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- 家計調査16年4月~個人消費は横ばい圏を脱していないが、先行きは雇用所得環境の改善から持ち直しへ
2016年05月31日
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1.4月の消費支出は強めの結果
総務省が5月31日に公表した家計調査によると、16年4月の実質消費支出は前年比▲0.4%(3月:同▲5.3%)と2ヵ月連続で減少したが、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲1.3%、当社予想は同▲3.1%)を上回る結果となった。前月比では0.2%(3月:同0.5%)と2ヵ月連続で増加した。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比0.4%(3月:同▲4.3%)と2ヵ月ぶりに増加し、前月比では2.9%(3月:同▲0.7%)の大幅増加となった。
実質消費支出の動きを項目別に見ると、授業料、補習教育などの教育が前年比22.4%と急増し、食料(同1.6%)、保健医療(同2.3%)も増加したが、住居(同▲11.5%)、被服及び履物(同▲10.4%)が前年比で二桁の減少となったことが全体を押し下げた。10項目中3項目が増加、7項目が減少した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比2.3%(3月:同▲0.5%)と2ヵ月ぶりに上昇し、4月の水準は1-3月期平均を2.3%上回った。同指数は15年10-12月期が前期比▲2.3%、16年1-3月期が同▲0.2%と低迷が続いていたが、4-6月期は強めのスタートとなった。
実質消費支出の動きを項目別に見ると、授業料、補習教育などの教育が前年比22.4%と急増し、食料(同1.6%)、保健医療(同2.3%)も増加したが、住居(同▲11.5%)、被服及び履物(同▲10.4%)が前年比で二桁の減少となったことが全体を押し下げた。10項目中3項目が増加、7項目が減少した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比2.3%(3月:同▲0.5%)と2ヵ月ぶりに上昇し、4月の水準は1-3月期平均を2.3%上回った。同指数は15年10-12月期が前期比▲2.3%、16年1-3月期が同▲0.2%と低迷が続いていたが、4-6月期は強めのスタートとなった。
2.個人消費は横ばい圏を脱していないが、先行きは持ち直しへ
家計調査以外の4月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の小売販売額は前年比▲0.8%(3月:同▲1.0%)と2ヵ月連続で減少した。季節調整値では前月比0.0%(3月:同1.5%)の横ばいだった。物価上昇分を考慮した実質ベースの季節調整済・販売額指数(当研究所による試算値)は前月比▲0.2%の低下(3月は同1.4%)となった。4月の指数は1-3月期平均よりも▲0.1%低く、引き続き15年中の水準を下回っている。また、百貨店売上高(日本百貨店協会)は前年比▲3.9%(店舗数調整前)となり、3月の同▲3.0%から減少幅が拡大した。これまで高い伸びを続けてきた訪日外国人向けの売上高が円高の影響などから減少に転じたことが響いた。
一方、4月の外食産業売上高は前年比3.0%となり、3月の同1.8%から伸びを高めた。客単価が上昇を続ける中、3月に減少した客数が増加に転じたことが売上高を押し上げた。また、減少が続いていた自動車販売台数(軽自動車を含む)は前年比2.2%と1年4ヵ月ぶりの増加となった。ただし、2月の工場事故に伴う供給制約が解消したことによる一時的なものである可能性があるため、持続性には疑問が残る。
一方、4月の外食産業売上高は前年比3.0%となり、3月の同1.8%から伸びを高めた。客単価が上昇を続ける中、3月に減少した客数が増加に転じたことが売上高を押し上げた。また、減少が続いていた自動車販売台数(軽自動車を含む)は前年比2.2%と1年4ヵ月ぶりの増加となった。ただし、2月の工場事故に伴う供給制約が解消したことによる一時的なものである可能性があるため、持続性には疑問が残る。
4月の家計調査の消費支出は市場予想を上回る良好な結果となった。販売側の統計と合わせてみると横ばい圏の推移から脱したとは言い切れないが、個人消費を取り巻く環境は大きく改善している。
本日発表された4月の労働力調査では雇用者数が前年差101万人、前年比1.8%の大幅増加となった。一人当たりの名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者所得を大きく押し上げている。さらに既往の原油価格下落の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を大きく押し上げている。
消費者マインドの悪化などに伴う消費性向の低下、労働市場改善の恩恵を受けない高齢者、年金生活者の消費動向などには注意を払う必要があるが、先行きの個人消費は実質雇用者所得の高い伸びを主因として持ち直しに向かうことが予想される。
本日発表された4月の労働力調査では雇用者数が前年差101万人、前年比1.8%の大幅増加となった。一人当たりの名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者所得を大きく押し上げている。さらに既往の原油価格下落の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者所得を大きく押し上げている。
消費者マインドの悪化などに伴う消費性向の低下、労働市場改善の恩恵を受けない高齢者、年金生活者の消費動向などには注意を払う必要があるが、先行きの個人消費は実質雇用者所得の高い伸びを主因として持ち直しに向かうことが予想される。
(2016年05月31日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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