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最近の人民元と今後の展開(2017年6月号)~トランプ氏退陣は元安要因、基準値設定方法変更は元高要因
三尾 幸吉郎
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1――5月の人民元の動き
2――今後の展開
米中の経済金融動向を考えると、中国政府(含む中国人民銀行)は16年秋以降、住宅バブル退治に乗り出したため、景気指標の一部には陰りが見え始めている(図表-6)。しかし、17年1-3月期の実質成長率が17年目標(6.5%前後)を大幅に上回るなど、景気の勢いは想定以上に強く、住宅バブル膨張にも歯止めが掛かっていない(図表-7)。従って、中国人民銀行は17年7-9月期にも基準金利の引き上げに踏み切らざるを得なくなると見ている。一方、米国では経済の持続的拡大が続いており、今後も段階的に政策金利を引き上げると見ている。但し、トランプ政権への期待が萎むとともに米国の長期金利は低下、米中の長期金利差は拡大し始めている(図表-8)。従って、米利上げが先行するため米中の短期金利差は縮小するものの、米中の長期金利差は縮小しないと見て、米ドルに対する人民元レートはほぼ横ばいと予想している。
人民元レートに影響するポイントに絞ると、第一にトランプ大統領の去就が挙げられる。トランプ政権に対する期待は既に萎んでおり、退陣となってもドル安・元高に振れる可能性は低いだろう。むしろ、不透明感が払拭されるとともに、ペンス新大統領に対する期待が高まってドル高・元安に振れる可能性が高い。第二に中央政治局会議で示される17年下期の経済運営方針が挙げられる。ここで金融引き締め強化に重点が置かれれば、米利上げと同時に基準金利を引き上げる可能性が高まって、ドル安・元高の要因となるだろう。第三に米中包括経済対話を控えた市場介入スタンスが挙げられる。ここもと中国政府(含む中国人民銀行)はバスケット通貨の動きに緩やかに連動させるスタンスを続けている。基準値設定方法の変更が無ければ、そのスタンスを続けるものと見られる。但し、トランプ大統領の退陣を契機に、市場でドル買い元売りの動きが加速すれば、米中通商交渉を有利に運ぶためにも、元買いドル売り介入などで人民元の下落を最小限に留める可能性が高いと見ている。
また、今回の予測対象期間中には、中国人民銀行が検討中の基準値設定方法の変更が実施される可能性もある。前述のとおり具体的にどんな変更を検討しているかは定かでないが、人民元ショック(2015年8月11日)以前の基準値設定方法に近い形になるのではないかと見ている。すなわち、中国人民銀行が妥当と考える水準に基準値を設定しその水準は頻繁に動かさない一方で、基準値の上下2%の許容変動幅の範囲では市場参加者が自由に取引できるという方式である(図表-9)。というのは、現在の基準値設定方法に変更したことで「変動相場制」に一歩近づいたものの、中国政府の意図が市場に伝わり難くなり、資金流出の遠因ともなったからだ。中国人民銀行の詳細発表に注目したい。
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(2017年06月02日「基礎研レター」)
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