- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 仕事と生活の調和(ワークライフバランス) >
- 「働き方改革」と「散歩」の効用-「あそび」や「ゆとり」を見出す方法
「働き方改革」と「散歩」の効用-「あそび」や「ゆとり」を見出す方法

土堤内 昭雄
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
かつての労働者像には、時間的制約もなく、ひたすら体力の限界まで働くことが求められてきた。当時の栄養ドリンク剤の広告は、『24時間戦えますか!』だった。最近の「働き方改革」を受け、製薬会社では肉体疲労のみならず精神疲労にも効能のあるドリンク剤を開発しているという*。筆者も以前は締め切りの迫った報告書を仕上げるために、ドリンク剤を飲みながら深夜におよぶ残業をこなした経験があるが、そのような働き方が“昭和の残滓”になるのはいつのことだろうか。
現代社会では効率性が第一に求められる。そこには「あそび」や「ゆとり」の入り込む余地は少ない。「あそび」には、『自動車のハンドルのあそび』などのように、「ゆとりや余裕」(Redundancy)という意味がある。人口減少時代に労働生産性の向上が要求される一方、どのようにすれば「あそび」や「ゆとり」を持って効率的に働くことができるだろうか。日常生活の中で気軽に「あそび」や「ゆとり」を持つためのひとつの方法として、一日一回の「散歩」を試してみてはいかがだろう。
国語辞典には、「散歩」とは『気晴らしや健康のためにぶらぶら歩くこと』とある。古代中国では、不老不死などに効く「五石散」という粉薬を服用したとき、副作用を防止するために「発散」を促すよう歩き回ったことが「散歩」の語源になったという。つまり、「散歩」には人間の体内の害悪となるものを排出する解毒作用のような機能があるのだ。現代社会であれば、仕事などでたまったストレスも「散歩」が体外に排出してくれると言う訳だ。
長時間労働をなくす制度が整うには時間がかかる。また、制度があっても運用次第では、過労死を完全に撲滅することは難しい。われわれ一人ひとりにできる自己防衛策は、仕事の合間に「あそび」や「ゆとり」を見出すことではないだろうか。目的もなく歩き回る「散歩」は、日常のストレスを解消し、血の循環をよくし、思考が深まる「思索」につながる。「働くこと」の大切な目的は『幸せに生きるため』である。一日一回の「散歩」は、われわれが『何のために働くのか』を思い起こす一助になるだろう。
* 日本経済新聞記事『24時間戦いません/ドリンク剤ソフト路線』(2017年5月20日朝刊)
(参考)研究員の眼『「あそび」失った社会~「忙しい」は“心”亡くすこと』(2012年10月9日)
(2017年05月30日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ
土堤内 昭雄
土堤内 昭雄のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/12/20 | 「定年退社」します!-「生涯現役」という人生の「道楽」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/11/28 | 「人生100年時代」の暮らし方-どう過ごす?! 定年後の「10万時間」 | 土堤内 昭雄 | 基礎研レポート |
2018/11/27 | 「平成」の30年を振り返って-次世代へのメッセージは、「レジリエントな社会づくり」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/10/23 | 「幸せ」実感できぬ社会-豊かな時代のあらたな課題 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年03月26日
語られる空き家、照らされる人生-物語がもたらす価値の連鎖- -
2025年03月26日
決済デジタル化は経済成長につながったのか-デジタル決済がもたらす新たな競争環境と需要創出への道筋 -
2025年03月26日
インバウンド市場の現状と展望~コスパ重視の旅行トレンドを背景に高まる日本の観光競争力 -
2025年03月25日
ますます拡大する日本の死亡保障不足-「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査<速報版>」より- -
2025年03月25日
米国で広がる“出社義務化”の動きと日本企業の針路~人的資本経営の視点から~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【「働き方改革」と「散歩」の効用-「あそび」や「ゆとり」を見出す方法】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「働き方改革」と「散歩」の効用-「あそび」や「ゆとり」を見出す方法のレポート Topへ