コラム
2017年05月09日

「高齢課題先進国」の技術開発-「自動運転技術」が拓くモーダルシフト

  土堤内 昭雄

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4月下旬、宅配最大手のヤマト運輸が当日再配達の締め切り時刻を午後8時から7時に繰り上げた。不便を感じる人も多いだろうが、宅配業界の長時間労働緩和のためなら容認する利用者もいるだろう。もちろんサービス低下を看過できるほど宅配業界の競争は甘くない。同社は、27年ぶりの料金改定を決断した一方、宅配ロッカーの設置を促進するなど荷物の受取方法の利便性向上が急務である。

最近、同社ではDeNAと共同して、宅配ボックスを搭載した自動運転車「ロボネコヤマト」という次世代物流サービスの実証実験を神奈川県藤沢市で開始した。高齢化が進み買物弱者が増えるなかで、10分単位で荷物の受取時刻と場所を指定できるサービスだ。到着した車の収納庫から暗証番号やQRコードを使い荷物を受け取ることができ、ドライバーや配達員の不足、再配達問題の解消にも役立つ。

自動運転技術は高齢社会において大きな寄与が期待される。相変わらず高齢者が被害者や加害者になる交通事故が多発しているが、自動運転技術を構成する衝突防止、車線逸脱防止、急発進防止等の機能を備えた安全対策車が普及すれば、かなりの事故は未然に防げるはずだ。最近では街角や鉄道駅で電動車いすに乗った人も見かけるようになった。東京メトロのホームページには電動車いすを利用できる駅のバリアフリー施設ガイドや使用に当たっての注意事項を掲載している。

電動車いすは、地下鉄のホーム柵がないところで転落する危険はないのか、他の乗客と接触事故を起こす心配はないのかなど懸念する点も多い。警察庁資料によると、電動車いすの交通事故は、年間180件前後発生しており、平成27年の死者は7名を数える。但し、電動車いす利用者は歩行者扱いのため利用者の単独事故や電動車いす同士の事故、歩行者との事故は交通事故統計には含まれていない。

パナソニックは病院内の自動搬送ロボットの技術を活かし、多くの人が集まる場所でも安全に走行できる衝突回避システムを備えた「自動運転車いす」をウィル(株)と共同開発中だ。当面は空港や大型ショッピングセンターなどでの利用を想定しているという。自動運転車と同様に車いすの自動運転が可能になれば、高齢者だけでなく視覚障害の人の移動などにもかなり幅広く利用できるだろう。

DeNAは、横浜市立金沢動物園でコミュニティバスの自動運転の実証実験も始めた。超高齢化が進む日本は多くの課題を抱えるが、「高齢課題先進国」としての技術開発のチャンスもたくさんある。自動運転技術の開発は、移動制約者が増加する超高齢社会のモーダルシフトの可能性を大きく拓き、だれにとっても暮らしやすいユニバーサルデザイン社会をつくる重要な役割を担うだろう。
 
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土堤内 昭雄

研究・専門分野

(2017年05月09日「研究員の眼」)

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