齢別に在院日数を比較すると、外来または日帰り入院での手術が多いのは、70歳代以下だった(図表8)。1~2泊の入院での手術が多いのは60~70歳代で、50歳代以下と80歳以上は在院日数が長い傾向があった。
2013年度と2014年度を比較すると、30~40歳代では日帰り入院が、40~60歳代では外来が増加し、70~80歳代では1~2泊入院が増加していた。7泊以上の入院に大きな違いはなかった。
13 厚生労働省「社会医療診療行為別統計(調査)」によると、入院による手術(短期滞在手術基本料3を含む)は、全手術の半数程度だったが、今回のデータでは入院による手術が8割と多くなっている。これは、今回のデータがDPC対象病院によるデータであるからだと考えられる。
(3) 片眼ずつ手術する患者が増加した可能性続いて、同じ月に受けた水晶体再建術の平均回数を年齢別にみると、高齢で1.5前後と回数が多かった。半数程度が同じ月に片眼ずつ2回の手術をしていると推測できる(図表9)。2013年度までと2014年度以降を比較すると、2014年度以降は70歳代以上で平均回数が低下していた。
2014年度以降、70歳以上で特に1~2泊の短期の入院が増えたこともあわせて考えると、片眼・両眼同一の点数になった結果、両眼とも手術が必要な場合にも片眼ずつ2度に分けて手術を行うケースが増え、片眼手術が増えたことによって1回の入院における在院日数がさらに短くなったものと推測できる。
3――民間の医療保険への影響
白内障による手術は増加している。高齢化によって白内障患者が増えただけでなく、眼内レンズの性能が上がったことや、手術による身体の負担が減ったことで、早期段階で手術を受ける患者が増えたほか、高齢でも手術を受けられるようになったことが背景となっていると考えられる。
今回のデータによると、2011~2015年度にかけて在院日数はいずれの年齢層でも減少傾向にあった。特に2014年度の診療報酬改定後は、外来手術や2泊以内の短期入院による手術が増加していた。50歳以下では外来や日帰りが増加しており、60歳以上では1~2泊の短期入院が増加していた。
また、同じ月に手術を受ける回数は高齢で高いことから、高齢で両眼を同時期に手術を受ける傾向があると推測できた。2014年度以降は、両眼同じ月に手術している患者が減っていた。診療報酬改定の影響と考えられる。
民間の医療保険との関係で考えると、多くの医療保険商品が、終身にわたって手術を保障している。したがって、水晶体再建術を高齢期に受けたり、2回に分けて受けたりする動きは医療保険にも影響を及ぼすと考えられる。
早期段階で手術を受けることや、高齢になっても手術を受けることが増えると、手術給付はその分増加する。入院を伴うケースも多いので、あわせて入院給付も増加する。また、人工レンズには寿命があるため、早期段階で若いうちに手術を受けるようになれば、高齢期に2度目の手術を受ける可能性が出てくる。その一方で、今後、これまで以上に、外来や短期間の入院で手術を受けるようになれば、入院給付は減る。手術給付金が外来時の手術と入院時の手術で異なる商品であれば、外来手術の方が入院手術よりも給付額が低く設定されることが多いため、手術給付は減る。
2014年度の診療報酬改定時のように、これまで両眼同時に手術を受けていた契約者が片眼ずつ2回の入院に分けて手術を受ければ、手術給付が2回分になるほか、2回に分けることによって1契約者あたりの入院給付の給付日数の合計が長くなる可能性がある。
保険会社では、こういった医療環境の変化によって給付が増大することをある程度見込んで保険料を設定しているが、保険料を設定してから給付までの期間が長く、予測を上回った変化はリスクとなり得るだろう。また、診療報酬改定の影響を受けるため、公的保険の動向も注視すべきだろう。
(2017年06月26日「基礎研レポート」)
03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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