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一億総活躍社会の「働き方」-「生産性向上」、「長寿化社会」、「共働き社会」の実現に向けて

土堤内 昭雄
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4―新たな「働き方」に向けて
日本は少子高齢化の進展から本格的な「人口減少」と「長寿化」の時代を迎えている。人口減少により将来の労働力人口の減少は疑う余地はないが、それは即ち労働力不足を意味するのだろうか。また、長寿化により一層長い年数働かねばならない時代に、AIなどの技術イノベーションは、われわれの「働き方」にどのような変化をもたらすのだろうか。
2013年にオックスフォード大学のオズボーン氏等が発表した論文『雇用の未来(THE FUTURE OF EMPLOYMENT:HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION ?)』によると、今後10~20年程度で、アメリカの雇用者の約半分は、AIやコンピューターによって仕事が代替されるリスクが高いという。アマゾンは、AIを活用したレジのないコンビニ店舗『Amazon Go』を2017年早々に開設するという。やがてレジ係がいない無人化したスーパーマーケットが主流となる時代が来るかもしれない。
最近のAIの発達は、グーグルの「アルファ碁」がプロ棋士に勝ったり、本格的な小説を創作したり、人間本来の創造的領域にまで及んでいる。ロボットがルーチン的な仕事しかできなかった時代から、AIやビッグデータを活用し、知的な仕事を代替する時代が確実に迫っている。これまで人間以外には困難と考えられてきた既存の多くの仕事もAIやロボットに代替されるかもしれない。
人口減少時代の経済成長のためには、AIやロボットによる労働の代替化は不可欠だ。しかし、それらが知的分野を含む社会の広い範囲に及ぶと、仕事に就ける人が限定され、失業者が増加し、所得格差の拡大が一段と進むのではないだろうか。また、AIやロボットが人間の労働を代替できる分野が限られても、その代替によって雇用や所得を奪われる人たちの消費が低迷すれば、他分野の雇用の減少につながることも想定される。
今年6月、政府は名目GDP600兆円に向けた成長戦略「日本再興戦略2016」を公表した。そのなかで、AIやロボットの活用による「生産性革命」をひとつの課題に掲げ、第4次産業革命の実現に伴う新たな有望成長分野の創出を打ち出した。同戦略には、『技術や産業の変革に合わせて、人材育成や労働市場、働き方を積極的に変革していかなければ、雇用機会は失われ、雇用所得は減少し、中間層が崩壊して二極化が極端に進んでしまう』と書かれている。
今後は、新たな成長分野を創造すると共に、生産性の高い分野への労働移動を促進し、AIを活用した産業構造への転換を進めなければならない。それが達成されなければ、たとえ働く意欲や能力を有していても、労働市場で仕事に就けずに所得を得られない中間層が出現する可能性があるからだ。
おわりに
(2016年12月22日「基礎研レポート」)
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