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- 【12月米雇用統計】雇用者数は市場予想を下回るも、全般的に良好な内容で労働需給の改善を確認。
2017年01月10日
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1.結果の概要:雇用者数は前月から伸びが鈍化、市場予想も下回る
1月6日、米国労働省(BLS)は12月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で15.6万人の増加1(前月改定値:+20.4万人)となり、上方修正された前月改定値からは伸びが鈍化、市場予想の+17.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.7%(前月:4.6%、市場予想:4.7%)とこちらは前月から上昇、市場予想には一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.7%(前月:62.6%)と、こちらは3ヵ月ぶりに改善した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は4.7%(前月:4.6%、市場予想:4.7%)とこちらは前月から上昇、市場予想には一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.7%(前月:62.6%)と、こちらは3ヵ月ぶりに改善した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:労働参加率、賃金上昇率は労働需給のタイト化を示唆
12月の非農業部門雇用者数は市場予想を下回ったものの、過去2ヵ月分が合計で1.9万人上方修正されたことを考慮すれば、予想対比でそれほど悪い結果ではない。一方、雇用増加ペースは10-12月の月間平均が16.5万人増と、7-9月(21.2万人増)から鈍化した。労働市場が完全雇用に近づく中で、雇用増加数が20万人超を維持するのは難しくなっており、当面は10万人台半ば~後半の伸びが続こう。
家計調査は、失業率が前月から+0.1%ポイント上昇したものの、3ヵ月ぶりに労働力人口が増加に転じ、労働参加率が改善する中での上昇であり、労働需給の悪化を必ずしも意味しない。
家計調査は、失業率が前月から+0.1%ポイント上昇したものの、3ヵ月ぶりに労働力人口が増加に転じ、労働参加率が改善する中での上昇であり、労働需給の悪化を必ずしも意味しない。

このようにみると、12月の雇用統計は雇用者数こそ市場予想に届かない伸びとなったものの、労働参加率や賃金上昇率の改善が示すように、労働需給の改善が持続していることを示す結果であった。労働市場は、雇用増加が賃金上昇に繋がり易い状況になっていると言える。
トランプ次期大統領は、今後10年間で2,500万人雇用を創出するとしており、年間平均250万人は、16年の雇用増加数216万人を上回るペースである。トランプ氏の経済政策は未だ詳細について不明な点が多いものの、仮に雇用増加ペースが加速する場合には、労働市場が完全雇用に近づいている中で賃金インフレのリスクは高まろう。
3.事業所調査の詳細:製造業が5ヵ月ぶりに増加

サービス部門の中では、医療サービスが前月比+4.3万人(前月:+3.1万人)と前月から伸びが加速した一方、人材派遣業が▲1.6万人(前月:+2.4万人)と減少に転じたこともあり、専門・ビジネスサービスでは+1.5万人(前月:+6.5万人)と伸び鈍化がみられた。さらに、小売業も+0.6万人(前月:+2.0万人)と前月から伸びが鈍化した。
財生産部門は、前月比+1.2万人(前月:+1.3万人)と前月とほぼ同水準の増加となった。製造業が+1.7万人(前月:▲0.7万人)と5ヵ月ぶりに増加に転じた一方、建設業が▲0.3万人(前月:+1.7万人)と、こちらは4ヵ月ぶりに減少に転じた。
政府部門は、前月比+1.2万人(前月:+0.6万人)となった。内訳をみると、州・地方政府が+0.7万人(前月:+0.8万人)とほぼ前月並みの伸びとなった一方、連邦政府が+0.5万人(前月:▲0.2万人)と前月から増加に転じた。
前月(11月)と前々月(10月)の雇用増(改定値)は、前月が+20.4万人(改定前:+17.8万人)と+2.6万人上方修正された一方、前々月が+13.5万人(改定前:+14.2万人)とこちらは▲0.7万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+1.9万人の上方修正となった(図表3)。
なお、BLSの公表に先立って1月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+15.3万人(前月改定値:+21.5万人、市場予想:+17.5万人)となり、前月、市場予想を下回った。ADP社の結果は、雇用の伸び鈍化を示しており、12月の雇用統計と整合的であった。
12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.00ドル(前月:25.90ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.3時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は891.80ドル(前月:888.37ドル)と前月から増加した(図表4)。
なお、BLSの公表に先立って1月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+15.3万人(前月改定値:+21.5万人、市場予想:+17.5万人)となり、前月、市場予想を下回った。ADP社の結果は、雇用の伸び鈍化を示しており、12月の雇用統計と整合的であった。
12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.00ドル(前月:25.90ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.3時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は891.80ドル(前月:888.37ドル)と前月から増加した(図表4)。
(2017年01月10日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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