2016年08月02日

低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~

竹内 一雅

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1.経済動向

2016年4-6月には、甚大な被害をもたらした熊本地震1の発生に加え、円高・株安と新興国を中心とした世界経済の減速、企業収益の悪化2>、さらには英国のEU離脱決定などから、引き続き景況感は低下し、景気ウォッチャー調査(合計)は安倍政権成立後の最低水準となった(図表-1)。消費も2014年の消費増税後の回復が鈍く、底ばいに近い状況が続いてきた(図表-2)。

こうした状況で、消費税の10%への引き上げ時期の2017年4月から2019年10月への再延期が発表された(6月1日)。消費増税の延期により、増税前の駆け込み需要がなくなる一方、その反動減も当面発生しないこととなった。ニッセイ基礎研究所の予測によると、2016年度の実質GDP成長率が+0.9%から+0.6%へと低下する一方、2017年度は0.0%から1.1%へと上昇する(図表-3)。
図表-1 景気ウォッチャー調査(現状判断DI)/図表-2 消費税増税後の消費総合指数/図表-3 実質GDP成長率見通し

1 2016年4月14日、4月16日に最大震度7の揺れがあった熊本地震では、死者81名、負傷者1,816名、住宅全半壊34,669戸、一部破損126,289戸の被害があった。消防庁「熊本県熊本地方を震源とする地震(第67報)」2016.7.19より。
2 2011年以降、企業収益は円安と強い相関があった。円安の見直しが進む中で企業収益も悪化が進んできた。斎藤太郎「円高で日本経済はどうなる~懸念される企業収益、物価への悪影響」2016.4.15、ニッセイ基礎研究所

 

2.人手不足と建築コス

2. 人手不足と建築コスト

有効求人倍率は2016年に入っても大幅に上昇しているが、完全失業率は2016年初頭からはほぼ横ばいで推移している(図表-4)。その一方で、東日本大震災以来続いてきた建設労働者の人手不足は大きく緩和し、これに伴い、建設工事原価も一時期に比べて低下がみられる(図表-5、6)。建設現場での人手不足の緩和には、建設業における賃金の上昇が貢献しているといわれている。例えば、経団連の大手企業の2016年春季労使交渉結果をみると、建設業は前年比+3.2%と際立って高い上昇率となった(図表-7)。

なお、近年の就業者数の推移をみると、女性と高齢者の増加が顕著となっている(図表-8)。2004年1月を100とすると、2016年5月に女性就業者数は106(男性は98)、65歳以上は163(25~34歳は78、35~44歳は114、45~54歳は99、55~64歳は101)へと増加している。
図表-4 完全失業率と有効求人倍率/図表-5 建設技能労働者過不足率/図表-6 建設工事原価指数(事務所、2005年=100)/図表-7 大手企業2016年春季労使交渉結果(前年比)/図表-8 男女年齢別就業者数の推移(2004年1月=100)
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竹内 一雅

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