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長く働ける社会-人生100年時代の働き方改革
基礎研REPORT(冊子版) 2017年2月号
櫨(はじ) 浩一
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1――進む長寿化
ある年の年齢別の死亡率が将来も続いた場合に、それぞれの年齢で生まれた子供のうちでどれだけの人が生き残っているかという割合を示したのが下図だ。男性を例に見てみると、90歳まで生きられる人の割合は、明治時代には1%にも満たなかったが、1970年には3%強になっていた。さらに2015年には四分の一を超える人が90歳を超えて生きられるようになっていることになる。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2012年)の中位推計では、日本の平均寿命は2060年に男性84.19年、女性90.93年になると想定しており、今後約半世紀での寿命の伸びは4年程度に過ぎない。しかし近年の医薬品や医療技術の急速な進歩を見れば、「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、 (翻訳)池村 千秋、東洋経済新報社刊)が述べているように、平均寿命がもっと長くなって、多くの人が100歳くらいまで生きることができるようになるという可能性は十分にあるだろう。
2――長い人生をどう支えるか
平均寿命の延びと並行して高齢者の健康は大きく改善しており、同じ年齢で比較すれば現在の高齢者ははるかに若々しく元気である。1951年に連載が始まったまんがサザエさんの両親は50代前半という設定であることは以前にもこのコラムで書いたが、まんがに出てくるキャラクターは現在では10歳以上は年配だという印象を受ける。昔は働くには年配過ぎると考えられていた年齢でも、現在では働くことに支障がなくなっている。
文化的な違いのためか欧米では高齢になって働くことへの抵抗があるが、幸いなことに日本の高齢者には働く意欲があり、就業の機会さえあれば働いて生活を支えたいと考えている。これは、高齢化への対応で日本にとって非常に幸運なことだ。公的年金制度改革では、負担増を迫られる若者と給付が削減される高齢者の対立という構図で議論されることが多いが、対立を緩和するカギは高齢者が働くことによって収入を得て自力で生活を支えることができるようにすることだ。
3――働き方改革で長く働ける社会を
国際的に15歳から65歳までの年齢層が生産活動に従事する生産年齢人口と定義されている。しかし、国際比較をする場合はともかくとして、このモデルで経済・社会を考えることは長寿化が進む日本には合わなくなっている。
これまでと同じ65歳までの人だけを働き手の対象にしていたのでは、企業は人材や労働力の不足に直面する恐れが大きい。高齢者を企業内でうまく活用していくことは、社会にとって望ましいだけではなく、企業にとっても他社との競争や生き残りのために不可欠となるはずだ。
長時間労働の改善が重要であることは言うまでもないが、人生100年時代を見据えれば、長く働ける社会を実現することも働き方改革の重要テーマであろう。
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(2017年02月08日「基礎研マンスリー」)
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