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- 2016・2017年度経済見通し~16年1-3月期GDP2次速報後改定
2016年06月08日
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消費税率引き上げが見送られたことによって前倒しで住宅を購入するインセンティブはなくなった。住宅ローン減税、マイナス金利導入に伴う住宅ローン金利の低下が一定の下支えにはなるものの、今後住宅着工戸数は減少に転じる可能性が高く、工事の進捗ベースで計上されるGDP統計の住宅投資も2016年度後半には減少に転じるだろう。住宅投資は2015年度の前年比2.4%の後、2016年度が同0.9%、2017年度が同0.1%と予想する。

さらに、秋の臨時国会で策定される経済対策の裏づけとなる2016年度第2次補正予算は年末までに成立することが見込まれるため、2016年度末から2017年度初めにかけてその効果が顕在化する可能性が高い。公的固定資本形成は2014年度(前年比▲2.6%)、2015年度(同▲2.7%)と2年連続で減少したが、2016年度は前年比1.6%と3年ぶりに増加し、景気を一定程度下支えする役割を果たしそうだ。

また、国際収支ベースの貿易収支(季節調整値)は2015年10月以降黒字となっているが、貿易収支改善の主因となっていた原油安局面はすでに終了しており、今後は原油価格上昇に伴う輸入価格の上昇が貿易収支の悪化要因なることが見込まれる。貿易収支の黒字幅は徐々に縮小し、2016年末までには再び赤字となる可能性が高い。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2016年3月に前年比▲0.3%と5ヵ月ぶりのマイナスとなった後、4月も同▲0.3%となった。原油価格は上昇に転じているが、電気代、ガス代は原油価格の動きが遅れて反映されること、円高で原油価格上昇の影響は一部相殺されることなどから、消費者物価のエネルギー価格は夏場まで前年比で二桁のマイナスを続ける可能性が高い。
また、現時点では消費者物価指数の対象品目のうち6割以上の品目が上昇し、物価上昇の裾野の広がりを示すものとなっているが、為替レートの変動は輸入物価を通じて幅広い品目に影響を及ぼすため、こうした状況は大きく変化する可能性がある。特に、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は前年比で2%台の伸びを続けてきたが、輸入物価の食料品は前年比で二桁の下落を続けており、国内企業物価の食料品もゼロ近傍まで伸び率が低下している。今後、川上から川下への価格転嫁が進むことにより、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)も伸び率が鈍化するだろう。
コアCPI上昇率がプラスに転じるのは、円高、原油安の影響がほぼ一巡する2016年末頃になると予想する。その後は円安、原油高に伴うエネルギー価格の上昇、景気回復持続に伴う需給バランスの改善が消費者物価を押し上げることから、コアCPIは2017年度入り後には1%程度まで伸びを高めるだろう。コアCPI上昇率は2016年度が前年比0.0%、2017年度が同1.0%と予想する。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2016年3月に前年比▲0.3%と5ヵ月ぶりのマイナスとなった後、4月も同▲0.3%となった。原油価格は上昇に転じているが、電気代、ガス代は原油価格の動きが遅れて反映されること、円高で原油価格上昇の影響は一部相殺されることなどから、消費者物価のエネルギー価格は夏場まで前年比で二桁のマイナスを続ける可能性が高い。
また、現時点では消費者物価指数の対象品目のうち6割以上の品目が上昇し、物価上昇の裾野の広がりを示すものとなっているが、為替レートの変動は輸入物価を通じて幅広い品目に影響を及ぼすため、こうした状況は大きく変化する可能性がある。特に、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は前年比で2%台の伸びを続けてきたが、輸入物価の食料品は前年比で二桁の下落を続けており、国内企業物価の食料品もゼロ近傍まで伸び率が低下している。今後、川上から川下への価格転嫁が進むことにより、消費者物価の食料(生鮮食品を除く)も伸び率が鈍化するだろう。
コアCPI上昇率がプラスに転じるのは、円高、原油安の影響がほぼ一巡する2016年末頃になると予想する。その後は円安、原油高に伴うエネルギー価格の上昇、景気回復持続に伴う需給バランスの改善が消費者物価を押し上げることから、コアCPIは2017年度入り後には1%程度まで伸びを高めるだろう。コアCPI上昇率は2016年度が前年比0.0%、2017年度が同1.0%と予想する。
(2016年06月08日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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