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偽陽性と偽陰性のバランス-陽性の検診結果をどう見るべきか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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検診を受けると、陽性または陰性との結果が出る。ここで、注意しておかなければいけない点は、検査の精度は100%正確な訳ではないということだ。本当は病気にかかっていないのに、陽性の結果が出てしまうことがあり、これは「偽陽性」と言われる。逆に、本当は病気にかかっているのに、陰性の結果が出てしまう場合もあり、これは「偽陰性」と言われる。それぞれ、問題がある。
まず、偽陽性の場合。通常、陽性の結果が出た後に、精密検査が行われる。そこで、病気にかかっていなかったことが判明する。やれやれ、という話になるが、そう簡単なことではない。陽性の結果を受けた人は、精密検査の結果が出るまで、精神的な負担を抱えることが一般的である。また、通常、精密検査は、費用が高く、人手もかかる。したがって、検診で偽陽性が多いことは、検査を受ける人の心理の面でも、検査にかかる費用や手間の面でも、負荷が大きい。
一方、偽陰性の場合。検診を受けたにも関わらず、病気が判明しない。従って、何も治療が開始されない。そして、後日、病気が悪化して、症状が表面化してから、ようやく診断や治療が始まることとなる。このように、診断や治療が後手に回った結果、生命の危険にさらされる場合もある。
偽陽性と偽陰性は、一方を低下させようとすると、もう一方が上昇してしまうという、相反する関係にある。例えば、偽陰性を低下させようとして、病気にかかっている場合には、かなり正確に陽性の結果が出るように、検診の感度を高めると、偽陽性の出現頻度も上昇してしまう。
がん検診を例に、モデルを使って、この様子を数字で見てみることにしよう。
同じ医療の検査でも、臨床検査は、がん検診とは異なる。臨床検査は、患者や、病気の疑いがある人を対象にして、がんにかかっている場合に、そのがんを検出することを目的としており、偽陰性を減らすことが求められる。即ち、検診の感度(陽性の判定)を高める必要がある。
このように、がん検診や臨床検査に完璧なものはなく、ある程度の偽陽性や偽陰性が出てしまう。このことを理解したうえで、まずは定期的に検診を受けるべきと思われるが、いかがだろうか。
(2016年11月07日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
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