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まずは3年運動をしてみる~中高年男性の、運動実施率とBMIの5年観察

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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2――肥満1度の40~50歳代男性の運動実施率と5年後のBMI
分析に使用したデータは、(株)日本医療データセンターによる健康診断データベースである2。分析は、2010年~2014年の5年間において、年1回以上健康診断を受けている人を対象に行った。このデータベースは、被用者を中心としているため、5年間データが取得できる人が60歳以上では少ない。そこで、本稿では40~50歳代の肥満1度の男性について分析を行うことにする。

続いて、5年後のBMIが「普通体重(改善)」「肥満1度(変化なし)」「肥満2度以上(悪化)」の人々それぞれについて、5年間の運動実施率の推移を図表5に示す。
2010年時点での運動実施率は、5年後のBMIによる差は小さい。ところが、「普通体重(改善)」の運動実施率は年々上昇し、5年間で運動実施率が10ポイント以上高くなっていたのに対し、「肥満1度(変化なし)」はほぼ横ばいだった3。「肥満2度以上(悪化)」は、1年目は運動実施率が「普通体重(改善)」や「肥満1度(変化なし)」と比べて高かったが、以降低下しており、5年後には最も低くなっていた。「普通体重(改善)」と比べると10ポイント以上の差がついている。

見方を変えて、5回の健康診断のうち運動を実施していた回数別の改善状況を図表6に示す。
運動実施回数が多いほど、普通体重に改善する割合が高い傾向があった。1回の実施だと、実施していない(0回実施)のと大きな差はなかったが、2回で5.5ポイント、3回以上で7.5ポイント程度と、普通体重への改善割合が上がっていた。今回の結果では、3回(5年間のうち、6割程度の期間)以上実施していれば、4分の1程度が普通体重に改善した。
また、1回も運動を実施していなくても、16.8%が普通体重に改善をしている。これについては、食生活の改善など、運動以外の対策によるものと考えられる。
2 (株)日本医療データセンターが了承を得ているいくつかの健康保険組合の健康診断データベースである 。このデータベースは、個人を特定しうる情報を完全に削除した上で市販されており、各種研究で活用されている。
3 この年代では、一般に年齢が高いほど運動実施率が高い。
3――まずは3年運動をしてみる
その結果、1年目の運動実施率に大きな差はなかったが、5年間の運動実施率の推移をみると、5年後に普通体重に改善している層で、年々上昇していた。一方で、肥満2度以上に悪化した層では、年々低下しており、5年後の運動実施率は改善している層と比べると10ポイント以上の差があった。また、5回の健康診断のうち運動を実施していた回数別の改善状況をみると、運動実施回数が多いほど、普通体重への改善割合が高い傾向があった。これらは、BMIの改善に向けては、運動を単発ではなく、継続的に実施する必要性があることを示している。
一方、5年後に肥満2度以上に悪化していた層で、1年目の運動実施率が高い傾向があった。運動を実施していたにもかかわらず、効果が得られない等の理由で止めてしまった可能性があるほか、もともと運動の効果が得にくい層である可能性がある。また、運動実施回数が0回であっても16.8%が、5年後に普通体重に改善していた。さらに、運動実施回数が3回以上では普通体重への改善割合が同程度だった。運動を実施するほど改善するわけではなかった。これらは、BMIの改善は、運動だけによるものではないことを示している。例えば食生活の改善など運動以外の対策も必要だろう。
運動が健康維持に重要であることは多くが認識しているが、40~50歳代男性で運動を実施しているのは16%程度と低い。文部科学省「体力・スポーツに関する世論調査」によると、運動をしない最も大きな理由として「時間がない」があがっている。今回扱った40~50歳代男性も、時間が多くは取れない年代かもしれない。しかし、今回の結果から、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上」といった気軽な運動であっても、5年のうち3年程度以上実施していれば、普通体重への改善が見られた。まずは、3年、30分程度の運動をしてみてはどうだろうか。
(2016年09月06日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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