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歯科医療の変化-かかりつけ歯科医は何をすべきか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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従来、歯科治療は、いかに歯の形態を回復させるか、ということに主眼が置かれてきた。しかし、健診により早期に虫歯や歯周病を見つけ、悪化する前に治療を始めるケースが増えている。これにより、抜歯せずに歯を残しつつ、咀嚼(そしゃく)や構音等の口腔機能を取り戻すことへ、口腔ケアの目標が変化しつつある。つまり、形態回復から、機能重視に軸足を移した歯科医療が進められている。
また、次節に示すとおり、口腔機能と全身機能の関連も明らかにされつつある。口を、消化や呼吸の入り口と捉えて、全身疾患の予兆を把握すべく、口腔を診る歯科医療が始められている。行政サイドからは、都道府県の地域医療計画策定(2013年~)に先立って、2012年に厚生労働省より局長通知が出されている。そこでは、5疾患・5事業18及び在宅医療に、歯科口腔保健の推進が求められている。
歯科疾患を予防することで、歯を残すことができ、口腔機能が保持され、生涯にわたる健康増進につながる、というストーリーの実現に向けて、医療分野と保健分野のそれぞれで取組みが進められている。具体的には、医療分野では、歯を残す技術の向上が図られている。一方、保健分野では、成人歯科健診プログラム等の保健システムの構築が進められている。
18 5疾患とは、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患を指す。5事業とは、救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療を指す。
これまでの医学研究で、多くの病気が口腔内の疾患に関係していることが明らかにされている。特に、海外の医学研究所や国内の大学では、研究が進められている。
その中で、医学研究者や医療関係者の間で、「病巣感染」という概念が浸透している。これは、「身体のどこかに限局した慢性疾患(一次病巣)があり、それ自体はほとんど無症状か軽微であるが、それが原因となって遠隔の諸臓器に反応性の器質的、あるいは機能的障害を引き起こす病態(二次病巣)」を指す19。病巣感染の一次病巣は、扁桃と口腔内がほとんどを占めると言われる。慢性口腔感染による病巣感染や、病気の例として、次のようなまとめが示されている。
19 「医者は口を診ない 歯医者は口しか診ない」相田能輝 (医薬経済社) での定義に、筆者が括弧書き部分を加筆。
4|歯科の予防管理が浸透しつつある
歯科診療所では、歯科治療のみならず、虫歯や歯周病になる前の予防管理の動きが広がっている。2014、15年に行われたアンケート調査によると、フッ化物歯面塗布20を行った歯科医院の割合は、約8割、歯周疾患等の予防管理を行った割合は、約9割に上っている。歯科診療所は、補綴やインプラントといった実際の処置だけではなく、予防管理を充実させるような変化が求められている。
20 歯に直接、高濃度のフッ化溶液を作用させる予防法。フッ化物の過剰摂取による中毒症状を防ぐため、歯科医師と歯科衛生士だけが実施でき、幼児や小児期の虫歯予防法として定着している。
(2016年12月12日「基礎研レポート」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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