2017年06月07日

まちづくりレポート みんなで創るマチ 問屋町ー若い店主とオーナーの連携によりさらなるブランド価値向上に挑む岡山市北区問屋町

基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.243]

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任   塩澤 誠一郎

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4―みんなで創るマチを具現化する

1|委員会
小田墾さん2が、2014年4月から2代目の「問屋町テナント会」会長となり、副会長に、明石祥有城3さんが就いてからは、組合との協力関係をよりいっそう深めている。組合の中に委員会があり、委員長は組合の理事が担う。そこにテナント会の若手が加わり企画を詰めていく。組合の承認を得て、予算化する仕組みだ。そうして動き出したものに、イルミネーション委員会がある。

2015年の冬、テナント会の限られた予算を使って、オレンジホール4の一角に若手数名でイルミネーションを設置していると、組合の理事が声を掛けてきて、それならイルミネーション委員会をつくってやろうということになり、2016年度の予算が承認された。電球はテナント会の手作りで、街路樹への設置は、共感してくれた専門業者の知人に協力してもらった。2016年10月にイルミネーションが点灯すると、各テナントが自主的に店の入り口まわりをイルミネーションで飾り付けるようになったという。
イルミネーションを転倒した街並み
 
2「カフェ・キネマ」店主
3ベイプ(電子たばこ)専門店「ウーヌス」を経営
4組合が所有、運営する催事施設。(図表1参照)
2|自分たちが面白いことをする
小田さんと祥有城さんは、テナント会自体も「みんなで創るマチ」に変えようとしている。会員から徴収していた年会費を撤廃し、定例会もなくした。強制的に参加を求めるようなこともしない。「今は、誰かが何かしたいと思ったときに声を掛けて、面白いと思ったら参加してもらう」スタンスだという。それでも毎回10数人が集まり、皆のモチベーションも高いという。

5―第2のブランディング

1|厳しい経営状況
だが現在、テナントの経営状況は厳しいという。客足はピーク時の7割程で、経営が苦しいテナントもある。要因の1つは岡山駅前に大型ショッピングモールができたことだ。2014年にそれがオープンして人の流れが変わった。もう一つの要因は、ピーク時と比べたブランド力の低下だ。問屋町ブランドの維持は引き続き課題となっている。それでも、小田さんと祥有城さんはあくまで前向きだ。「客足は減っているけど、問屋町だけが減っているわけではない。状況を変えていく可能性はある。そのための新たな取り組みを提案していきたい」と祥有城さんが話してくれた。

2|マンション住民
活性化の鍵を握るのは、マンション住民だ。2000年の定款変更以降店舗ばかりでなく住宅も増え、人口も増えた。2000年の問屋町の人口は41人であったが、2015年は1,329人である。年齢別に見ると、30~50代前半及びその子世代が増加してきたことが分かる。客層だけでなく、問屋町は住民も若々しい。これは問屋町の大きな強みと言えよう。[図表2]

ただ、最も身近なマンション住民が、問屋町を利用することは少ない。普段使いする店舗構成ではないためだ。
[図表2]問屋町年齢5歳階級別人口
3|まちの美術館化
今後はマンション住民がいかにここに来るようになるかが重要になる。明石卓巳さんは、「普通の日に親子がお金を使わずに2時間過ごせるような機能をつくりたい。そこで2時間過ごした後カフェでお茶しようとなることが重要」と考えている。まち全体をキャンバスにして、美術館化する構想も抱いている。駐車マナー違反についても、貼り紙や柵を置くのではなく、グラフィティ5を描くことによって駐車しないように促す。著名アーティストによる質の高い作品であれば発信する力も強く、駐車マナーを促す効果が期待できる。同時に、人を惹きつける力になる。こうしたことを第2のブランディングとして取り組んでいきたいという。

5 スプレーやマーカーで描くアート作品。主に建物の外壁や屋外構造物の壁面に描くことが多い。


4|オレンジホールの解体再開発
2016年9月、組合は「問屋町にぎわい創出事業」を公表した。そこには、老朽化したオレンジホールを解体し、その跡地を活用して新たな賑わいを創出すると記されている。問屋町の活性化に寄与する事業提案を公募する内容だ。問屋町の中心に位置し、敷地面積約7,000m2、法定容積率が400%で、かなり規模の大きい開発が可能だ。新築される建物が現在の街並みに溶け込むことができるのか。そこに導入する店舗は、問屋町ブランドにふさわしいものになるのだろうか。しかし、募集要項には、「みんなで創るマチ」を組合活動のコンセプトとしたと書かれている。このコンセプトが生きている以上、組合はコンセプトを最も理解した提案を選定するはずである。選定された事業者も問屋町に関わる一員として、みんなが喜ぶまちづくりを行っていくはずだ。問屋町の将来にとって重要な事業であると共に、「モノサシ」の真価が問われる機会になるのかもしれない。

6―まちづくりにとって大切なこと

問屋町のまちづくりで最も重要な点は、まちづくりに関わる人達のまちに対する思いだと感じる。立場が違っても、まちへの思いを共有すれば、一緒に動いていくことができる。同時に、それぞれの立場が持つ得意、不得意をさらけ出し合える信頼関係を築くことだと思う。それができるからこそ不得意なところを補い合う関係が生まれる。組合とテナント会にはそれがあると感じる。今後、第2のブランディングによって、マンション住民も次第にこのまちに愛着を感じ、まちへの思いを共有していくことが期待できよう。問屋町にとって、これからさらに「みんなで創るマチ」が重要になっていくはずだ。ここから先の問屋町に学ぶことが大きいと思うのである。
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社会研究部   都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

(2017年06月07日「基礎研マンスリー」)

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