- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- 社会保障全般・財源 >
- 社会保険料の帰着に関する先行研究や非正規雇用労働者の増加に関する考察
社会保険料の帰着に関する先行研究や非正規雇用労働者の増加に関する考察

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
- 本稿では社会保険料の事業主負担が非正規雇用増加に与える影響について、既存のデータや先行研究を中心に紹介した。そして、韓国労働研究院の「事業体パネル調査」(Workplace Panel Survey)を用いて、企業における非正規労働者の決定要因に関する簡単な分析を行った。
- 企業は増え続ける社会保険料に対する負担を回避する目的で、社会保険料に対する事業主負担分の労働者の賃金への転嫁、社会保険が適用されない非正規雇用労働者の雇用、既存の正規労働者に更なる労働時間の付与や正規社員の新規採用の縮小、パート社員の一週間の労働時間の短縮などの対策を実施している。その影響なのか日本における非正規労働者の割合は止まることを知らず増え続けている。
- 本文で行われたシフト・シェア分析でも非正規労働者の増加は、過去に比べて供給要因(特にパート)のシェアが大きくなったものの、まだ供給要因より需要要因が強いという結果が出ている。
- パネル分析からは企業規模が大きいほど、そして正規労働者の平均最終学歴が高いほど非正規労働者の割合が高いという結果が出た。最近の大学進学率の上昇は就職先に対する卒業生の目線を引き上げて、ミスマッチや不安定雇用が広がる恐れがある。
- 企業に対する社会保険料に対する負担増加は労働者の賃金や雇用量に帰着される可能性が高い。最近、社会保険料が適用されない短時間労働者などの非正規労働者が増加することもその要因の一つかも知れない。政府は保険料の適用対象者を拡大することだけではなく、保険料の帰着問題も考慮し、労働者がより安心な生活ができるように注意を払う必要がある。
■目次
1――はじめに
2――社会保険料の帰着に関する先行研究の考察
3――社会保険料の雇用への帰着に関する考察(労働の需要曲線と供給曲線を用いて)
4――非正規雇用労働者の増加要因に関する分析
1 | シフト・シェア分析による要因分解
2 | 韓国労働研究院の「事業体パネル調査」を用いた分析
5――おわりに
(2016年10月20日「基礎研レポート」)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/15 | 韓国は少子化とどう闘うのか-自治体と企業の挑戦- | 金 明中 | 研究員の眼 |
2025/03/31 | 日本における在職老齢年金に関する考察-在職老齢年金制度の制度変化と今後のあり方- | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/28 | 韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | グリーン車から考える日本の格差-より多くの人が快適さを享受できる社会へ- | 金 明中 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【社会保険料の帰着に関する先行研究や非正規雇用労働者の増加に関する考察】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
社会保険料の帰着に関する先行研究や非正規雇用労働者の増加に関する考察のレポート Topへ