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ロボット介護機器(介護ロボット)の利用意向-東京都の調査に見る現役世代の高い利用意向-

青山 正治
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2――ロボット介護機器4タイプ別の利用意向の調査結果と考察
この項目の調査票の例示では、簡略な解説及び装着型の移乗介助支援用機器と自立支援型移乗介助機器の2機種の画像が例示されている(図表-2)。

年代別では「利用したい」が30~50代で70%強となっている。60代で「利用したい」が60.7%と他の世代よりやや低くなっている(図表-3)。また、この60代の男女別集計によると、「使いたい」とする男性が69.3%、女性が53.5%で、女性が男性より約16%ほど低くなっている。
次に「利用したくない」との回答者の「利用を希望しない理由」の複数回答結果では、「価格が高そうだから」が56.3%で最も高く、次いで「安全性に心配があるから」が31.9%、「機器に介護されるのは嫌だから(家族が嫌がると思うから)」が23.4%、「機器の扱いが難しそうであるから」が22.4%となっている(図表-4)。
総じて「利用したい」とする利用意向は7割と高い結果となっている。他方、「利用したくない」は全体で15.0%だが、その主な「理由」である「価格」と「安全性」の点について簡略に補足しておきたい。
初めに「価格が高そうだから」という点については、他のタイプも同様に、(1)全く新しい分野の機器を開発するには様々な研究開発や実証試験、開発環境の整備のために初期の開発投資額が多くなりがちであること、(2)他の工業製品(自動車や家電製品など)も同様に、開発初期の機器の価格は高いものの需要が拡大するに連れて量産効果により価格は低下する、(3)この点で介護ロボットはまだ本格的普及手前の導入段階にあること、などが価格が高い原因となっていよう。
次に「安全性」については、経済産業省の支援事業で開発され販売開始されているロボット介護機器には、その開発支援機関により機器自体の厳しい安全性の評価試験や施設における実証試験等が行われ、同事業による「優秀機器認定」やISO13482(生活支援ロボットの安全要求の国際規格)の認証を受けている機器もある。今後の一般の潜在ユーザーにも、安全性を高めるためのこのような取組の内容が分かり易く伝わる必要があろう。
この項目の調査票の例示では、「歩行アシストカート」と呼ばれる機器の画像と機能の一部説明イラストが例示されている(図表-5)。

年代別では「利用したい」が20~50代で75%前後となっている。60代で「利用したい」が63.6%と他の世代より10%程度低くなっている(図表-6)。この60代の男女別集計によると、「使いたい」とする男性が68.7%、女性が59.5%で、女性が男性より9%強低くなっている。
次に「利用したくない」との回答者の「利用を希望しない理由」の複数回答結果の上位3項目では、「安全性に心配があるから」が51.6%で最も高く、次いで「価格が高そうだから」が38.8%、「機器の扱いが難しそうであるから」が17.4%となっている(図表-7)。
この屋外での歩行を支援し、買い物などで荷物も運べる機器を「利用したい」は7割超と高い。年代別では60代の「利用したい」とする割合が低く、男性よりも女性の割合が低くなっている。また、この60代では「わからない」が20.1%と他の世代より高く、機器についての情報不足等がその背景にあるのかも知れない。
さて「利用したくない」とする全体割合は12.4%だが、その「理由」について簡略に検討する。
この支援用機器の「利用したくない」とする理由は、前項の「移乗介助用機器」の上位4項目と同様であり、1位と2位、3位と4位が入れ替わった結果となっている。トップの「安全性に心配があるから」とする割合は5割強であるが、この「安全性」とは屋外で活用する支援機器である点が大きく影響していよう。例示された「歩行アシストカート」の「安全性」等について少し補足する。
まず、機器としての「安全性」については前項の考察の最終に記した「優秀機器認定」とISO13482の認証を受けた機器である。「価格」は希望小売価格が25万円弱(税別)である。特筆されるのが「機器の扱い」の点である。この機器は通信機能を備え、機器の初期設定は利用者が通常の歩行速度で機器を押して10メートルほど歩くとネットワークを介してパワーアシスト等の設定が自動で行なわれる。さらにGPSにより、外出中の位置が家族などのスマホで確認できるほか、万が一、転倒した際には登録先に緊急メールが発信される。また、10kgの荷物も楽に運べ、この分野の支援機器として評価も高い。
(2016年11月22日「基礎研レポート」)
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