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- 欧州経済見通し~英国のEU離脱選択の影響は中期にわたる~
2016年09月09日
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4~6月期のユーロ圏は前期比年率1.2%。圏内格差は持続
4~6月期のユーロ圏の実質GDPは前期比0.3%、前期比年率1.2%だった。天候など特殊要因に押し上げられた同0.5%、同2.1%に比べれば鈍化したが、おおむね緩やかな拡大傾向が続いた。4~6月期は1~3月期までの基調と異なり、個人消費の寄与度が低下し、外需が最大の成長押し上げ要因となった(図表5)。
外需の改善は、輸出が1~3月期の前期比実質ゼロから4~6月期は同1.1%に加速する一方、輸入が前期の同マイナス0.1%から同0.4%と弱い伸びに留まった。財輸出の金額の推移を見ると、米国を中心とする域外先進国向けの伸びが高まっており、英国を中心とする欧州、新興国は伸び悩んだ(図表6)。英国向け輸出は、ユーロ圏の域外向け輸出の13.5%を占める。今回の見通しでは英国の深刻な景気後退は予想していないが、ポンド安も影響するため、英国向け輸出は、この先伸び悩むと思われる。
個人消費は1~3月期の同0.6%に対し、4~6月期は同0.2%と期待外れに留まった。固定資本投資は同ゼロに失速し、ともに期待外れに留まった。しかし、足もとまでユーロ圏全体では雇用の拡大と賃金の伸びの回復、さらに物価がゼロ近辺で推移していることによる実質所得の押し上げ効果が続いている(図表7)。個人消費は基調としては底堅さを保っていると見られる。
ユーロ圏経済は、これまでのところ、英国がEU離脱を選択した影響は軽微に留まっている。実質GDPと連動性が高い総合PMIはユーロ圏全体では7月53.2から8月は52.9へと50を上回る水準でやや低下した(図表8)。成長テンポが加速する兆しはないが、景気の拡大は続いているようだ。
圏内での国毎の生産活動の水準、成長テンポの差の解消は進んでいない。4~6月期はフランスとイタリアがゼロ成長に失速した(図表9)。総合PMIは両国でも辛うじて景気の拡大が続いていることを示唆するが、独り勝ちが続くドイツ、回復ピッチの加速が見られるスペインに見劣りする。
外需の改善は、輸出が1~3月期の前期比実質ゼロから4~6月期は同1.1%に加速する一方、輸入が前期の同マイナス0.1%から同0.4%と弱い伸びに留まった。財輸出の金額の推移を見ると、米国を中心とする域外先進国向けの伸びが高まっており、英国を中心とする欧州、新興国は伸び悩んだ(図表6)。英国向け輸出は、ユーロ圏の域外向け輸出の13.5%を占める。今回の見通しでは英国の深刻な景気後退は予想していないが、ポンド安も影響するため、英国向け輸出は、この先伸び悩むと思われる。
個人消費は1~3月期の同0.6%に対し、4~6月期は同0.2%と期待外れに留まった。固定資本投資は同ゼロに失速し、ともに期待外れに留まった。しかし、足もとまでユーロ圏全体では雇用の拡大と賃金の伸びの回復、さらに物価がゼロ近辺で推移していることによる実質所得の押し上げ効果が続いている(図表7)。個人消費は基調としては底堅さを保っていると見られる。
ユーロ圏経済は、これまでのところ、英国がEU離脱を選択した影響は軽微に留まっている。実質GDPと連動性が高い総合PMIはユーロ圏全体では7月53.2から8月は52.9へと50を上回る水準でやや低下した(図表8)。成長テンポが加速する兆しはないが、景気の拡大は続いているようだ。
圏内での国毎の生産活動の水準、成長テンポの差の解消は進んでいない。4~6月期はフランスとイタリアがゼロ成長に失速した(図表9)。総合PMIは両国でも辛うじて景気の拡大が続いていることを示唆するが、独り勝ちが続くドイツ、回復ピッチの加速が見られるスペインに見劣りする。
実質GDPは2016年の1.6%、17年は1.4%
ユーロ圏全体としてはECBの金融緩和策とやや拡張的な財政政策の下支えもあり、内需主導の緩やかな拡大基調が続く見通しだ。16年年間の実質GDPは前年比1.6%と予測する。4~6月期の実績工業と合わせて改定された15年年間の同2.0%に比べて鈍化するが、潜在成長率は上回る。
17年も個人消費を牽引役とする緩やかな拡大が持き、実質GDPは1.4%と予想する。
インフレ率は、16年は年間で0.2%と著しく低い水準に留まる。しかし、17年は世界的な原油安の修正によるエネルギー価格の押し下げ効果が16年末~17年初にかけていったん消失することで1%台を回復、年間では1.3%と予測する。
個人消費は、雇用所得環境の改善に支えられ拡大が続くが、インフレ率が上向くことが実質所得を押し下げるため、勢いは鈍りそうだ。
投資は、著しく緩和的な金融環境が追い風となる一方、英国のEU離脱を含む、外部環境の不透明感が重石となり、緩やかな拡大に留まりそうだ。
17年も個人消費を牽引役とする緩やかな拡大が持き、実質GDPは1.4%と予想する。
インフレ率は、16年は年間で0.2%と著しく低い水準に留まる。しかし、17年は世界的な原油安の修正によるエネルギー価格の押し下げ効果が16年末~17年初にかけていったん消失することで1%台を回復、年間では1.3%と予測する。
個人消費は、雇用所得環境の改善に支えられ拡大が続くが、インフレ率が上向くことが実質所得を押し下げるため、勢いは鈍りそうだ。
投資は、著しく緩和的な金融環境が追い風となる一方、英国のEU離脱を含む、外部環境の不透明感が重石となり、緩やかな拡大に留まりそうだ。
(2016年09月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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